日銀の雨宮正佳副総裁は5日、都内で開かれたセミナーで講演し、フェイスブックの独自仮想通貨リブラについて、運営側も規制対応や経営の健全性、リスク管理体制の確保など責任ある行動が求められるとの見解を示した。ロイター通信が報じた。リブラには潜在的な利用者が非常に多く巨大である、という認識を示した。
雨宮副総裁はリブラについて、「具体的なコメントを差し控えたい」としながらも幅広く受け入れられるために「支払い決済手段としての価値を安定させることが必要」と指摘した。
「CBDCは決済手段だけでなく価値保蔵手段として機能」
講演では中央銀行のデジタル通貨(CBDC)発行に関して触れ、「多くの中央銀行は近い将来、CBDCを発行する計画はないが、 調査研究は行っていくというスタンスにあり、日本銀行も同様の考え」であると発言した。
さらに、キャッシュレス化が進むスウェーデンでは、小売決済市場の競争維持にCBDCが寄与するという意見があるという考えを紹介。その中で雨宮副総裁自身は「CBDCの発行がリテール決済市場の競争促進策として最適な選択肢であるとは思っていません」と発言。「まず採るべき処方箋は、政府の競争政策により、独占企業の分割や規制強化などを行い、競争の歪みを解消すること」であるとの見解を述べた。
またCBDCの発行意義について、
「決済手段としてだけではなく、価値保蔵手段としても機能する」
とし、金融危機や震災などの災害時に現金の引き出しが大幅に増えたことから、デジタル社会にふさわしい信用力の高い中銀マネーの供給体制を整備すべきとの考えを明らかにした。