イーサリアムの上海アップグレードは、マージ後のメジャーアップグレードとして、2023年の後半に予定されている。このアップグレードによって計画的にETHを引き出せるようになり、ネットワークのスケーラビリティを高めるという重要なマイルストーンとなる。

上海アップグレードには、EIP-3651、EIP-3855、EIP-3860など、いくつかのイーサリアム改善提案(EIP)が行われる。今後予定されているすべての改善提案の中で、「WARMコインベース」と呼ばれるEIP-3651は、ビルダーと呼ばれる主要なネットワーク参加者の一部に対してネットワーク手数料を削減する。

ここでいうコインベースとは、ビルダーがネットワーク上で新しいトークンを受け取るために使用するソフトウェアの名称だ。プラットフォーム上のすべての新しい取引は、コインベースソフトウェアと複数回やり取りする必要があり、最初のやり取りはソフトウェアが「ウォームアップ」する必要があるためコストがかかり、その後、やり取りが増えるにつれて手数料が減少していく。しかし、EIP-3651の導入により、コインベースソフトウェアにアクセスするためのガス代が少なくてすむようになる。

ビルダーは、その名が示すように、イーサリアムのトランザクションをブロックにパッケージする役割を担っており、そのためブロックビルダーと呼ばれている。これらの取引はその後バリデーターに転送され、バリデーターはブロックチェーンに適切な順序でそれらを配置する。

これらのビルダーは、ブロック内の取引を一定の順序で並べることでトレーダーから報酬を得ており、トレーダーは自分の取引を早く検証してもらうために高いガス代を支払っていることになる。現在、Flashbotsはイーサリアムのエコシステムで最大のビルダーであり、中継されるブロックの80%を占めている。

今回のアップグレードで最も恩恵を受けるのはビルダーを利用するバリデーターだが、ビルダーを利用して取引を実行するトレーダーも、失敗した取引に対して取引手数料を支払う必要がなくなるため、恩恵を受ける可能性がある。トレーダーは現在、失敗した取引にも手数料を支払っている。これは、マイナーが取引の成否にかかわらず、チェーンに取引を確認する必要があるためだ。

Shandongと名付けられた上海アップグレードのテストネット版は10月18日に稼働しており、イーサリアムの開発者は2023年9月まで様々な実装に取り組む予定。