オンラインショッピングの勃興に押され、小売店舗が苦境に立たされていると言われる。実際、米国では昨年約9000軒の店舗が暖簾を下した。「トイザらス」を含む多くの小売業者が破産申請を行ったが、その数は「大恐慌」の時よりも多いという。

 そんな中、特定の店舗やブランドが他よりも成功するのはなぜだろうか。多くの小売業者はカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を理解しておらず、テクノロジーの取り込みにも失敗した。顧客はそうした店舗からは手ぶらで店を出る。

 これまで小売業者が商品を販売してきた方法やマーケティングはもはや通用しなくなっている。購買者のものの考え方が変わってしまったのだ。小売業という業種は「ものを売る」ビジネスから、顧客との密接な関係を築くビジネスへと様変わりしたのだ。

 今年、小売業での成功はこういった市場の変化と顧客ニーズにいかに対応できるかで決まる。

 そこで役に立つのがブロックチェーン技術で、それはブランドと消費者とを結びつける可能性を秘めている。例えばブロックチェーンで新たなリワードシステムを構築し、サプライチェーンを透明化することができる。

消費者が真に求めているのは何か

 顧客はもはやブランドに忠誠心を持ったりしない。広告にも無関心だ。ショッピングで店をぶらつくなどといった時間も単純に取れなくなっている。

 そして顧客はオンラインへと移行しているが、商品の良し悪しや選択したサイズが合うか合わないかについては常にギャンブルを強いられている。

 答えはオムニチャンネルにあるかもしれない。顧客に対するマーケティング、販売、接客サービスを多元的に行い、統合的なカスタマーエクスペリエンスを生み出す手法だ。

 例えば英ファッション小売店「オアシス」では、ウェブサイト、アプリ、店舗内の販売店員の全てを通じて顧客エンゲージメントを行っている。店舗の販売員はiPadを駆使し、正確かつ最新の製品情報をその場で顧客に伝える。

 オーストラリアに本拠を置くテクノロジー企業である「Shping(シュピン)」はこのアイデアをさらに一歩進め、顧客が購入したい製品の情報にリアルタイムでアクセスできる、実用的なエコシステムを作り上げた。

 Shpingアプリを使いバーコードをスキャンすることで、顧客はその商品の調達元を知ることができる。場合によっては原材料まで追跡できる。製品が受けた認証、栄養やアレルゲンに関する情報、製品のリコール状況などを知ることができる。また、楽しい動画に加え、他のShpingユーザーが共有したレビューにもアクセスできる。Shpingに加入しているブランドについては、Shpingアプリを使って製品が本物であるか判定できるようになっている。顧客は偽物を掴まされる危険を避けられ、問題がある製品を買わずに済む。Shpingが直近にエバーレッジャーと提携したおかげで、Shpingアプリはもうすぐダイヤモンドや他の高価値資産の鑑定にも使えるようになる。

 さらに、店舗を訪れた顧客にエンゲージメントや忠誠心への謝礼(リワード)として仮想通貨を提供することも可能だ。この仮想通貨はShpingコイン(ティッカーシンボル: SHPING)と呼ばれており、トークンプレセールスを通じてちょうど配布が始まったところだ。

仮想通貨はどのように人々の購買習慣を変えるか

 Shpingのゲナディ・ヴォルチェクCEOは「Shpingはひとつの総合的なソリューションを提供する。人々の関心が長続きしない市場でブランドと顧客を繋ぎ、消費者がより賢明で安全な購買の意志決定ができるようにする。また、広告に予算を振り向けるのではなく、顧客へのリワードとして仮想通貨を提供することができる」と語る。

 Shpingは世界最大の製品データベースを構築中だ。情報源は多岐にわたる。「オーストラリア認定オーガニックス」といった認定団体、製品リコールポータル、ニュージーランドの「アシュアクオリティ」といった政府機関が提供しているデータに加え、加入ブランドや小売業者のデータも活用している。

 ShpingはまたGS1の各国国内組織とも提携している。GS1はビジネス情報システムやバーコードの国際規格を開発・保守する組織だ。GS1オーストラリア、マルタ、アゼルバイジャン、シンガポール、ロシアの各国内組織がShpingを製品トレーサビリティの技術パートナーに選んだ。

 ヴォルチェクCEOによると、Shpingのグローバルデータベースには3000万種類以上の製品が登録されている。その数は日々増え続けており、創設者らはこれがブロックチェーンに基づく新たな小売システムの基盤になれば良いと考えているという。

 

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