canow株式会社(カナウ)は、ブロックチェーン技術を活用したプロダクトやサービスの提供、トークンのプロジェクトに関わってきた桂城漢大氏と大坂亮平氏が中心となり、2020年4月に設立した会社だ。

桂城氏は、海外とのリレーションを、大坂氏はマーケティングを経験してきたが、海外の業界各社の幅広いビジネス展開を目の当たりにして、国内外の企業間や投資家をつなぎ、教育などにも取り組む新会社を設立した。

canowでは,すでに海外の企業数社とパートナーシップを結び、事業を拡充していこうとしている。

同社のパートナー企業を紹介しながら、canowの戦略などを探っていく。

パートナーシップ第1号は、中国の有力ブロックチェーンインキュベーター

canowが最初にパートナーシップを結んだのは、中国の有力なブロックチェーンインキュベーターのB-labs社だ。

canowで代表を務める桂城氏と、B-Labs社のCEOであるLola Wang氏に今回の提携について話してもらった(以下、敬称略)。

ー B-Labsの事業内容についてについてお伺いします。

Lola

B-Labsは、2018年の年末にOKグループ、浙江・清華・長江デルタ研究所、Canaan社の3者が設立母体のブロックチェーンインキュベーターです。

OKグループは中国で最も早く設立されたブロックチェーン企業の一つで、世界のブロックチェーン業界をリードする存在です。

デルタ研究所は浙江省政府と清華大学が共同で設立した研究機関です。

Canaan社は世界的なスーパーコンピューティングソリューションプロバイダーで、昨年末に米ナスダック市場への上場を果たしました。ブロックチェーン関連業界の企業としては、世界初の株式上場企業となりました。

これら3つの企業と機関が母体となったB-Labsの設立は、中国国内でも大きな注目を集め、国営テレビのCCTV(中国中央電視台)も設立時にはその模様を伝えました。

B-Labsが展開する主なサービスは、ブロックチェーン起業家やスタートアップ企業向けのリアルスペースの提供とインキュベーションサービスの2つです。

浙江省杭州市の中心部にある、総面積がおよそ1800平方メートルにおよぶコワーキングスペースでは充実したオフィスサービスを提供しています。

フランスのデザイナーによる先進的な空間は、ブロックチェーン業界向けの重要なイベントが開催されるなど多くの人々が引き寄せられる影響力のある場所となっています。

また、インキュベーションサービスでは、マーケティングプロモーション、資金調達、技術支援、法務やコンプライアンスに至るまでのサービスを提供し、スタートアップ企業をサポートしています。

(浙江省杭州市の中心部にあるB-Labsのコワーキングスペース)

中国のブロックチェーンの今後

桂城

中国におけるブロックチェーンは今後、どのように発展していくと考えていますか?

Lola

中国では政府がブロックチェーン支援政策を発表しました。トークンだけでなく、ブロックチェーンそのものの発展を提唱し、より良い方向に進めようとするものです。

そのため、私たちも今後は、ブロックチェーン製品の技術開発と産業への応用にさらに注力し、政府の政策に積極的に対応していきたいと考えています。

パートナーシップ締結のきっかけは

ー2つの企業がパートナーシップを結んだきっかけは何だったのでしょうか?

桂城

中国に視察に行かせていただいた際に、B-Labsの方々と話をさせていただいたのがきっかけでした。

そこから、ブロックチェーン業界では異例の長さだと思うのですが、半年間、毎日のように協議をし、お互いにやろうとしてることが近いということもあり、合意に至りました。

Lola

B-Labsを設立した当初は、コワーキングスペースを作り上げることに時間を割かざるをえなかったため、事業のリソースが中国国内に集中していました。

しかし、時代は変化していて、私たちもその流れに対応していかなければなりません。

中国国外の海外市場でのインキュベーション事業にも注目していて、有力なプロジェクトを創出していきたいとも考えていました。

日本にあるcanowは、技術チームやメディアも持つ影響力のあるインキュベーターです。そうしたところから、私たちが提携していくことには大きな意味があると考えたのです。

ブロックチェーンでこの社会を変えていきたい

ーお互いにどんなところに期待していますか?

桂城

canowにとってはB-Labsが持っているバックグラウンドも大きな魅力です。

業界のキーパーソンときちんとつながっているので、ビジネスの展開や情報の入手という面から見ても心強い存在だと考えています。

ブロックチェーンやトークンに限らず、日本のビジネスは世界から見て情報のスピードや正確性について遅れをとっているという気がしています。

もちろんそこには言語の問題もあると思います。

私自身、これまでに海外のキーパーソンと言われる方々と話をしてきましたが、日本で聞いていた話とまったく違うなと感じることが数多くありました。

今回の提携で、直接、そうした方々とお話する機会も多くなり、よりリアルな情報に接することができるようになっています。

日本のマーケットを広げていくことが私たちのミッションですので、そうした経験を独占することなく、外部の方にも情報や人脈を共有しています。

私自身、まだ若いのでこいつら怪しいぞ、と思っている方もいらっしゃいます(笑)。

私たちが紹介したキーパーソンと、実際にお話していただくことで、canowとしての信用も築いていけるかなという思いもあります。

Lola

B-Labsは、中国の優れた技術が海外で認知されるようになることを願っています。

中国の技術開発力はまだまだきちんと評価されているとは言えないので、そうした印象が改善されるきっかけになればと期待しています。

また、私たちは海外の最新技術を導入したいとも考えています。

canowは海外プロジェクトの経験が豊富な日本の組織として広く認知されています。B-Labsが海外ブロックチェーン市場に参入する際のベストパートナーだと言えるでしょう。

桂城

ブロックチェーンやトークンが生まれた背景には2008年のリーマンショックによる市場のクラッシュがあったと思っています。

新型コロナ禍で市場が混乱している今も、経済への影響はその時以上だと言われていますが、私たちもB-Labsも海外のパートナーを探し、新たなものを生み出したいと考えています。

B-Labsが日本でのパートナー探しに苦戦されていた時に出会うことができたのはとても良いことだったと思っています。

また、私たちはお互いにこの社会を変えていきたいと考えています。

一緒に事業やプロジェクトを行うだけでなく教育などの分野でも協力していければと考えています。

中国のブロックチェーン、トークンビジネスの特長

ー それではここからは桂城さんに中国の状況などについて話をお伺いします。まず、中国のブロックチェーン起業家やスタートアップ企業についてどんな感想をお持ちですか?

桂城

大手の取引所とは良い関係を気づいているのですが、それぞれが想像以上にしっかりとビジネスに取り組んでいることと、業界としてビジネスが成立していることを再確認しています。

ー ビジネスをしていて気がついたことなどはありますか?

桂城

価値を見出すことができ、ウィンウィンの関係ができる相手としかビジネスをしないというのが彼らのスタイルです。

また、ビジネスのスピードも速いですし、取引所以外でもスタートアップの方々も明確なミッションを持った優秀な方が多いという印象があります。

彼らと仕事をしていく中で、率直に意見を交換するあまり、喧嘩のようになることもあります。

そうした交渉を重ねることで、交渉がうまくなったなと感じることもありますが(笑)、駆け引きが終わり合意した後はファミリーのような付き合いになることが多いですね。

また、成長している企業の方々は利益の追求はしつつも、今後社会はどう変わっていくのかということを常に考えています。

私と同じような若い人たちが多いのですが、食事をしていてもそういった会話がどんどん出てくるので、刺激を受けています。

ー インキュベーショサービスのトレンドなどで違いを感じることはありますか?

桂城

スタートアップにとってのトークンの位置づけなど、日本との制度や規制の違いもあるので、異なる点は多いですね。

例えば株式市場では、日本と同様にIPOを目指すスタートアップに対して、限られたエンジェル投資家が出資、未上場株を購入し上場益を狙うということがあります。

トークンの場合はそうではなく、マスマーケットで数多くの小口投資家が上場したトークンを購入し、スタートアップはそうした多数の小口投資家から資金を調達してきたのがこれまでのICOやIEOだったと思います。

中国では、エンジェル投資家がトークンで出資をして、企業の上場時に出資した額に応じた株式を渡される、そうしたいわゆるダブルイクジットがトレンドになっています。

日本では金融庁の規制もあり、難しいのですが、実際にそこにお金が集まるのを見たり、そうしたことに関わったこともありました。

現場ではかなりロジカルにそうしたことが行われています。

インキュベーションサイドは取引所と関係作っておく必要があり、取引所の特長に応じてトークンがアサインされ、そこにマーケッターが加わり、マーケティングや資産管理の方法までが決められています。

そうした仕組みにエンジェル投資家が役割を果たしているのです。

中国ならではのインキュベーションではないかと思うのですが、こうしたノウハウがどんどん蓄積されているように思います。

中国でも、暗号資産はよほど有望なプロジェクトでない限り、いきなり10倍、20倍に価格が上がる世界ではなくなりつつあります。

もちろん小口の投資家にはまだ夢を見ている人は多いのも事実です。

インキュベーションサイドにとって、大口投資家や富裕層に関しては、トークンは何十倍、何百倍のリターンを出すものではなく、彼らに究極のファンになってもらうために、どう還元していくかを考えていくものとなっています。

未上場の株式市場では公開前に株式を保有するためのハードルは高いので、何らかの形で未上場株に関わることができるのが、トークンだという位置づけになっているのです。

インキュベーションサイドも、長い間サポートしてもらいたいと考えている大口投資家や富裕層を裏切ることはできません。

そこでインキュベーターサイドは、いかに良い取引所とコネクションを持つか、リアルなビジネスとつながるのかを、そしてどう法定通貨と結びつけていくかなどを常に考えています。

制度の違いはあるとはいえ、私たちにも刺激になっています。

ー 日本は遅れているということでしょうか?

桂城

規制があることで、そういったところはあるかもしれませんが、日本の規制がスタンダードになると考えている関係者が多いのも確かです。

金融庁も今はバッドアクターを締め出そうとしているという時期だと思っています。

その時期を過ぎて、もう少し規制が緩和されていけば良いなと思っています。

ー 今後のパートナーシップについてはどのように考えていますか?

桂城

ほぼ決まっている会社があと10社くらいあります。

インキュベーターや取引所の他に、インキュベーションを手掛けたい企業など、私たちの目指すものに価値を認めてくれて賛同していただいている方々です

canowが目指すもの

ー 今後のcanowの展開について教えていただけますか?

教育に力を入れたいと考えています。

日本でもトークンを上場すれば大きなお金を得ることができるという時代ではなくなってきています。

現在の法律や規制のもとでトークンをどのようにビジネスに役立てていくのかといったことをロジカルに説明していく教育コンテンツを充実させることで、ブロックチェーンやトークンの社会性を確保し認知を広げたいと考えています。

規制や制度の壁があるので難しい面もありますが、さきほど紹介した中国でのトークンと株式を合わせた資金調達の仕方などを考えていくことで、全体のリテラシーを高めていくことも必要です。

また、今はトークンやブロックチェーンが、他の一般的な業界と少し離れたところにいるといった印象があります。

そうした中で、ビジネスの中でブロックチェーンの技術や考え方が採用されているといったファクトを積み上げることでその距離を縮めていくことができるといいなと思っています。

さらに、事業会社としてしっかりと売り上げを立てていくことはもちろんですが、それと同時に社会貢献が、ブロックチェーンやトークンの周辺でも考えられるようになってくると思っています。

そうしたことを進めていくためにも、B-Labsとパートナーシップを結ぶことができたことは意味のあることだと考えています。

彼らは設立母体でもある、世界をリードする企業や団体とのネットワークを背景に、多くのブロックチェーンに関わる人々をひきつけています。

日本でのブロックチェーンは可能性を持っていると評価していますし、私たちと同様に、技術の発展が世界中の人々にとって有益なものになると確信しています。

そうした意識を共有した彼らとの間で、新たなチャレンジをしていきたいですね。

B-Labsとの提携と同様に、新しい技術や考え方を通じて、世界中のパートナーと協力しながらインパクトのある行動を取っていきたいと考えています。

 

プロフィール


Canow株式会社 代表取締役 桂城漢大(かつらぎ  くにひろ)氏
1995年生まれ。前職のIFA株式会社ではCOOとして情報銀行の構想を完成させ、海外取引所や企業との交渉、Delta summit、D.FINEをはじめとした世界各国のカンファレンスにスピーカーとして精力的に参加。国内外の架け橋として多くの企業をサポートするために『canow株式会社』を設立し、代表取締役に就任。現在はインキュベーション事業を軸とし、数多くのサービスを手掛ける。


B-Labs CEO Lola Wang氏
中国生まれ。大学在学中に交換留学生としてスペインへ、卒業後もスペインで修士課程を修了。
帰国後、BlueFocusグループでメディア広報に従事。
2018年、OKグループに入社後、B-labプロジェクトの初期参加者の一人となり、B-labの成長を目の当たりにする。20年年5月、B-labsのCEOに就任。