2015年10月2日、欧州裁判所は、ビットコインを支払い方法の一つとして認め、為替取引においてVATによる課税を免除するという画期的な判決が下された。しかしながらその判決の意味するところを理解できている人は少ない。そこでコインテレグラフ社はビットコインに詳しい弁護士にコメントを求めることにした。我らがスペシャリスト、Stefano Capaccioli氏である。

Stefano Capaccioli.氏は、公認会計士、会計検査官、租税訴務官、税務顧問、ビジネスコンサルタントなどの肩書きを持ち、ゴールド、貴金属や、暗号通貨に関する法律税務の専門を務めるエキスパートである。司法審判裁判所の下したビットコインに対してのVAT免税の判決、C-264/14について、プロとしての意見を伺った。

 

ビットコインはVAT適用外であるという判決、C-264/14について

 

欧州裁判所は、理事会指令、112/2006/EC第135条において、特にd、e、fを解釈し、判決 C-264/14 VATを、ビットコインなど仮想通貨のVAT取扱いに対して下した。C-264/14の判決によって、ビットコインなどの暗号通貨は法定通貨でないにも関わらず、VATを免税することが宣言されたのだ。

この判決には、本格的なVAT指令 2006/112/EC の解釈と、28の全ての加盟国においての適用、ビットコインにおけるVAT管理を調和すること、そしてヨーロッパ連合における初の公式な法的文書であるという内容が含まれている。

この決定は、歴史的にみても重要である。VATの観点のもと、外貨に似たシンプルな支払い方法を考慮し、全ての疑いを明確にし、ビットコイン消費税の適用範囲に関する混乱を取り除いている。

ヨーロッパ連合加盟国の税務当局の中には、独自の判決を下した国もある。結果として、状況は異なった解釈によってきわめて複雑になった。特に以下の例がそうである。

 

スウェーデン: 予備判決 (ケース No. 7101-13) 税務当局によってビットコインは第135条、第1項、eにおいて他の通貨と同様に免除した。

 

イギリス: イギリス税務当局 (女王陛下の歳入税関)は、2014年3月3日に、歳入税関要約書 09/14 を発行し、ビットコインは他の流通証券と同様にVATを免除するとの声明を発表した。 (第135条、第2項、d)

 

エストニア: エストニア税務調査(税務税関管理)は、2014年3月にビットコイン課税を解釈し、VATの課税対象であると判決が下された。(また、裁判所からの支持もあった)

 

ポーランド: ポーランド税務当局の地方税ユニットは、ビットコインに対して様々な解釈をしているが、課税対象であると結論付けた。

 

ドイツ: ドイツ財務省はFrank Shaffler議員(2013年7月のNo. 409と、2013年9月No. 226) によって、ビットコインは”私有マネー”であり、免除されるべきではないと規定した。(裁判所にも支援されている)

 

ベルギー: (GTVA20141533 / TL / MP of 05/09/2014)に規定されたベルギー税務管理は、ビットコインは”仮想支払いシステム”で、VATの免税は”別の問題”

だとした。 (第135条、第1項、d)

 

フランス: フランス上院委員会は、排出量取引制度(カーボンクレジット)における繰り返し起こるVAT詐欺を避けるために、免除を支援することを示す報告書を発表した。

 

フィンランド: 中央税ボード (LKT) – 税務中央委員会 – は、仮想通貨の仲介によって得た手数料に対してのVATに対して制定を発行し、VAT指令下においては支払い方法として同様であるため、結果的にビットコインに対するVAT税免除を認めている。(第135条、第1項、d)

 

スペイン: 税総局 (DGT) – 財政国務長官は、2015年3月30日に、バインディングコンサルタントと共に、ビットコインは”交渉可能なその他”として、n. V1029-15に制定し、条項135.1.dに従いVAT免除とした。

 

法務官Kokott氏は、2015年7月16日に声明を発表し、その中で以下のように強調した。

 

「通貨は現在法定通貨として利用されているが―中略―支払うという行為以外に実用性がない。取引としての機能は、シンプルに経済における商品の取引を促進するということだ。しかしながらまた、商品としては消費されてはいないのに加え、そういった使い方はされていないのだ」

 

 したがって、VAT上の目的としては、財政中立性の原則に従い、平等な待遇を原則とし。法定通貨と同等の機能を持つ、純粋な支払いが行われる必要があるということである。

 裁判所はこの革新的な原則に追従し、さらにシカゴ第一国立銀行の原則が適応可能か考慮し、(判決 C-172/96).、取引上のVAT免除を、第135、1、eにおいて宣言した。そして欧州裁判所はこの文書を全く翻訳しなかった。

 判決によって、契約上も、自主的にも、支払い以外の他の目的がない場合は、決済方法と通貨の「法定通貨」の存在とは無関係との判断を下された。

 加盟国のVATに関する法律は、この解釈と該当項51の判決を考慮に入れる必要がある。

 

“従って、文脈から判断すれば、慣習的な通貨を含む規定を解釈するということは、その効果を部分的に奪う、という、第135条、1、eの狙いが読み取れる。”

 

 法定通貨に対しての可能なレファレンス、または伝統的な価値というのは、VAT指令に準拠してはならない。

 こういった判決というのは特に、暗号通貨をめぐるエコシステムや地政学的シナリオの上で大きなインパクトがあり、少なくともVATに関していえば安定して信頼のできる法的フレームワークを構築する最初の一歩である。

 ヨーロッパ連合内では、消費者は課税なしにビットコインで買い物をするようになり、他の目的で使われない限りは支払い方法として扱われるだろう。他の国では、既存のルールが存在するために、別のアプローチ―技術革新を抑制するためにリスクを冒しているようだ。(ノルウェーやシンガポール、オーストラリアではビットコインによる購入の際には間接税が課される)

 今回の判決は、ビットコインにレギュレーションは必要ないという実用的なデモンストレーションの意味がある一方で、ビットコインはどの法にも属さないという単純な既存の法律の解釈なのかもしれない。

 また、ビットコインのこういった立ち位置は、未来のテクノロジーの、例えばスマートコントラクト(交渉を促進、確認、強制し、契約のパフォーマンスを上げ、契約条項の必要性を未然に防ぐようなコンピュータープロトコル)のようなものや、ブロックチェーンベースのシステム、銀行や保険システム、そしてモノのインターネットの発展につながる大きなインパクトがあるはずだ。

 こういったプロトコルの多くが、ビットコインやその他の暗号通貨に似たアカウント、またはトークンのユニットを元に構成されている。今回の判決で、接続されたありとあらゆるIoTデバイスや、グッズやサービスに対する支払いに対して、アカウント単位でのVAT課税免除の動きへと繋がっていくだろう。多くの場合、製品やサービスなどは通常のVATの規定に則っている。こういったシナリオは、規制による障壁や境界線がよりもっと細くなってきているような、相互接続された世界では、どう翻訳していくか、にかかっている。しかしながら、ビットコインやその未来にとっては、EUがVATに対してとっている姿勢などを鑑みると素晴らしいことであり、少なくとも他の国々や地域もその可能性を探ってみるべきだろう。