国内の仮想通貨(暗号資産)取引所で、利用者回帰の動きが出始めている。足元ではビットコイン(BTC)は2017年に記録した最高値を更新。当時の熱狂の中で仮想通貨投資に参加したが、その後取引から離れていた投資家たちが市場に戻ってきたのだ。

「久しぶりにご利用されるお客様へ」

国内取引所では、久しぶりに戻ってきたユーザーから問い合わせ増加に直面している。

Zaifは11月19日に「暗号資産の高騰を受け、久しぶりにZaif Exchangeをご利用されるお客様へ」とのタイトルのお知らせを掲載。「ログインができない」といった久しぶりに利用する顧客から問い合わせに対応するための情報を掲載した。

「10月以降、カスタマーサポートには、『久しぶりにログインしようとしたが、PASSがわからない』『スマホを機種変更したので、二段階認証のアプリがなくなったのでログインできない』といった問い合わせが殺到しています」

Zaifを運営するフィスコ仮想通貨取引所はこう話す。10月以降、カスタマーサポートに来ているユーザーからの問い合わせ件数は月間平均の2倍を軽く超える状況になっているという。17年から18年にかけて取引していたユーザーが、市場に戻ってきたようだ。

「2017年から18年にかけて、活発に売買されていたお客様、もしくは長期塩漬けとしていたお客様が暗号資産市場に戻ってきていると思われます」。

大手取引所で続々とユーザー回帰

この動きは、Zaifに限ったものではない。国内の主要取引所でも同様の動きが出ている。

2017年当時に多くのユーザーを引き付けた取引所の1つ、コインチェックでも、11月25日に「ログインにお困りのお客様へ」というタイトルで、久しぶりにログインしようとしたユーザー向けのFAQを掲載した

コインチェックによれば、お客様窓口ではログイン方法に関する問い合わせが増加。Zaifと同じように久しぶりに利用とするユーザーが増えているようだ。

「当社のお客様窓口からいただくお問い合わせの約半数が『ログイン方法』に関するものであり、価格上昇により再度コインチェックを利用するというお客様が増加しているようです」

コインチェックでは今年11月の販売所の取引人数は、10月から2倍程度に増加した。それでも17年・18年から利用してたユーザーの割合も10月から11月にかけて増加した(約3%の増加)。それだけに、「長期にわたって利用のなかったユーザーが戻ってきていると言えそう」という。

国内の老舗取引所の1つであるbitbankでも、ユーザーからの問い合わせ件数が「通常の10倍以上になる日もあった」。「bitbank.ccを使用していなかった期間に機種変更やメールアドレスの変更・忘失があり、2段階認証や通常のログインができない等のお問合せが増えている」という。

国内大手取引所bitFlyerでは、サービスを活発に利用するユーザーが増加している。同社では月1回以上ログインするユーザーの割合を追跡しているが、11月はこのアクティブ率が前月比で1.2倍に増加した。

新たな投資家も引き付ける

利用者が帰ってきただけではない。新しいユーザーも仮想通貨の世界に入ってきている。

11月になってからは大手メディアでもビットコインの動向が紹介される機会も増えている中、「デジタルゴールド」としての新たな投資家からも注目を集めている可能性がある。

bitbankによれば、口座開設が完了した顧客数は、11月はじめから後半にかけて約4倍に増加したという(口座開設完了顧客数はKYC完了ベース)。

「11月の1週目(BTC相場140~150万円台)と比較して11月の4周目(BTC相場180~190万円台)の新規口座開設者数を1週間単位で比較すると、口座開設完了顧客数が約4倍に増加しました」

コインチェックでは、2020年8月にビットコインが120万円を超えて以降、口座開設数は比較的高い水準で推移したという。さらにBTCが200万円目前に迫った11月19~25日の週では、前週(12~18日)と比較し、「口座開設申請数が約2倍に増加」した。

「2020年11月の販売所における取引人数・取引金額は、2020年の最高値を記録しています」

仮想通貨全体での盛り上がり

11月にかけて過去最高値に接近したビットコインだが、その盛り上がりはほかのアルトコインも含めた仮想通貨全体に波及しているようだ。

bitFlyerでは、9~10月中旬までの週次口座開設件数を1.0とすると、11月19~25日の週は3倍近く伸びている。bitflyerによれば、これは昨年7月に新規口座開設の受付を再開して以来の盛り上がりだ。bitFlyerでは、次のように現在の盛り上がりをまとめている。

「これほどの新規獲得件数の盛り上がりは、当社では2019年7月に新規口座開設受付再開した以来であり、ビットコインはもちろんリップル(XRP)や他通貨含め暗号資産全体での盛り上がりを実感しております」

Zaifでも、新規口座申込数は、申込受付を再開した3月以降で「最大の申込件数となりそうな状況」だ。

「8月以降、symbolローンチに絡んでXEMが上昇した際、新規口座申込数は、新規口座申込を再開した3月から7月の平均件数に対して3倍強まで膨らみました。9月以降も2倍強の口座数が続いておりましたが、11月24日にeKYCを導入したことをきっかけに、再開後、最大の申し込み件数となりそうな状況です」

2017年の盛り上がり以来、2度目の仮想通貨ブームが来ようとしている。仮想通貨市場に参加する投資家のすそ野拡大となれば、新しいアセットクラスとしての仮想通貨のプレステージが確立されるかもしれない。