イーサリアムを資本金に組み込んだ会社が今年5月に誕生する。仮想通貨関連のスマートコントラクトシステムズ(SCS、東京・千代田)が、金融システム開発のシンプレクス(東京・港)と共同出資する新会社にイーサリアムを現物出資する。イーサリアムによる出資額は9800万円相当。両社によれば、これほどの規模での仮想通貨による現物出資は極めて珍しいという。

 シンプレクスが29日、発表した。新たに設立する共同出資会社「ディフィニティ」は、SCSが9800万円分のイーサリアムを現物出資して49%分の株式を取得。シンプレクスは51%分を1憶200万円を現金で出資する。仮想通貨の価格変動に対応するため、SCSは一定額のイーサリアムを多めに現物出資する。

 会社を設立する際の出資は現金で行われるほか、有価証券や不動産などで現物出資をする場合もある。仮想通貨を使って現物出資する事例は極めて珍しく。SCSの垣谷昌孝社長によれば、「世界的に見てもあまり例がない」と話す。

 仮想通貨の中でイーサリアムを使った理由として、垣谷氏は「取引が活発であるほか、スケーラビリティやフレキシビリティにも優れている」と指摘する。イーサリアムはスマートコントラクトなど企業間取引への応用も進められており、「将来の可能性も大きい」と話す。

 今回の仮想通貨の現物出資について、垣谷氏は「新しいアセットクラスとして評価された」と意義を強調する。今回の新しい取り組みをきっかけに、企業を設立する際の資本金に仮想通貨が活用されていく可能性もある。

 新会社は仮想通貨関連のシステムを展開する。仮想通貨取引所向けシステムを手掛けたシンプレクスと、分散型台帳開発や仮想通貨取引にノウハウのあるSCSが協力し、7月を目途にディーリング用システムを開発する。9月には同システムと、大口の仮想通貨取引者と取引所とのマッチングシステムをASPで提供する計画だ。