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無断流用されたTUSD準備金に対して空前絶後の凍結命令が発効;
TRON創設者ジャスティン・サン氏の法廷闘争により、国境を越えた法的包囲網は新たな局面へ
本年4月、TrueUSD(TUSD)準備金の組織的な横領発覚は、業界に激震を走らせた。直後、香港、ドバイ、ケイマン諸島をはじめとする複数管轄区で規制当局が動き、越境捜査が続いていた。ここにきて、ついに本件、特大横領事件に、司法上のブレイクスルーが訪れた。
10月17日、ドバイ国際金融センター裁判所(DIFC Courts)は Aria Commodities DMCCに対し、4億5,600万ドル相当のTUSD準備金を対象とした 無期限の世界同時全資産凍結命令を発効した。
11月27日、一般公衆からの懸念を払拭し業界の透明性を高めるため、香港で「真実は姿を現し、正義は勝つ──TUSD準備金再構築とARIA・FDTに対する国際訴訟の最新状況」と題するメディア向け説明会が開催された。本会にはジャスティン・サン氏が出席し、次のように語った。
「DIFC Courtsおよびデジタル経済裁判所の公正かつ断固たる判決に、心より感謝を申し上げる。目下、行方不明の資金を世界中で追跡しており、準備金全額の回収と原状回復を目指している」
さらに同氏はこう強調した。
「仮想通貨業界は今も進化を続けている。今回の事件により、伝統的な金融仲介業者に対するより厳格な規制監督と、信頼が最重要視される分野での透明性確保の必要性が浮き彫りとなった。TUSD救済は、ひとつのステーブルコインを救うだけにとどまらない。一般公衆の利益を守り、ブロックチェーンへの信頼と健全性を守るための戦いなのだ」
4月3日、ジャスティン・サン氏は、香港信託会社First Digital Trust(FDT)とその関連会社Legacy Trust およびAriaグループによる、4億5,600万ドル相当のTUSD準備金横領の事実を明らかにした。公表後、同氏は個人資産から約5億ドルを投じてTechteryxに救済資金を提供し、TUSD保有者の利益を保護した。
11月13日、サン氏はSNS上で DIFC Courtsの判決をシェアし、TUSD保有者の権利を保護するために、同裁判所として初となる世界同時全資産凍結命令を発効した裁判所に感謝の意を表した。同ポストで同氏はこう宣言した。
「正義の実現は遅れても、決して否定はされないのだ」
10月17日の判決で、DIFC Courtsは所有権差止命令を確定させ、Aria Commodities DMCCおよび4億5,600万ドル相当のTUSD準備金を元手とした全マネーロンダリング収益に対して、世界同時全資産凍結命令を発令した。Aria Commodities DMCC(Aria DMCC)は、ACFFの実質的支配者である英国籍のマシュー・ブリテイン(Matthew Brittain)氏の配偶者が100%所有するドバイの私企業である。
横領スキームの実態:
カストディの隙をつき、越境詐欺の裏ネットワークを構築
2020年末、TechteryxがTUSD事業を買収した際、移行期間中の運営継続を目的として、従来のカリフォルニア拠点運営者TrueCoinに準備金管理と銀行調整業務に委託した。
2021~2022年、TrueCoinは、香港の信託会社FDTとLegacy Trustの経営陣メンバーらと共謀。前述のマシュー・ブリテイン氏と組んで、不正なネットワークを構築した。
関係者は共謀して必要書類を偽造し、無許可で資金を移動。銀行には虚偽の証憑を複数回にわたり提出した。これにより、規制下にあるはずのカストディネットワークから 合計4億5,600万ドルのTUSD法定準備金を組織的に抜き取り、マシュー・ブリテン氏の妻が100%所有するドバイの私企業Aria Commodities DMCCの銀行口座に送金した。無論、Aria DMCCは、Techteryxが認めた投資先ではない。
公開情報によれば、FDTのCEO兼取締役であるビンセント・チョク(Vincent Chok)氏はこれらの送金に承認を与えただけでなく、私的口座への誘導を積極的に指示し、秘密裏に多額のキックバックを受け取っていたという。FDTとAriaグループおよび共犯者は偽の申込書類を作成し、正式な投資を装って資金横領の事実を隠蔽した。
2024年、米証券取引委員会(SEC)はTrueCoinが長期間にわたり、準備金の安全性につき、投資家を欺く行為を行っていたと告発。同社の重要リスク開示義務違反と、経営陣に巣食う組織的詐欺行為を明らかにした。
法廷闘争のマイルストーン:
DIFC裁判決で資産凍結・回収が本格化
捜査の進展に伴い、Techteryxは 2023年から複数地域で訴訟を提起。越境証拠の収集と数回の公聴会を経て、10月17日に重大な法的マイルストーンを迎えた。
DIFC Courtsは「審理すべき重大な争点が存在する」と認定。①資金が私企業の流動性支援に不正利用されたか、②承認書類が偽造されたか、③保管機関が準備金を不正に管理したか、④関連機関は共犯だったか──といった論点の存在を認めた。
裁判所は、証拠力の強さと不正行為の重大性を鑑み、Aria DMCCに対し無期限の世界同時全資産凍結命令を発令。資金の移転・処分・隠匿ほか、いかなる不正の試みも禁じた。
本命令が有効となった現在、凍結に違反して資金を動かそうとする者は、誰であれ、裁判所侮辱罪に問われる。厳罰は免れない。
本件はまもなく正念場を迎える。法的措置が複数法域をまたいで強化され、資産の不正な運用先が新たに特定されれば、関与者に対する法的措置は一層具体的になるだろう。
この事件は、ひとつのステーブルコインに限った話ではない。投資家保護はもちろん、ステーブルコインのグローバルなガバナンス、カストディの信頼性、越境金融犯罪に対する規制という、より広範な課題に直結している。デジタル金融が劇的な変貌を続けるなか、本訴訟は業界全体の透明性の基準を定めるうえで、きわめて重要な判例となる公算が大だ。