著者　Hisashi Oki dYdX Foundation Japan Lead

早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、キー局のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。その後日本に帰国し、大手仮想通貨メディアの編集長を務めた。2020年12月に米国の大手仮想通貨取引所の日本法人の広報責任者に就任。2022年6月より現職。世界最大級のDEXであるdYdXのガバナンスをサポートしている。

先週、dYdX FoundationはdYdXのトレジャリーから3,000万ドル相当のDYDXトークンを受け取りました。以前のブログでお伝えしたように、dYdX Foundationは今後3年間の予算として3,000万ドルを提案し、これはコミュニティから圧倒的な支持を受けました。この記事では、DAOの参加者が分散化を推進する上で、反直感的なアプローチが時には有効であることについて説明いたします。

分散化と直感的に良くないこと

分散化は直感的には必ずしも良いとは限らないという点について、dYdX Foundationのチャールズ・ドーシー氏は、「トレーダーのためのビルダーたち」というスローガンのもと、以下の全ての人々にdYdXチェーンへの参加を呼びかけました。

「I’m talking about you, the “Builders for the traders”
You:
-the engineers 👩‍💻
-the coders 👨‍💻
-analysts 📊
-hedgies 🦔
-researchers 🔢 🔎
-dashboard-ers 📈
-degens 🙃
-products wizards 🧙‍♂️
-leaders 👨‍🚀
-investors 💵
-designers 👩‍🎨
-bridgers 🌉
-validators 💻
-relayers 🏃‍♂️
-custodians 🔒
-indexers 🔑
-DAOs members 👨‍👩‍👦‍👦
-stakers 🔐
-grantors 👷‍♂️ 👷‍♀️
-grantees 👷‍♂️ 👷‍♀️
-auditors 👁
-proposers 🙋‍♂️
-voters 📩
-problem solvers 👨‍🔬
-thread-ers 🗣
-journalists ✍
-educators 👨‍🏫
-legal experts 👩‍⚖️ 👨‍⚖️
-memerizers 😂
-trustees 👨‍✈️
-translators 🥇
-merchandise fashionistas 💅
and more…
…in so many countries.」

ー dYdX Foundation チャールズ・ドーシーCEO https://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:activity:7162679250653790208/

全てのステークホルダーが、トレーダーのためのエコシステム構築に参加し、民主的なプロセスを経て意思決定を行うことは、理想的で分散型の姿勢の鏡像のように映るかもしれません。それは間違いではありませんが、実際には、分散化を進めることで効率が失われる可能性があります。分散化を推進しつつも、各分野でのリーダーシップが必要であるという理由から、dYdXエコシステムには以下の4つのエンティティが存在します（将来的には増減する可能性があります）。

  • dYdX Trading（開発企業）
  • dYdX Foundation（ガバナンスサポート）
  • dYdX Operations SubDAO（フロントエンド運営）
  • dYdX Grant SubDAO（グラント配布）

dYdXの分散化の鍵は、チャールズ氏が挙げたようなプレイヤーが、4つの「中心的な」エンティティの努力の結果ではなく、多くの人々による組織化されていない動きの結果としてトークンの価値が決定されることを合理的に期待できる点にあります（Howeyテストの第4の条件を満たさないことが必要です）。

dYdXは1日あたり10億ドルの取引量を記録する大規模な事業です。大規模な事業には多くの関係者が存在するため、小規模な個人商店のようにはいかないことを認識する必要があります。昨年10月のローンチ前までは、dYdX Trading社が実質的に取引所を管理し、手数料を受け取っていました。現在では、上記の4つのエンティティ（将来的にはさらに増える可能性がある）が、どれも代表的なエンティティになることなく、権限を分散して持っています。

では、分散化を推進するにあたって、何が必要になるでしょうか？誤解を恐れずに申し上げますと、良い意味で4つのエンティティが密に連携しないことです。

同じエコシステム内でdYdXの成功という共通の目標を持ちながら、密接に連携しないとはどういうことでしょうか？この意見は直感的に正しいように思えます。しかし、元dYdX Trading社のCLOであるMark Boiron氏によると、この直感は分散化の精神に反するものです。

4つのエンティティは基本的に情報を積極的に公開することが推奨され、4つのエンティティに属さないプレイヤーが知らない情報は極力減らすべきです。ただし、エンティティ間で秘密の情報を扱い、公開できない時もあるかもしれません。その場合は、最低限エンティティ間で情報を共有しないことが求められます。あるエンティティが、他のエンティティが持つ情報を持っていないことにより、プレイヤーの利益を損なうような行動をすることが抑制されます。これが、4つのエンティティが独立して存在すべきであり、良い意味で「密に連携しない」理由です。

分散化の世界では、反直感的なアプローチが良しとされることが多いです。例えば、「Trustless」もその一例です。分散化の世界で生きたい人々は、現在の常識に疑問を投げかけることから始めることも一つの方法かもしれません。

※ 上記はdYdX Community JapanのWeekly DAO Reportを要約・編集したものです。