近頃、米調査会社のファインダーによって行われた調査が、米国民における仮想通貨の所有、関心、性別分布の統計を明らかにしようと試みた。
同調査は、米国民の92%が仮想通貨を購入したことはなく、そのうちわずか8%しか将来仮想通貨への投資を計画していない、ということを明らかにした。しかし、調べてみると、ファインダーの調査が米国の仮想通貨に関する人口統計データを最も正確に表しているものではない、ということがわかる。数値を見てみよう。
ファインダーが明らかにしたこと
何人の米国人が仮想通貨を所有しているか、購入した通貨の銘柄、その通貨を選んだ理由、仮想通貨保有者の性別ごとの割合、各世代の比率、仮想通貨を買わない理由。ファインダーはこれらの質問を取り上げ、仮想通貨所有者の5.15パーセントがビットコインを所有していると報告した。
出典:ファインダー
そして、女性の29.99%、男性の23.63%が仮想通貨は複雑すぎて理解できないと考えているという。
出典:ファインダー
見落とされていること
しかし、このデータは米国民を正確には代表していない。ファインダーは、米国の成人のわずか2001人しか調査していない。米国勢調査局によると、これは米国の成人人口の0.0011%に相当する。さらに、ファインダーは重み付け手法を用いていなかった。したがって、調査された2001人は、アメリカの人口を正確に表したものではない。
統計を伴う分析は通常、抽出された人口の大きさではなく、人口全体の大きさと等しくするために、データに重み付けをする。そうすることで、データは単に抽出された人口の動態を表すのではなく、人口全体の動態を表すものになる。
もしファインダーが米国勢調査局のアメリカン・コミュニティ・サーベイ(国勢調査)における年齢、人種、性別、教育、地理的な人口統計データに合わせて、データに重み付けをしていたら、米国における仮想通貨の所有と仮想通貨に対する世論をより正確に表したものになっていただろう。
他の最近の調査
グローバル・ブロックチェーン・ビジネスとサーベイ・モンキーが今年1月に実施した合同調査は、上記の重み付け手法を使用し、誤差±2%で米国民の仮想通貨の保有と世論についての統計を作成した。
米国の成人5761人に調査を行い、5%が仮想通貨を保有し、全体の21%がポートフォリオに仮想通貨を加えることを検討しており、仮想通貨保有者の58%が34才未満の白人男性ということがわかった。学生ローンを提供するレンドエデュ(LENDEDU)が実施した17年の調査は、米経済において仮想通貨が果たしている役割を明らかにするために実施された。しかし、レンドエデュのデータには重み付けがなされているか言及がないため、データが米国民の仮想通貨保有を正確に表していると期待することはできない。
しかし、レンドエデュの調査の統計をいくつか吟味し、ファインダーの調査データに異議を唱えることが可能だ。ファインダーの調査では2001人が調査されたのに対し、レンドエデュの調査では1000人が調査された、ということは言及しておく。レンドエデュが調査した1000人から明らかにしたことは、以下の通りだ。
- 13.99%がビットコインを所有している
- 17.18%が将来仮想通貨への投資を計画している
出典:レンドエデュ
出典:レンドエデュ
ミレニアル世代とX世代
ファインダーの調査結果とレンドエデュの調査結果の類似点は、仮想通貨に投資している最大の層はミレニアル世代であり、次にX世代(1960年代半ばから1970年代生まれ)が続くということだ。ファインダーの調査では、仮想通貨を購入した人の内訳は以下だ。
- ミレニアル世代の17.21%
- X世代の8.7%
出典:ファインダー
レンドエデュの調査では、ビットコインを保有しているか、過去に保有していたことがあるのは以下の通り。
- ミレニアル世代の38.64%
- X世代の32.54%が
出典:レンドエデュ
ファインダーの調査とレンドエデュの調査の統計データにおけるもう1つの類似点は、女性より男性の方が仮想通貨を所有している、ということだった。
ファインダーの調査では、仮想通貨を保有しているのは以下の通りだった。
- 男性の11.86%、
- 女性の4.27%
レンドエデュの調査で、ビットコインを保有していたのは以下の通りだった。
- 男性の21.82%
- 女性の8.98%
模範的な調査に期待
今後、仮想通貨市場が規模と人気を拡大するのにしたがい、仮想通貨の保有や将来の投資に関する世代別の世論について調査や研究が増えると期待できる。しかし現時点においては、仮想通貨の保有と人口動態についての有益な統計を提供してくれるデータが不足している。
16年にボストン連邦準備銀行のスコット・シュー氏とマサチューセッツ工科大学スローン経営大学院のオズ・サイ氏が行った「米国消費者によるビットコイン及び他の仮想通貨の採用と使用」と題された未完の研究では、「米国消費者の約1パーセント以下がこれまでに仮想通貨を保有(採用)したことがある」と報告された。
この調査報告書にあるデータは「消費者の支払い手段に関する調査」からのものだ。2000人の米国消費者を対象に、現金を含む決済手段の使用と銀行や他の支払口座の採用について調べた。
しかし、これは約2年前のものであり、17年後半までは仮想通貨はそこまで人気を得ていなかった。もし調査者が人口動態を考慮せず、結果を重み付けしないで調査を続けるならば、調査は仮想通貨やその保有に対する世論ついて不正確な統計を生み出すことになり、世界中の経済や家庭において仮想通貨が果たす役割について、不正確に理解されることになる。
調査で仮想通貨保有者の最小人数と最大人数を推定するのは難しい。米国における仮想通貨のウォレットアドレスの総数を示すデータがあったとしても、プライベート鍵を忘れたり、資金を保管していたハードウェアを紛失または破損したり、ウォレットを登録したが、一度も資金を預け入れたことがなかったり、複数のウォレットアドレスを持っていたりする人が非常にたくさんいるのだ。
抽出された人口がアメリカの人口動態を反映していれば、規模が変えられた時でも調査結果は比較的正確になる。例えば、米国勢調査局によると人口の76.9パーセントが白人、13.3パーセントが黒人、10パーセントがその他であり、抽出規模100人の調査が米国におけるデータを正確に表したい場合には、約77人の白人と13人の黒人、10人の白人でも黒人でもない人に質問するべきなのだ。
米国の人口動態に合わせて重み付けをした調査によって、調査の中で得られた回答は米国における異なる民族、性別、人種の層から得られるはずの回答を反映したものになり、その調査は米国民の世論をより正確に表すことになる。