IFA株式会社のブロックチェーンプロジェクト「AIre」は、グローバル展開する仮想通貨取引所Kucoinへの上場を発表した。Kucoinの共同創業者、ジョニー・リュウ氏は「テクノロジー重視でのプロジェクト選定を行っている」と語る。

AIreのブロックチェーンプロジェクトとは?

IFA株式会社が進めるプロジェクト「AIre(アイレ)」は、ブロックチェーンを活用したプロダクトやサービスを提供し、自分の情報を自分自身で管理する世界が実現されることを目指す、次世代型銀行プラットフォームである。いわゆるブロックチェーンベースのデータバンクとして、5つのツール( BASE、BRIDGE、MINE、SHARE、VOICE )で展開していく予定だ。

9月に行われた「FIN/SUMフィンサム2019」では、同社COOの桂城漢大氏が登壇し、AIreが目指す展望について語った。ブロックチェーンを活用して身分証明書に有機的な情報を付加することや、個人の属性(年収や預貯金、勤め先、家族構成など)を使ったスコアリング(点数化)などを実装し、スマホなどで簡単にスコアを確認できるよう、可視化していく。これにより、今まで隠れて見えなかった信用力が見えてくるようになり、新しいマーケットが生まれる可能性も秘めている。

従来の中央集権的な機関による資産や情報管理ではなく、ユーザーが管理していく非中央集権的な社会を構築することを目指す。

仮想通貨取引所KuCoinとは

KuCoinは2017年に設立した仮想通貨取引所だ。シンガポールを拠点とし、グローバルにサービスを展開している。

仮想通貨取引所Kucoinの共同創設者のジョニー・リュウ氏は、テクノロジー重視でプロジェクトのリスティング(上場)を行っていると強調する。リュウ氏はKucoinの戦略及び投資部門担当のバイスプレジデントを兼任している。

リュウ氏は、この2年間を振り返り、中国での規制変化や相場低迷といった荒波があった中でも、ピンチをチャンスにして発展していくことができたと語る。

「結構大変なこともありました。2017年8月設立ですが、ご存知かもしれませんが当時、中国政府の規制が丁度変わっていく時期でもありました。今振り返ると、最初のこういう大変なことが、良い方向に転じているのではないかと感じています。それがもとでグローバルなマーケットに当初舵を切ったからです。2017年の年末に仮想通貨価格の急騰があり、ユーザーも順調に増えていきました。なので2018年の年明けごろには、ユーザー数が300万人に達するなど、早いスピードで増えました」

KuCoinの現在のユーザー数は500万人以上にのぼり、約100の国・地域にユーザーがいるという。

「現在のユーザーとしては500万人以上になります。そしてユーザーの国のバラエティは多分世界一だと思ってます。これは第三者の機関が出しているレポートですが、ユーザーの国籍の多様性では一番多い取引所と言われており、100の地域と国に分かれています。比率はアメリカ地域・欧州地域・そしてアジア地域で30%ずつという感じです。そして実は日本人ユーザーもいます。アジアで一番ユーザーが多いのは日本と韓国です。その次に東南アジアという分布になっています」

「ユーザーのニーズを第一に」

設立から2年で幅広いユーザーを抱えるに至ったKuCoin。リュウ氏はユーザーのニーズを最重要視することが、成長につながったと語る。

「一番重視しているのは「ユーザーのニーズに立って常に考える」ということです。まず取引所としては、24時間ホットラインカスタマーサービスを提供したのはうちが最初です。サービス重視で、ユーザーのアセット管理の利便性を重視しています」

またKuCoinの大きな特徴は、テクノロジー重視であることだ。ハッキングに対するセキュリティに力を入れて、ユーザーが安心できる取引所を目指している。また上場させるプロジェクトの選別でも、プロジェクトの技術サイドへの理解が欠かせないと強調する。

「技術面でも業界のトップレベルを誇っています。設立から現在までユーザーの資産が盗まれるようなことは一度も起こっていません。業界でこういった実績を持っている取引所は割と少ないと思います」

「もう一つはプロジェクトの選別です。ユーザーがなぜここを利用するかというと、投資、そしてリターンを見込んでKuCoin上で取引すると思いますが、ここでプロジェクト選別というのが大事になってきます。プロジェクトを選別するときもプロジェクトの技術面をきちんとみています。ブロックチェーンの未来を考えれば、こういった技術面が重視され、優れた技術を持っているプロジェクトこそが良い方向に進むのではないかと信じています」

実はKuCoinのチーム自体がすごく技術重視のチームだ。共同創業者のほぼ全員エンジニアのバックグラウンドがあるという。

「優れた技術には、良いバリューがつくと思います。技術を重視することでユーザー側にもきちんとバリューを還元できると考えています」と、リュウ氏は力を込める。

「世界中でKuCoinが使われているということは、安全面、サービス面、そしてプロジェク選別という面でKuCoinがユーザー数を着実に増やしている理由であると思います」。

グローバルなチーム力と開発力

KuCoinではシンガポール、中国、ブルガリア、タイ、フィリピンにオフィスを構え、スタッフは300人超にのぼる。リュウ氏によれば、エンジニアは100人ほど、カスタマーサービスも100人、他はオペレーションなどを担当しているという。

リュウ氏は、KuCoinの大きな特徴の1つが開発力だと語る。KuCoinのプラットフォームでのサービスはすべて自社開発だ。

「Kucoinなど今あるいくつかのプラットフォーム、デリバティブのKuMEX、ステーキングサービスのPool-Xなどの開発は、全て自社で行なっております。かなり難易度の高い開発で、どの取引所でもできるとは限りません」

またサービスをすべて自社開発することが競争力や安全面でも重要だと語る。

「この業界で、自社開発をするのは大きな経営資源であると言えます。実は今ある数々の取引所では、(他社が開発したシステムを使う)ホワイトラベルの取引所も存在しますが、安全面での問題もあり、危険だと考えています」

技術面での向上は「創業以来、現在も絶えず行っている」(リュウ氏)という。それこそが競合の取引所との競争力向上につながるという考えだ。

「Kucoinはこれからも技術をアップデートしていって、取引ペアを増やしたり、取引頻度を上げて行ったりなど、ユーザーがもっと参加できるようにしていきたいです。グローバルマーケットを対象とした取引所なので、様々な国や地域のニーズに対応し、良いプロジェクトの選別やオペレーションチームのリクルートが大事だと思います」

ユーザーとのコミュニケーションを重視

Kucoinではユーザーとのコミュニケーション、そしてエデュケーション(教育)も取引所の重要な役割だという。フィリピンでは、ブロックチェーントレーニングセンターを開設。コーディングやトークンエコノミーなどの学習プログラムを展開している。

「いろんな国を訪れて思ったことですが、発展途上国に関しては富への追求心が他国に比べて高いので、新しい産業に対する好奇心も高いです。昨年の年末から今年の年明けにかけて、フィリピンでブロックチェーントレーニングセンターを開設しました。授業内容としてはコーディングやトークンエコノミー、プロジェクトの選別などを取り揃えています。他にもベトナム、マレーシア、インドネシアでも似たようなことを準備中です」

日本も重要な市場

リュウ氏によれば、教育プログラムについても、世界レベルで展開していく考えで、日本での展開も視野に積極的にパートナーを探している。

さらに仮想通貨マーケットにとって日本も重要な存在だと、リュウ氏は指摘する。実際に日本のユーザーもKucoinを利用しており、さらに日本のマーケットとの接点を見つけていきたいと語った。

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*1:「ARCS」(ティッカーシンボル「ARX」)