2月6日、世界長者番付で知られる米経済誌フォーブスが初めて、仮想通貨長者番付を発表した。

 フォーブス編集者のランドール・レーン氏によると、こうしたリストを発表した目的は「(時代の)転換期の記録を提供することにある。麻薬取引に使われる通貨というもともとの始まりから仮想通貨を引き離し、成長段階にある正規の資産として仮想通貨を評価するために必要な透明性確保の一端を担う」。

 通常の長者番付の作成に比べて、仮想通貨長者の実際の資産を正確に査定するのはより複雑な作業だ。

 伝統的な金融制度の外で生まれた、暗号化された決済システムである仮想通貨は分権的だとされる。フォーブスのジェフ・カウフリン記者は「新しく生まれた仮想通貨長者は、病的な秘密主義とこれ見よがしな誇示の混じった奇妙な状況で生きている」と説明する。

 フォーブスの仮想通貨長者番付は「理想主義者」「構築者」「オポチュニスト(日和見主義者)」「インフラ・プレイヤー」「伝統的富裕層の投資家」の5つの部門に分かれており、ランクインするには少なくとも3億5千万ドル(約383億円)の資産が必要だ。

 固定的な数字の代わりに、番付に掲載された人物の純資産は幅で示されている。

 仮想通貨の推定保有量、仮想通貨資産取引の税引後利益、仮想通貨関連ビジネスへの投資を元にして査定が行われた。

 それでもリストに入れ逃してしまった人物がいるかもしれないこと、さらに資産の査定が的外れである可能性があることをフォーブスは認めている。

 今回の番付には19人が名を連ねた。フォーブスのウェブサイトに、それぞれの略歴と仮想通貨の推定純資産が紹介されている。

 仮想通貨長者と米長者番付「フォーブス400」にランクインした富豪との平均年齢の比較データ(42才対67才)や、2018年1月のビットコイン、イーサリアム、リップルそれぞれの平均価格変動をアップル、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の株価と金の価格の変動と比較したデータなども同時に公表された。

 番付を作成する際に、レーン氏はブロックチェーンを扱うコンセンシス社の設立者であるジョー・ルービン氏に、こうしたデータを公表することについて、仮想通貨長者たちがどう思うか相談したという。

 レーン氏が「仮想通貨界の政治家」と評するルービン氏は、自分たちは注目を集めることを望んでいないと答えた。

 さらに、フォーブスが正確な数字を導き出すことができるか疑問視し、リストにランクインした人たちを盗難の危険に晒す可能性があることも指摘した。しかし、レーン氏によれば、ルービン氏や彼の「仮想通貨エリート」たちはリストの意義も認めた。

 フォーブスは「世界をより良い場所にするために、姿が見えない富裕層に光を当てる必要があると信じている。違法薬物取引サイトのシルクロードやマウントゴックスのハッキング事件の日々から仮想通貨が進化してきたように、このような大規模な富が影に潜んでいることを許してはいけない」とカウフリン記者は文章にしている。

 今回フォーブスが発表した仮想通貨長者番付の一部は次の通りだ。

  1. クリス・ラーセン(リップル共同創設者、54才):75~80億ドル
  2. ジョセフ・ルービン(イーサリアム共同創始者及びコンセンシス創業者、53才):10~50億ドル
  3. 「CZ」こと趙長鵬(バイナンスCEO、41才):11~20億ドル
  4. ウィンクルボス兄弟(ウィンクルボスキャピタル創設者、36才):9~11億ドル
  5. マチュー・メロン(投資家、54才):9~10億ドル
  6. ブライアン・アームストロング(コインベースCEO、35才):9~10億ドル
  7. マチュー・ロザック(Bloq共同創始者、タリーキャピタル創設者、45才):9~10億ドル
  8. アンソニー・ディオリオ(イーサリアム共同創始者、JaxxおよびDecentral創業者、43才):7.5~10億ドル
  9. ブロック・ピアース(ビットコイン基金会長、ブロックワン顧問、37才):7~10億ドル
  10. マイケル・ノヴォグラッツ(ギャラクシーデジタルCEO、53才):7~10億ドル

 

 また、トップ10からは外れたが以下の面々もランクインしている。

  • ヴィタリック・ブテリン(イーサリアムを生んだ開発者、24才):4~5億ドル
  • ブラッド・ガーリングハウス(リップルCEO、47才):4~5億ドル
  • バリー・シルバート(デジタルカレンシーグループCEO、41才):4~5億ドル
  • ソン・チーヒュン(韓国仮想通貨取引所アップビット創業者、38才):3.5~5億ドル

 ちなみに仮想通貨に関するニュースを伝えるメールマガジン クリプトウィークリーも同様に、仮想通貨世界で最も影響力のある100人というリストを発表している。クリプトウィークのリストは純資産だけでなく、仮想通貨世界への研究や技術による貢献も考慮している。

 仮想通貨ライトコインの創設者チャーリー・リー氏やビットコイン投資家ロジャー・バー氏、仮想通貨のパイオニアであるニック・スザボ氏などは、フォーブスの仮想通貨長者番付にはランクインしていないが、クリプトウィークリーのリストには含まれている。