金でも銀でも天然ダイヤモンドでもない ブロックチェーンと相性抜群の「唯一無二のダイヤモンド」

 今月ニューヨークで行われた「ビットコイン・ディベート」でビットコイン懐疑論者である株ブローカーのピーター・シフ氏は、次のように言い放った

 「もしトークンが金に裏付けされたら、それは成功できる唯一のトークンになるだろう」

 同氏は、ビットコイン(BTC)と金を比較して、ビットコインは根拠のない「自信」以外に何も裏付けがないが、金は長年にわたって信用されてきたではないかとその理由を説明した。

 しかし、トークンを裏付ける上で金より良いものがあるかもしれない。「宝石の王様」ダイヤモンドだ。ただ、ダイヤモンドと言っても天然のダイヤモンドではない。注目すべきは、研究室で作られる「ラボグロウンダイヤモンド」だ。

 「株はなぜ買うかというと事業に裏付けられているからですよね?ただトークンは裏付けられているものがない。確かに機能に裏付けられたトークンはあるかもしれない。しかしなぜ交換したくなるかというと、価値があるから交換する。機能があるから交換したいわけではない。使う必要がない場合もあるでしょう」

 こう語ったのはピュア・ダイヤモンドラボ株式会社の代表取締役である安部秀之氏だ。トークンの価値を裏付ける上で一番効果的なのは、金でも銀でもなく、また天然のダイヤモンドでもなく、ラボ(研究室で)グロウン(育つ)ダイヤモンドだと主張。その理由は、ブロックチェーンの追跡能力(トレーサビリティー)が最も発揮されるからだ。


 日本ではまだ聞きなれないが、実は米国などでは徐々に普及してきているラボグロウンダイヤモンド。天然のダイヤモンドは、地中深くのマントルの中心で炭素が自然に結晶化することで生まれるが、ラボグロウンダイヤモンドは、その過程を短縮したモノだ。言い換えれば、成長過程しか違いはない。だから物理的、化学的に天然ダイヤモンドと全く同じなのだ。しかも天然ダイヤモンドの中で純粋なモノは2%と言われているが、ラボグロウンダイヤモンドはその2%の部分に特化しているのだ。さらに天然では非常に希少な種類のカラーダイヤモンドや、天然では存在しないカラーダイヤモンドの生産も可能だという。

 「宝石の世界的な鑑定機関であるGIA(米国宝石学会)も、ラボグロウンダイヤモンドの鑑定書を出している)

 ラボグロウンダイヤモンドの市場は急速に拡大していて、モルガンスタンレーは、ラボグロウンダイヤモンドが従来の天然ダイヤモンドの市場に食い込むという報告書を発表。また世界有数のダイヤモンド商社であるデビアスなどもラボグロウンダイヤモンドの取り扱いに着手すると表明した。

 安部氏が注目するのは、ラボグロウンダイヤモンドそれ自体の凄さだけではない。ブロックチェーンとの化学反応だ。『ピュアダイヤモンドブロックチェーン』という特許も出願済みだ。安部氏は、金や銀、天然ダイヤモンドと比較してその優位性について次のように説明する。

 まず、ダイヤモンドは世界中の誰もが認める宝石であるということが挙げられる。無理に宣伝をしなくてもダイヤモンドの次にプラチナ、その次に金という序列が作られているのは周知の通りだ。

 また、金や銀と違ってダイヤモンドは溶かして形を変えることができない。これは、ブロックチェーンの追跡能力を活かす上で重要な要素だ。ラボグロウンダイヤモンドは、ブロックチェーン上で生年月日、出生地、鑑定データやカットデータなどの情報を追跡することが可能。どれ一つとして同じダイヤモンドはなく、それぞれの唯一無二の存在なのだ。だからこそブロックチェーンとの相性が良いわけだ。コロコロと形が変わっていては話にならない。

 一方、天然ダイヤモンドとブロックチェーンの相性はどうだろうか?安部氏は、もちろん天然ダイヤモンドにまつわるデータをブロックチェーンで追跡することは可能だが、実は天然の場合、肝心の生年月日の記録を取るのが極めて困難だという。

「掘られた日と誕生日は違う…」

 さらに天然ダイヤモンドは、鉱山から消費者の手に届くまでに様々な業者を経由し、原産地を特定する事はほぼ不可能という。

 このように誕生日や出生地が異なる唯一無二の存在であり、それがブロックチェーン上に記録できるからこそ、ラボグロウンダイヤモンドには付加価値が宿る。これは、金や銀、天然ダイヤモンドでは成し遂げられない特徴なのだという。

 「婚約とか結婚の時以外、普通はダイヤモンドを欲しいと思わない。あなたはダイヤモンドをうちに帰ってから、可愛いねと眺めますか?ただ、ダイヤモンドの誕生日や生まれた場所などの情報が分かったとしただろうか?もし世界のどんな人に触れてここに到達したのか、そのプロセスを全部知ることができたらどうだろうか?」

 安部氏は、消費者が食べ物の味だけでなくて産地と農家を気にする流れと同様の状況がダイヤモンド業界にも起きているという。一方、天然のダイヤモンドに対しては、環境破壊や子供の過労問題などから一部で不買運動が起きていて、逆風が吹いているのだ。

 さらに安部氏は、ラボグロウンダイヤモンドのブロックチェーン上のデータとして、生年月日などの情報の他に金融や恋愛運など占いデータまで入れることまで考えている。ますます唯一無二の存在にするというわけだ。

 こうして出来た「ラボグロウンダイヤモンド」に裏付けられたトークンの発行ができれば、既存のダイヤモンド市場ともトークン市場とも全く異なる市場が生まれるのではないかと安部氏は話す。ブロックチェーン上で価値を透明化できることに加えて、既存のトークン市場と違って価格が安定することも見込んでいる。

 「例えば地震や豪雨など天災が起きた時、パソコンや通帳は持って出る暇はないが、自分の指輪についているダイヤモンドをそのままつけて外に出ることができる。それがブロックチェーンに裏付けられたラボグロウンダイヤモンドだったら、資産の裏付けとして使える」

 最終的に安部氏は、ラボグロウンダイヤモンドに裏付けられたトークンを使って新たな決済市場の構築も目指している。

 安部氏とラボグロウンダイヤモンドの出会いは、ほんの数ヶ月前だった。それ以来、そもそもダイヤモンドを作れるってどういうことなのか?自問自答をしてきた。現状の裏付けのないトークンは「裸足で歩いているようなもの」。しかし、ダイヤモンドはトークンが履く「下駄」になりうるかもしれない。しかも電気を使って無から有を生み出す研究室での過程はマイニングそのものだ。ただこっちはトークンが実際に生まれるとあって、まるで「ブロックチェーンの現実版」ではないかと考えるようになったという。

 ピュア・ダイヤモンドラボ社がラボグロウンダイヤモンドでブロックチェーン業界に新たな風を送れるのか、今後も注目だ。