マスターカードの子会社サイファートレースの調査・情報部門ディレクター、ジョネル・スティル氏は、「ビットコインフォグ」という仮想通貨ミキシングサービスを巡る刑事事件で、弁護側を支持する報告書を提出した。
この事件でサイファートレースは、ロマン・スターリンゴフ被告の弁護士の要請を受け、41ページにわたる報告書を提出した。報告書では、検察側がブロックチェーン調査企業チェイナリシスから得たデータの有効性についてスティル氏の見解が詳述されている。
報告書の中心的な主張は、チェイナリシスから提供されたデータはオンチェーンで裏付けられないというものだ。
「この事件で使用されたブロックチェーン・フォレンジックと追跡ツールは、スターリンゴフ氏がビットコインフォグの運営者であると誤って結論付けるために誤用された。そのような証拠はオンチェーンに存在しない」
スターリンゴフ氏は、米国政府から、違法なマネーロンダリング取引に参加したとされる仮想通貨ミキシングサービス「ビットコインフォグ」の創設者であると告発されている。米政府はビットコインフォグを通じて、3億3600万ドルの資金が洗浄されたと主張している。
過去の報道によれば、10年分のブロックチェーンデータを分析した結果、マネロンに関与していたとして2021年4月にスターリンゴフ氏は逮捕された。彼の弁護士によれば、犯罪の主張はチェイナリシスから提供された証拠に基づいている。
最近のポッドキャストでは、スターリンゴフ氏の弁護人であるトーア・エケランド氏とマイケル・ハザード氏が、自分たちの視点から事件を説明した。彼らは、チェイナリシスがデータを使って取引を追跡することに失敗し、代わりに検察側にビットコインフォグの創設者が誰であるかについての意見を提供したと主張している。
サイファートレースが提供した報告書は、チェイナリシスのデータに関するいくつかの問題点を強調しており、スティル氏の意見では、それから導き出された結論(スターリンゴフ氏がビットコインフォグの創設者である)はオンチェーンデータで証明できないという。
スティル氏は最終的に、「ブロックチェーン・フォレンジックは調査の手がかりとしてだけ使用すべきだ。それ自体では、主要な証拠としては不十分である」と結論付けている。同氏はさらに、「米国とチェイナリシスがブロックチェーン・フォレンジックの証拠を裏付けるものが何もないにもかかわらず、彼らが得た結論に至ったことは驚くべきことだ」とも述べている。
「このような誤った逮捕を防ぐために、チェイナリシスとそのブロックチェーン分析の方法論が独立して監査されることが推奨される」とスティル氏は書いている。
スターリンゴフ氏の資産は全て米国に押収されており、彼の弁護団とサイファートレースは彼の弁護活動を無償で支援している。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン