エストニアのイー・レジデンシー(電子居住)プログラムがBITNATIONと協力し、ブロックチェーンテクノロジーを利用した新しいパブリックノータリーサービスをローンチした。これにより申請した人はブロックチェーンの管轄内で電子居住者として認証される。

世界的ブロックチェーンメディアであるコインテレグラフは、今回このプロジェクトの肝となる部分を調査した。

該当の発表によると、2015年12月1日にイー・レジデンシープログラムとBITNATIONによるパブリックノータリーのサービスがスタートし、実際の居住地や、どこで仕事をしているかに関わらず、エストニアの”電子居住者”として婚姻届や出生認証書、ビジネス契約などブロックチェーン上で受理可能になるという。

“私たちは今この瞬間に立ち会うことができてとてもうれしく思っています。国際マーケットにおいて、国民国家や、仮想国家などが互いに協力し、より素晴らしいガバナンス・サービスを提供することが可能となったのです” と、イー・レジデンシープログラムのディレクターを勤め、Bitnation社エストニア支部とも提携しているKaspar Korjus氏は言う。

 

その独特なプロジェクトとブロックチェーンとの出会い

BITNATIONは既にDIY型のガバナンス・サービスと市民IDを提供していて、ブロックチェーン上で婚姻届、土地の所有権や、出生認証書などを受理することが可能となっている。また、難民救急プログラムも運営しており、現在のヨーロッパにおける難民危機に対しても、国民として登録されていない個人をブロックチェーン上で登録するなどの役目を果たしている。BITNATIONの創設者である、Susanne Tarkowski Tempelhof氏はブロックチェーンを利用したパブリックノータリーシステムのローンチについてコインテレグラフにこう語った―

 

“エストニアは、イー・レジデンシーを提供することで、世界中の人々が’電子的市民権’を得ることを可能としています。例えば、企業の取り込みのような、エストニアの一部のサービスにアクセスすることができるなど、私たちは数多くのサービスを物理的にエストニアに居住していない電子居住者たちに提供しています”

 

 

2014年12月1日、エストニア政府のバックアップを得て、イー・レジデンシーが正式にローンチされ、世界中の人々がイー・レジデンシープログラムを申請することで、エストニア警察と国境警備局によって発行されたスマートIDカードを用いて承認済みのオンライン身分証明書を取得することが可能となった。IDカードには、オープンソースの暗号化された公開鍵と秘密鍵が使用されており、 ”政府機関は、市民の個人情報と結びついたオンライン上で様々なセキュアな機能を運用することが可能になる。”

 

Kaspar Korjus氏はこうコメントしている―

“デジタル証明のみを使用するということは、ある人物Xになりたいと申請した人が実際にある人物Xになることが可能だということです。そしてそれはEUのどこへいても合法的に可能になります。イー・レジデンシーは、どのサービスプロバイダーであってもそのデジタル証明を使い、電子居住者たちによるログインを可能にするプラットフォームです。これにより、人々はなりたい人間になることができ、居たい場所に居ることが可能になります”

法的効力

オフィシャルプレスリリースによると、ユーザーには以下のような留意すべき点がまだ残っているという―

“BITNATIONのパブリックノータリーは、’ブロックチェーン上’のみにおいて有効です。例えばカップルがパブリックノータリー上で結婚したとしても、それはエストニアや他の国の管轄ではありません”

“しかしながら、BITNATIONの提供するパブリックノータリーは、法廷でも証拠として提出する等、契約上の合意を示すものですからブロックチェーン上の契約として法的拘束力のあるものとして扱うことができるはずです。それにテクノロジーというものはブロックチェーンに比べれば全くもって不安定なものですし、eメールや口約束などに比べればとても優れています” と、Susanne Tarkowski Tempelhof氏は言う。

コインテレグラフは次にテクノロジー分野を専門に扱う弁護士、Adam Vaziri氏にその法的効力について伺ったが、彼いわく、電子居住者になったとしても、エストニア国内における如何なる市民権も得られないという―

 

“イー・レジデンシープログラムは、エストニア政府によって提供される身分証明輸出サービスです。はっきりさせておかなければならないのは、Bitnationによって認証された契約は、婚姻を扱う民間機関によるものではない、ということです。もちろんローカルな手続きとしては承認されるでしょうが、あくまで個人間の私的な契約ですし、電子IDを持った個人間による内約であり、デジタル署名によって承認された、一ビットコインによるサービスにすぎません。(i.e. ブロックチェーン上で実行される契約のハッシュ値を追加するということです)”

 

“コモン・ローによる法域契約書は、紙面上の記載がない形式の場合でも法的拘束力はあるはずです。シンプルに、オファーがあり、受理され、検討される一連の流れが必要です(イギリスの例)” とAdam氏は語る。

 

“出店でりんごを買った場合、書面は必要ありませんが、法的拘束力はあります。つまり、ローカルな法律であっても、適用される’余地’はあり、そうあるべきだということです (完璧ではありませんが、以下にそのリストを上げます)”

  1. 書面上の手続きであれば法的拘束力はある  (イギリスでは書面以外での契約では土地を売ることはできません)また、
  2. 公証人が同席して、署名された場合 (ローマ法の管轄区域では、例えば、株式の譲渡が必要ですし、公証人が同席の上、契約を交わす瞬間を目視することで、法的拘束力が生まれます)

次の問題は、書面での契約に法的拘束力はあっても、それが電子的なフォーマットで行われた場合、これが電子署名の認識方法に依存するのかどうか(国によってバリエーションが異なります)、そして特定の契約が、上記に示したような方法で受理される’余地’があるのかどうかです。”

 

氏はさらにこう続けた―

“上記のように、契約が受理される’余地’がないのだとすると、電子IDや電子署名、Bitnationによるバリデーションサービス (ハッシュサービス)の利用によって、契約の存在が’不変’のものとなり、契約の内容は決定的なものとなりますし、ほぼ名実共に実行されることになるでしょう”