電力シェアリング(東京・世田谷)は23日、ソフトバンクなどと提携し、再生可能エネルギーによる二酸化炭素の削減価値を消費者間で取引する事業実験を、6月から開始すると発表した。これまで環境付加価値の取引は、電力の大口消費家である企業が中心だったが、ブロックチェーンをの利点を活かし、消費者間の取引を促進する。
環境省が公募した「ブロックチェーン技術を活用した再エネCO2削減価値創出モデル事業」に、電力シェアリングの提案が採択された。再生可能エネルギーの利用量を個人にひも付けて把握し、収集したデータをブロックチェーン技術と連携させる。これまで捕捉しずらかった各家庭における二酸化炭素削減価値を適正に評価した上で、クラウド上で売り手と買い手を繋ぎ、低コストで、容易に取引することを目指す。
環境付加価値取引イメージ図(出所:電力シェアリング)
事業費は1億1000万円。まずは鳥取県米子市の住宅やドワンゴ取締役の夏野剛氏の自宅といった、太陽光パネルを設置した6〜10世帯や、電動バイクのレンタル所などで実験する。
環境省の担当職員によると、同事業には、消費電力の再生エネルギー使用率100%を目指す企業連合のRE100や、二酸化炭素排出削減目標を設定するサイエンス・ベースド・ターゲッツ(SBT)の参画企業から賛同を受けており、環境付加価値の買い手になる見込みだ。
電力シェアリング社の酒井直樹代表取締役社長は、 環境付加価値を消費者が取引するメリットについて以下のように説明した。
「これまでの環境付加価値は、例えば水道水とブランドの水が一緒のバケツに入れて販売されるように取引されていた。ブロックチェーンを使うことにより、誰がどのように環境付加価値を生み出し、取引したかが可視化される。環境への意識が高い人は、例えば、環境付加価値を取引する時にメッセージを送れて、顔の見える個人から買えたら、今後も良い行動をするモチベーションになる」
削減価値を調達し、企業が二酸化炭素排出量を減らす仕組みは、Jークレジットやグリーン電力証書があるが、手続きの煩雑さなどにより普及が遅れている。また、企業と比べ電力消費量の少ない一般家庭では、温室効果ガス削減の価値を適正に評価することが難しく、システムに包摂しずらいという課題があった。今回の事業システムは、このような既存のシステムと統合していくことを念頭に置き、実験を進めていく計画だ。