イングランド銀行は11日、ブロックチェーンのスタートアップ、チェーン社とともに概念実証(PoC)をリリースした。参加者のプライバシーを保持し、ネットワーク全体でデータを共有し、規制機関が全取引を監督できる分散型台帳技術(DLT)の構築についての検証結果を明らかにした。
DLTシステムにより、中央機関(中央銀行など)や規制機関、仮想資産の取引に関わる複数の参加者を包括する計画について検証している。
この計画では、中央機関は新たな資産を発行、回収し、参加者全員にアクセス許可を与える権限を持ち、規制機関はシステム内の全資産を監督する。規制機関以外は、自身に関わりのない取引の詳細を推測することはできない。
システムへの攻撃を試みる場合、資産の詳細や取引量などのデータを解読するために、各取引の秘密鍵を取得する必要がある。
この計画は、現時点では実用よりも学術的な側面が強い。現在の暗号化技術では、データを完全に分散化しながら参加者のプライバシーを保護することが「理論上は」可能だが、今後、暗号技術が突破されれば、システムへの遡及的な侵入が可能となり、攻撃に対して脆弱になる可能性があると懸念を表明している。
プライバシー、パフォーマンス、復元の間の「トレードオフ」への対応において、今回のPoCは、特権的にプライバシーを付与し、取引に直接関わる参加者間でのみデータが共有される他のスキームとは異なる。しかしそれでも、暗号化ソリューションは、スケーラビリティ、取引の処理速度、セキュリティリスクといった要素間で「理想的な」バランスを提供できる可能性があるが、さらなる検証が必要だと結論づけている。
イングランド銀行は、今回のPoCに先立ち、17年に初めて提唱したDLT対応型の即時グロス決済(RTGS)システムのPoC実施に向けた新計画を発表した。その際も慎重な姿勢を示し、DLT技術はまだ「次世代RTGSの中核を成すほど十分に成熟していない」が、今後RTGSの機能を拡張させ、DLTとの連携の実現に向けて優先的に取り組むと述べた。
SWIFT(国際銀行間通信協会)と34のグローバル取引銀行も先日、PoC結果を発表し、「産業レベルのガバナンスや安全性、データプライバシーの条件」を満たすためにDLT技術のさらなる開発が必要だ強調したが、全体的には前向きな口調で、銀行間のコミュニティに、DLTの機能でプラットフォームを補完するよう要請すると述べた。