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【年末年始特集】プライバシーと分散型アイデンティティが争点となった2025年のまとめ

【年末年始特集】プライバシーと分散型アイデンティティが争点となった2025年のまとめ
年始スペシャル

長年にわたり、イーサリアム共同創業者のヴィタリック・ブテリンは、仮想通貨分野におけるプライバシーの重要性を訴えてきた。ブテリンは、単にユーザーを取り込むだけでは不十分だと主張し、「囲い込み型プラットフォーム」として広く使われるようになってしまえば、分散型システムの根本的な目的が損なわれると警鐘を鳴らしている。

「目標は人々をイーサリアムに取り込むことではない。オープン性と自己主権へと人々を導くことだ」と、同氏は最近Xへの投稿で記した。

Source: Vitalik Buterin

ブテリンは、プライバシーを業界の中核的価値と位置付ける仮想通貨界でも最も著名な提唱者の一人であり、国家や企業による監視から個人を守る必要性を強調している。また、分散化は、少数の支配的な主体から権力を分散させる手段だと論じている。

2025年、分散型アイデンティティは、デジタル監視への業界としての最も活発な対応の一つとして浮上した。単一のグローバル識別子に集約するのではなく、新たな取り組みでは、選択的開示を重視する動きが強まっている。これにより、ユーザーは、唯一性、適格性、コンプライアンスといった特定の属性のみを証明し、完全な身元情報を開示せずに済むようになる。

この変化は、ブロックチェーン、アプリケーション、規制当局が直面する共通の課題を反映している。すなわち、ネットワークを監視システムへと変質させることなく、いかにユーザーを検証するかという問題である。

イーサリアム、主要な実験場に

予想通り、イーサリアムは分散型アイデンティティとプライバシー保護インフラの主要な実験場の一つとなっている。

10月29日、イーサリアムのX公式アカウントは、同ネットワーク上で750を超えるプライバシー重視のプロジェクトが開発中であり、その多くが匿名決済にとどまらず、アイデンティティ、資格情報、選択的開示に取り組んでいると明らかにした。

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Source: Ethereum

この投稿はコミュニティから好意的に受け止められ、イーサリアムの文化や理念に焦点を当てるコミュニティ運営アカウント「ブック・オブ・イーサリアム」は、プライバシー、ゼロ知識ツール、人間中心のアイデンティティが、遠い理想ではなく、イーサリアム上で現実として展開しつつあるとする投稿で応じた。

Ethereum, Identity, Worldcoin
Source: The Book of Ethereum

ブテリン自身も、2025年に分散型アイデンティティについて直接言及している。

6月28日に発表したエッセイで同氏は、中央集権型ログインを単一で永続的なオンチェーンIDに置き換えようとする初期の試みについて警告を発した。プライバシー保護型のアイデンティティシステムであっても、活動の多くが一つの識別子に紐付けられれば、長期的な追跡や強制、匿名性の喪失を招くリスクがあると指摘している。

これに代わり、ブテリンは属性ベースの検証を提唱している。これは、単一のグローバルIDを提示するのではなく、アプリケーションが必要とする情報だけを証明する仕組みである。ゼロ知識証明は、個人情報の中身を明かすことなく、ある主張が真であることを証明できる技術であり、この考え方を可能にする中核技術だ。

ブテリンの枠組みでは、この手法により、恒久的な単一デジタルIDに権限が集中する危険を回避しつつ、プライバシーを維持できるとされる。12月には、イーロン・マスクがX上で、コンテンツランキングのアルゴリズムが公平に機能していることを示すため、ゼロ知識証明やブロックチェーン技術を導入すべきだとも提案している。

企業向けから人間性証明まで

イーサリアム以外でも、企業向けのアイデンティティ基盤は2025年に進展した。8月には、ハッシュグラフ・グループが、ヘデラ・ネットワーク上に構築した自己主権型アイデンティティ基盤「IDTrust」を発表し、デジタル資格情報を検討する政府や機関向けの分散型選択肢として位置付けた。

アカウントがボットや重複ではなく、実在し唯一の人間に対応していることを確認する「プルーフ・オブ・パーソンフッド」も、2025年に進化を続けた。中でも、サム・アルトマンが関与する「ワールド」は、最も注目度の高い例となっている。

ワールドのアイデンティティ・プロトコル「ワールドID」は、個人データを開示することなく、オンライン上で実在する唯一の人間であることを証明できる仕組みとして設計されている。プロジェクトの資料によると、虹彩スキャンによる生体認証後、データは暗号化されてユーザーの端末に送信され、検証用ハードウェアからは削除される。これにより、第三者と個人情報を共有することなく、ユーザー自身がワールドIDを管理する。

一方で、生体認証に基づく手法については、プライバシーや強制性を巡る懸念が引き続き指摘されている。

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Source: Eric Snowden

2025年に再び注目を集めた分散型アイデンティティは、仮想通貨業界の有力人物からも関心を集めている。6月には、コインベースCEOのブライアン・アームストロングが、分散型アイデンティティをインターネットの次の段階を支える柱の一つと位置付け、分散型ソーシャルメディアや予測市場と並び「本格的に立ち上がりつつある」と記した。

国家監視と交差するデジタルID

各国政府がデジタルID制度を進める中、データ管理とプライバシーを巡る問題は、より重大な意味を持ち始めている。

強固なプライバシー文化で知られるスイスでは、監視強化を伴う改革案が新たな批判を招いた。1月、スイス連邦評議会は、郵便・電気通信監視条例(OSCPT)の改正を提案し、通信事業者の監視義務を拡大し、ソーシャルネットワーク、メッセージングアプリ、VPNなどのサービスにも適用する内容を盛り込んだ。

草案では、利用者が5,000人以上のサービス提供者に対し、本人確認の実施や、エンドツーエンド暗号化で保護されていない通信の復号を義務付けるとしている。

この提案には強い反発が起きた。分散型VPNを提供するニムは、スイス国民に対し、選出された議員に連絡して反対するよう呼びかけ、次のように主張した。

スイスでは、プロトンやスリーマといったプライバシー重視の企業の成功が祝われ、軍もスリーマを採用し、ニムのような有望な企業がデジタルの完全性を守る技術分野で台頭している。その一方で、連邦評議会のこの条例は、産業全体を破壊するものだ。

7月には、プライバシー重視のテクノロジー企業プロトンが、この提案を巡る不透明感を理由に、スイスでの投資を凍結し、1億ドルをドイツとノルウェーのデータセンターに振り向けたと明らかにした。

12月10日、スイス連邦議会上院にあたる全州議会は、通信監視拡大案を抑制する動きを見せ、連邦評議会に再考を求める動議を事実上支持した。

英国では、コンコーディウム・ブロックチェーンが8月、ゼロ知識証明を用いて身元を明かすことなく18歳以上であることを証明できるモバイルアプリを公開した。これは、成人向けコンテンツに対する年齢確認義務が導入される中でのリリースとなった。

米国では4月、グーグルが、複数の州にわたり、政府発行のデジタルIDをグーグル・ウォレットで利用できるようにすると発表し、DMVやTSAのチェックポイントでのモバイルID利用を可能にした。

この更新では、年齢確認向けのゼロ知識証明も導入され、同技術が仮想通貨ネイティブなプロジェクトにとどまらず、ビッグテックによる主流のデジタルIDシステムにも取り入れられつつあることが示された。

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