「アカウント抽象化(account abstraction)」が10億人をイーサリアム(ETH)に引き込むきっかけとなり得ると捉えられている一方で、同プラットフォームの共同創設者であるビタリク・ブテリン氏は、この新機能の実装についての課題を共有した。
ブテリン氏は、7月18日にパリで開催されたイーサリアムコミュニティカンファレンス(EthCC)で、アカウント抽象化がもたらすイノベーションと、コミュニティがこの概念に直面している現在の難題について語った。

現時点では、イーサリアムユーザーがERC-20トークンを送金する際、ネットワーク内での取引手数料を支払うためにETHを保有する必要がある。ブテリン氏によると、「ペイマスター」と呼ばれるアカウント抽象化の拡張機能により、ユーザーは送金している「どのコインでも」手数料を支払うことができるようになる。この拡張機能により、分散型アプリケーション(DApps)がユーザーの取引をスポンサードすることも可能になる。
さらにブテリン氏は、「シグネチャー・アグリゲーション」という別の拡張機能についても語った。ブテリン氏によると、この機能を使ってシグネチャーをまとめることで、開発者はガス代とデータの費用を節約できるという。彼は次のように説明した。
「ロールアップでは、取引のサイズの大部分がシグネチャーであるため、これは特に重要だ」
アカウント抽象化がユーザーにとって潜在的な利点をもたらす一方で、ブテリン氏は開発者がまだ乗り越えるべき課題があることも認識している。これには、現行のイーサリアム外部所有アカウント(通常のユーザーアカウント)をスマートコントラクトにアップグレードするためのイーサリアム改善提案(EIP)の必要性、およびレイヤー2ソリューションで同様のプロトコルが機能することを保証することだ。
またブテリン氏は、既存の技術との統合、たとえばバイオメトリクスや既存のウォレットとの統合における追加の課題も強調した。
アカウント抽象化の取り組みが直面した障害にもかかわらず、ブテリン氏はその進行について興奮を表現した。「アカウント抽象化は大いに進展しており、今後も我々が続けて進めることに期待感を抱いている」と述べた。