ドナルド・トランプ米大統領は13日、コインベース主催の「State of Crypto Summit」に向けた事前収録のビデオメッセージを公開し、仮想通貨政策の推進を継続する意向を示した。米議会では現在、ステーブルコインの規制やデジタル資産市場の枠組み構築に関する法案の審議が進んでいる。
トランプ氏が仮想通貨関連のカンファレンスに向けて発言するのは、大統領就任後2度目。ビデオでは「われわれの取り組みはまだ終わっていない」と述べ、ビットコイン(BTC)の国家準備金創設に向けた大統領令、デジタル資産の作業部会設置、ポール・アトキンス氏の米証券取引委員会(SEC)委員長指名など、自身の政権が進めてきた仮想通貨政策を挙げた。
「私の政権は、ドルに裏付けられたステーブルコインの創設を支援するGENIUS法案の成立に向けて議会と連携している。また、アメリカが仮想通貨とビットコインの未来をリードできるよう、明確かつシンプルな市場ルールの整備にも取り組む」
トランプ氏の発言は、米上院が決済用ステーブルコインを規制するGENIUS法案の本会議採決に向けて動く中で行われた。同法案は前日の手続き投票で可決に必要な賛成多数を得ており、今後の採決が見込まれている。
また下院では、SECと商品先物取引委員会(CFTC)の権限を明確化するデジタル資産市場法案「CLARITY法」の審議が進んでおり、今週火曜には委員会を通過し、本会議採決への道が開かれた。
トランプ氏の仮想通貨利害関係が争点に
一方で、議会内の一部民主党議員は、トランプ氏の仮想通貨業界との関係が規制に影響を与える可能性を懸念し、そうした点に対応する条項が盛り込まれなければ法案に反対する意向を示している。
トランプ氏の家族が支援する仮想通貨プラットフォーム「ワールド・リバティ・ファイナンシャル」は、独自のステーブルコインを発行しており、政権にいる間に個人的な利益を得る可能性があるとして、利益相反の懸念も浮上している。
コインベースのイベントでの発言は、トランプ氏が大統領就任後に仮想通貨業界に直接言及した2度目の事例となる。3月にはニューヨークで開かれた「Digital Asset Summit」にもビデオ出演しており、大統領選キャンペーンの一環としてナッシュビルの「ビットコイン2024」カンファレンスには直接登壇している。
今回のメッセージは、トランプ政権が先週下院で通過させた歳出法案を巡って批判を受ける中で公開された。同政権は今週末、ワシントンD.C.で推定4,500万ドルをかけた軍事パレードを予定しており、また抗議活動への対応として4,000人の州兵をロサンゼルスに派遣すると発表している。
さらに、トランプ氏とテスラCEOのイーロン・マスク氏との間で歳出法案とスペースXの政府契約を巡る対立がオンライン上で激化し、市場にも影響を与えた。