米下院金融サービス委員会(HFSC)の筆頭民主党議員マキシン・ウォーターズ氏は5月6日、暗号資産に関する合同公聴会の場で、ドナルド・トランプ大統領の暗号資産への関与を「腐敗」と断じ、民主党議員らを率いて途中退席した。
この合同公聴会はHFSCと下院農業委員会によって開催されたもの。ウォーターズ氏は共和党幹部に対し起立したまま発言し、「トランプ大統領が暗号資産を保有しつつ、政府機関の監督権限を持っていることは利益相反であり、進行を阻止する」と表明した。デジタル資産小委員会のブライアン・スタイル委員長(共和党)は、委員会規則の抜け穴を利用し、審議を「公聴会」ではなく「円卓会議(ラウンドテーブル)」として継続すると宣言した。
一方、HFSCの委員長であるフレンチ・ヒル氏(共和党)は、暗号資産に関する恒久的な法整備の必要性を訴えつつも、トランプ氏と暗号資産業界の関係に対する民主党側の懸念には直接言及しなかった。ヒル氏は、ウォーターズ氏が議論を政党対立の場にしていると批判した。
この抗議行動は、ウォーターズ氏が5月5日に発表していた戦略の一環であり、トランプ氏の暗号資産事業への関与に対する責任追及を目的とするものだった。
トランプ氏は2024年の大統領選と就任後、ミームコインの発行や、トークン上位保有者向けの非公開ディナー招待、家族の暗号資産企業「World Liberty Financial」との関係などを理由に批判を受けている。
対立する法案:暗号資産規制と政府関係者の保有禁止
共和党主導の「円卓会議」では、5月5日に提案されたばかりの暗号資産市場構造法案について審議が続けられた。一方、民主党は「影の公聴会」において、政府高官による暗号資産の保有を禁じる法案の草案を公表。対象は大統領、副大統領、連邦議会議員およびその近親者であり、暗号資産の保有や発行主体への参画、暗号資産による報酬受領を禁止する内容となっている。
この草案の発表により、市場構造法案の成立プロセスは停滞、あるいは頓挫する可能性がある。上院でも、民主党の一部議員がトランプ氏とその家族の「腐敗」を理由にステーブルコイン法案から支持を撤回している。
一部の共和党議員もトランプ氏と暗号資産業界との関係を懸念しており、ヒル氏は今年3月、「トランプ家の関与は暗号資産立法を複雑化させる」と発言したと報じられている。また、シンシア・ルミス上院議員やリサ・マコウスキー上院議員も、トランプ氏のミームコイン・ディナーに批判的な姿勢を示している。