著者 中村 孝也(なかむら たかや)Fisco 取締役(情報配信事業本部長・アナリスト)

日興證券(現SMBC日興証券)より2000年にフィスコへ。現在、フィスコの情報配信サービス事業の担当取締役として、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議を主導する立場にあり、アメリカ、中国、韓国、デジタル経済、(仮想・暗号)通貨などの調査、情報発信を行った。フィスコ仮想通貨取引所の親会社であるフィスコデジタルアセットグループの取締役でもある。なお、フィスコ金融・経済シナリオ分析会議から出た著書は「中国経済崩壊のシナリオ」「【ザ・キャズム】今、ビットコインを買う理由」など。

テクニカル:

ビットコイン価格は支持線「2」「3」と抵抗線「B」による70万円強から90万円強のボックスの上限を上回ってきたため、ボックス倍返しの110万円強(抵抗線C or C'」)が当面の上値目標であった。110万円強を達成した後、上昇幅の半値押しとなり、多くの支持線が集まる水準での推移となっている。依然として95万円近辺を次の上昇トレンド再スタート地点として、70万円から110万円への上昇幅をトレースすると、上値目標は135万円近辺(抵抗線「D」)という計算は有効という格好である。時間をトレースすると、3月中旬から5月初旬にかけてということになる。93~95万円近辺を明確に下回ると、支持線「1」に沿った緩やかな上昇トレンドへ移行、5月頃に100万円の値堅めというように読み取れる。それを下回ると上昇トレンド継続の芽がなくなり、全値押しの、70万円まで調整する計算になる。ただし、最高値が発端の抵抗線「A」に対する上方ブレイクは、新たなトレンドの発生を予兆させるものであり、上昇トレンドの芽が簡単になくなるとは想定していない。

ファンダメンタルズ1

BTC半減期について前回は、2016年1月から5月下旬まで、BTC価格は350ドルから450ドル水準でもみ合いが続いていたが、5月27日以降に出来高を伴い上昇。6月13日に700ドル台に到達した後、瞬間的には777ドル(18日)まで上昇した。半減期を迎えた7月9日以降は10月中旬まで600ドル前後で推移したが、10月下旬辺りから出来高が増加してじりじりと上昇し、2017年1月1日には1000ドル台に到達した。こうした過去の値動きや、BTCの需給が引き締まることを鑑みると、5月の半減期前後のBTC相場は上向きとなることが期待され、かつオーバーシュート気味に動く可能性がある。5月12日に予定される半減期を控えて、BTCの価格のピークは3カ月前の2月中旬頃となる可能性がある。前回の値動きをざっくりと当てはめると、2月中旬から5月中旬までの間に150万円、8月~9月頃に200万円という価格が想定されることになる。最終局面の上昇が常にオーバーシュート気味に推移するということからは、高値255万円を上回り、300万円という見方もできなくなく、実際にそのような予想も散見される。

ファンダメンタルズ2:

日本の2019年10-12月期実質GDPは、消費税増税に影響を受けて、前期比1.6%減と5四半期ぶりにマイナスとなった。新型コロナウィルスの影響を鑑みれば、2四半期連続のマイナス成長、景気後退局面入りも現実味を帯びてくる。

更に深刻なのは新型コロナウィルスの震源地である中国であり、当時と比較したグローバル・バリューチェーン(GVC)の進展度合いとも考えられる。世界の工場となった中国の輸出入額は、SARS前後から比較しても6倍程度まで拡大、足もとで4兆ドルを上回る。その中国では、既に人の移動も制約され、中国からの輸出にも影響が出始めよう。中国は世界の工場として主要な製造ハブになっており、サプライチェーンの寸断から、中国全体で生産が滞る可能性も報じられている。SARSの期間が2002年11月から2003年7月、今回が1月から5月までで半分であったとしても、影響はSARSの時より甚大である可能性があろう。

既に世界はその影響に身構えており、株価に影響が出始めることも想定され得る。そのような状況となれば、日本も含めた東アジアの一部の国における財政出動、世界的な量的緩和が観測されることになろう。

ビットコインには大いにプラスとなる環境である。マーケットの波乱で相対的にリスク逃避的な資金がビットコイン相場に流入し、その後の過剰流動性がビットコイン相場を更に押し上げることになろう。

アメリカが利下げに動いており、G7各国も追随することになる。過剰流動性相場は既にスタートしており、ビットコイン相場にプラスに働いてこよう。

本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限らない。