第3回ZKProofワークショップにおいて、フェイスブックの独自仮想通貨リブラ用ウォレットを開発するカリブラの研究チームが、既存の分散監査手順を改善するため設計した論文「分散監査債務証明(DAPOL)」プロトコルを発表した。DAPOLは、「Distributed Auditing Proofs of Liabilities」を略したものだ。

同ワークショップは、ゼロ知識証明による暗号化の技術標準・正式なドキュメント策定などを、コミュニティ主導で実現することを目指す学術系イニシアチブ「ZKProof」が開催している。

カリブラのコンスタンティノス・カルキアス(Konstantinos Chalkias)氏がリンクトイン(LinkedIn)で公開した記事によると、DAPOLは、監査対象者(銀行などの組織)が負債・義務を増やすインセンティブを持たないと仮定する、特定領域の監査に関する新しいゼロ知識証明ソリューションを提供するという。

企業などの債務・義務・評価などについて、任意の投票・金額などを含んでいることを(ユーザーが)検証できるよう、プライバシー保護メカニズムと公平性の保証を追加することで、監査人が行う従来の検証を補完すると主張している。

DAPOLはどのように機能するか

例えば、仮想通貨取引所が顧客コミュニティに監査・評価を依頼した場合、DAPOLであれば、自分の意見・評価をはじめ、否定的な透明性評価や不快さを示すレポートも含まれているかどうか、顧客はお互いに関する情報を知ることなく監査・評価結果内容を検証できるという。

カルキアス氏の研究チームは、コインテレグラフに対して次のように説明した。

「この技術を利用し、銀行や取引所などの証明機関は、すべての負債について署名かつ暗号化された集計値として公開できる。

この暗号化された値は、すべての個人(顧客)の残高を加算することで算出される。合計残高に含まれている各個人には、含まれていることを確認するための固有「チケット」が送付される。

この「チケット」を使用し、自分の残高が合計残高に含まれているかどうか、すべての個人は第三者に把握されることなく確認できる。もし含まれていない場合は、紛争解決のため、暗号化が施された証拠を提供できる」

誰もが監査人になる

カルキアス氏のチームによると、DAPOLは、従来の監査手法と分散手法に比べいくつかの利点を備えており、そのひとつはプライバシー保護の強化だと主張している。

「特に、総計に含まれる個人の数、また(自分が)総計に含まれているかどうを確認する人々の数を明らかにすることはない」

またカルキアス氏は、誰でもDAPOLを利用できる点をメリットとした。

「証明検証に参加すると同時に、自動化検証ツールを提供する」

DAPOLがリブラ・プロジェクトにおいて実装されるかどうか、どのように実装されるのかは、不明なものお、多くの領域に影響を与えると信じているという。

「ブロックチェーン・ウォレット、金融、電子投票、経済データ、さらには公衆衛生など、DAPOLが役立つ可能性がある領域は数多くあると考えている」

またカルキアス氏のチームは、DAPOLを間もなくオープンソース化できるものと考えているそうだ。彼らは現在、暗号関連コミュニティ、ゼロ知識証明関連コミュニティからのフィードバックを募集しているとした。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン