ウェブ3.0(Web3)チャットアプリの新時代が始まろうとしているー。

ユーザーは今後、より分散型のチャットアプリで安全に友人や知人とコミュニケーションをとることが可能になる。本論説ではウェブ3.0のチャットアプリがもたらす利点と課題、そしてコミュニケーションの未来への影響について考えてみたい。

ウェブ3.0のメッセージングプロトコル、例えばXMTP(Extensible Message Transport Protocol)はイーサリアムのアドレスやイーサリアムネームサービス(ENS)ドメインのような検証可能な識別子間で通信を可能にする分散型のコミュニケーションネットワーク上で実装されている。

従来のチャットアプリであるテレグラムやディスコードが中央サーバーに依存しているのに対し、ウェブ3.0のチャットプロトコルは分散型ネットワークを利用し、ウォレットを介して仲介者なしでユーザーが通信できる信頼性のある環境を作り出す。

ウェブ3.0のチャットプロトコルの利点の一つは、分散型であることによるメッセージの安全性の確保だ。従来のチャットアプリではメッセージが中央サーバーに保存されることが多く、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクがある。それに対し、ウェブ3.0のチャットプロトコルは暗号化アルゴリズムを用いてメッセージを保護し、不正アクセスから守る。

また、ウェブ3.0のチャットアプリを利用するとメッセージの送信者の本人確認が容易になり、詐欺師の被害を大幅に減らすことができる。さらに、ウェブ3.0のチャットプロトコルによってマイクロペイメント(超少額決済)が可能になり、スパムや荒らしへの対策が行える。

ただしウェブ3.0のチャットアプリには課題も存在する。一つの大きな問題はスケーラビリティ(拡張性)であり、現在のほとんどのブロックチェーンネットワークのインフラは、従来のチャットプラットフォームが処理するメッセージの高いボリュームに対応できていない。またウェブ3.0のチャットプロトコルを使うには現段階ではある程度の技術的知識が必要であり、技術に疎いユーザーには敷居が高い。

ただこれらの問題は、市場に登場する多くのスケーリングソリューションやアカウント抽象化ソリューションによって解決される見込みだ。

さらにウェブ3.0のメッセージングプロトコルが犯罪者に利用されるリスクも存在する、ネットワークの分散型性が法執行機関による追跡や違法行為の監視を困難にするからだ。そのため、ウェブ3.0のチャットプロトコルが悪用されないように、明確な規制やガイドラインが必要だ。

これらの課題にもかかわらず、ウェブ3.0のチャットアプリの潜在力は非常に大きい。世界のデジタル化が進む中で、安全かつ分散型のコミュニケーション手段の需要は増加する一方だ。

ウェブ3.0のチャットアプリは、プライバシー、セキュリティ、透明性を向上させる新しいコミュニケーション手段を提供する可能性がある。ディスコードやツイッターはデータがオンチェーンに移行することで時代遅れになるだろう。

ウェブ3.0のチャットプロトコルの勃興はブロックチェーンエコシステムにおいて大事な動きであり、ユーザーやDApps、プロトコル間等で安全で分散型のコミュニケーションを実現する。導入に関連する課題があるもののウェブ3.0のチャットプロトコルの利点はリスクを上回る。ブロックチェーン技術が進化し続ける中で、ウェブ3.0のチャット分野でさらなるイノベーションが登場することが期待される。これにより従来のアプリが陳腐化し、新しい時代のコミュニケーションのあり方が到来するだろう。

ダリウス・ムフタルザデ(Darius Moukhtarzadeh)は分散型SNSに焦点を当てた起業家兼アドバイザーである。彼は、レンズプロトコル上のNFTミームプラットフォームであるmemester.xyzの共同創設者であり、以前はデジタル資産銀行のシグナムで研究員として働いていた。アーンスト・アンド・ヤングのブロックチェーンコンサルタントや、スイスのクリプトバレーでいくつかのスタートアップでも働いていたことがある。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的または投資に関する助言として意図されているものではありません。ここで表現される見解、考え、意見は、著者のものであり、必ずしもコインテレグラフの見解や意見を反映または代表するものではありません。