IFA株式会社が進めるプロジェクト「AIre(アイレ)」。ブロックチェーンを活用したプロダクトやサービスを提供し、自分の情報を自分自身で管理する世界が実現されることを目指す、次世代型銀行プラットフォームである。いわゆるブロックチェーンベースのデータバンクとして、5つのツール( BASE、BRIDGE、MINE、SHARE、VOICE )で展開していく。従来の中央集権的な機関による資産や情報管理ではなく、ユーザーが管理していく非中央集権的な社会を構築することを目指す。

このほど、AIreのプロジェクト「ARCS」(ティッカーシンボル「ARX」)が大手仮想通貨取引所KuCoinへの上場を発表した。

IFA株式会社の水倉仁志代表取締役CEOと、KuCoin共同創業者のジョニー・リュウ氏が対談。上場につながった経緯や、KuCoinのAIreの評価、両社が共鳴するビジョンなどについて語った。

KuCoinの持つチーム力や開発力などの総合力

水倉氏:今回、上場先としてKuCoinを選んだのは、まず、その総合力を高く評価したからです。仮想通貨取引所のレーティングで10点満点を得ているところは世界で7つしかない中で、バイナンスやクラーケンと並びKucoinが高評価を得ています。このような総合的な社会的評価が高いというのが1つ目の理由です。

2つ目の理由はグローバルということです。設立から2年を経過して、既に500万人ユーザー突破し、急成長している中で、ユーザーが1つの国に偏ってなく、グローバルに分布しています。我々も、AIreというプロジェクトを世界的に広げていきたいというビジョンを持っています。グローバル展開という面で方向性が同じ点を評価しました。

3つ目がチーム力です。KuCoinのオフィスを訪問した際、同社が目指す7つのバリューが至るところに掲示されていました。会社が目指すべきバリューを、社員1人1人に根付かせようとしているところが非常に共感できたポイントです。また創業メンバーも小学校以来から友人同士であるという、絆の強さもKuCoinの結束の強さとして評価できるところでした。

4番目がテクノロジーです。ボードメンバーや社員の多くが技術的なバックグラウンドを持っており、テクノロジーを最重要としています。セキュリティ面でも評価できるのではないかと思います。

AIreプロジェクトのテクノロジー評価

リュウ氏:KuCoinは取引所として非常にテクノロジー面を重視しています。そして、AIreのプロジェクトは技術とビジョンで深いものを掲げています。我々としてもそのようなプロジェクトを好きです。

また将来性という意味でも評価できた点だ。「信頼の問題をブロックチェーン技術で解決する」、「仮想空間でのセキュリティを重視する」など、テクノロジーを通じて実現する理念をアピールしています。

中国には「虎に翼を付ける」という言葉がありますが、テクノロジーとデータを結び付け、バリューを生み出そうというのは非常にいいコンビネーションではないかと思います。

(上場での)プロジェクト選別というのは投資と同じです。良い技術や良いチーム、そして良い理想を掲げていることを選ぶことが重要です。そういう意味で、AIreは私たちのプロジェクト選別の基準に合致しているのではないかと思います。

AIreとKuCoinの共鳴するビジョン

リュウ氏:先ほど水倉さんが指摘されたように、私たちは7つのバリューを掲げています。「パッション」、「ユーザー第一」、「当事者意識(責任感)」、「変化を受け入れる」、「データによる前進する力」、「正直さ」、「トップを常に狙っていく達悦さ」です。

水倉氏:私たちもKuCoinのビジョンと近いものを持っています。AIreのビジョンは「NOを打ち破れ」、「毎日1UP」、「仲間と向きあう」の3つです。

「NOを打ち破れ」は、ネガティブなことや固定観念、既成概念を打破しようというのが1つです。「毎日1UP」は、チームのメンバーが日々自身をアップデートすることによって、昨日の自分よりも成長すること。「仲間と向き合う」とは、仲間と誠実かつ全力で向き合うことです。

言葉の言い方は違いますが、KuCoinの「トップを目指す達悦さ」というのは、毎日ワンアップすることの積み重ねだと思います。「正直さ」というのは、仲間と向き合う際には不可欠の要素です。KuCoinが目指すビジョンは、AIreから見ても共感できるものでした。

日本市場開拓でも協力

水倉氏:KuCoinさんも、日本への進出を検討していると思います。日本でライセンスを取得し、正面からビジネスを展開したいと考えていると思います。

海外企業にとっては、日本での法規制への人脈づくりも難しいところもあるのではないでしょうか。我々としても、Kucoinの日本進出の支援や日本での認知度向上のために協力していきたいと考えています。

リュウ氏:グローバルなマーケットへの長期的な取り組みとしては、2つの方向性があります。

技術面でいえば、我々はパブリックチェーンを構築したいと考えています。ただパブリックチェーンであっても、国によって期待される役割や求められる特徴にも違いが出てきます。そのため、将来的に日本において技術的なコラボレーションをする機会があれば、AIreさんと一緒に様々なことをやっていきたいです。

もう1つはビジネスサイドです。たとえば日本でのコミュニティづくりやエデュケーションでの取り組みを進めていく際に、AIreと協力していきたい。合わせて、現地当局とやり取りをスムーズに進めていく上で、日本で協力してくれるパートナーが必要になると思います。

AIREプロジェクトの今後の展望

水倉氏:今年はリスティングをした上で、来年4月にプロダクトのローンチを行います。

我々はリスティング目的ではありません。プロダクトをしっかりと社会に実装させ、より多くのユーザーの方に満足してもらうようなプラットフォームをつくりたい。2020年は、その第一ステージの年です。

またKuCoinでのリスティングに合わせ、PR面でのグローバルな展開も進めていきます。

まず取り組んでいるのが日本語のアウトプットの多言語化です。まずは英語と中国語に対応することからはじめ、将来的にはロシア語やスペイン語など、多言語化を進めていく予定です。国やコミュニティによって、様々な特色もあると思います。そこをいかにわかりやすく、伝わるようにPRしていく必要があります。そういう施策をどんどん打っていきます。

今年は世界各地のカンファレンスに出席し、プロジェクトのPRを進めました。来年以降も積極的にグローバルでミートアップなどを進めていきたいと考えています。

日本のスタートアップのモデルケース目指す

水倉氏:日本は2年前に「仮想通貨交換業」のライセンスを作るなど、世界に先駆けた動きをしていたと思います。一方で、国内のハッキング事件の余波を受け、非常にディフェンシブになってしまいました。

一方で世界に目を転じれば、昨年の仮想通貨の弱気相場でも、どんどんと新しいプレイヤーが出てきています。KuCoinもまさにそういうプレイヤーの1つだと思います。

これから、日本に必要なのは仮想通貨・ブロックチェーンのスタートアップ企業が日本に育つ環境を作ることです。消費者保護を図りながら、スタートアップ企業がチャレンジできるような社会になっていかないといけないと思います。

1つ構想しているのは、日本におけるインキュベーション事業です。我々がKuCoinを通じて日本のスタートアップとしてグローバルに展開するモデルケースを作り、その上でほかのスタートアップに対してもノウハウを提供できる場を創りたいと考えています。

日本の方には、グローバル展開を見据え、地道に努力していることを知ってもらい、応援してもらいたいと思っています。

リュウ氏:AIreは先進的なビジョンを掲げ、日本から出てきたプロジェクトです。将来性は高いと私たちは考えており、ユーザーにも注目して欲しいと思います。KuCoinは、AIreとともに大きなゴールを目指していきたいです。

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*1:「ARCS」(ティッカーシンボル「ARX」)