ゴールドマン・サックスの元トレーダーで、Coinbaseの共同設立者であるフレッド・エサン氏が、イーサリアムにおけるいくつかのスケーリング問題と、イーサリアム・ネットワークをスケールするためのオフチェーンでのスケーリングソリューションについて言及している。

エサン氏によれば、現在、イーサリアムの開発者が取り組む、スケーリングソリューションが主に7つ存在し、2018年後半までにそれら全てのローンチが予定されているという。ビットコインのプルーフ・オブ・ワークのコンセンサスプロトコルからのプルーフ・オブ・ステークによるコンセンサスへの移行は、イーサリアム共同設立者であるヴィタリク・ブテリン氏によってこれまで明らかにされてきた中で最も大きな変更点だ。

 

Ethereum-Scaling_Cointelegraph

 

100倍の機能向上

 

イーサリアム・ネットワークは、DappsとDAOが動作するための効率性の高いエコシステムを提供するためにそのフレキシビリティに優先順位を付けるが、エサン氏は、イーサリアムのプロトコルにおいて、100万人から1,000万人が利用するような大規模なDappsをサポートするためには、2018年までに100倍の機能向上が求められると語る。

さらに言えば、Facebookは秒間17万5,000件以上ものアプリケーション実行リクエストをネットワーク上で処理している。エサン氏は、例えば仮にオンチェーンでFacebookを動作させようとするのであれば、2万5,000倍の機能改善がイーサリアム・ネットワークには必要だと話し、大規模なDapps運営のためにはスケーリング問題の解決が必要だと語った。

 

全ての分散型アプリ(Dapps)がオンチェーンで動作するわけではない

 

イーサリアムはビットコインのような分散型ブロックチェーン・ネットワーク上に動作しており、その仕様上、Facebookのような中央集権的なネットワークと比べるとスケーリングがかなり難しい。安全に効率的且つ、比例的にイーサリアムを動作させるためには、上記に上げられているような7つのスケーリング・ソリューションのデプロイは必須だ。

エサン氏は、PoSを含む7つのスケーリング・ソリューションの実装を成功させられれば、何十億人規模のユーザーを捌くことが出来るシステムへと近づけることが出来ると語る。

しかしながら、それでも全ての分散型アプリをオンチェーンで動作させることは非現実的であり、非効率的であると同氏は語る。

ビットコイン開発者たちが、Lightningのような小さなトランザクションを捌き、マイクロペイメントによるトランザクション詰まりを防ぐためのレイヤー2によるソリューションを模索しているように、大規模なアプリはオンチェーンだけでは動作が難しいとエサン氏は語った。

 

エサン氏曰く―

 

「これらはハードコンピューターサイエンスであり、ゲーム理論に基づく問題です。その大半はこれまでに解決を見ていません。問題の完全な解決からはほど遠く、難しい問題です。大規模なアプリはオンチェーンだけでは動作が難しいですし、今後もそれが実現することはないでしょう。そのためにはオフチェーンによるスケーリングソリューションが必要です。複数のスケーリングソリューションを組み合わせて正確な成果を測るのはトリッキーな方法ですが、私達は、2018年末までに100倍の性能向上を見込んでいます。100万から1,000万人分のユーザーアプリが動作可能になるでしょう」

 

6月19日、ブロックチェーン開発の先駆者、ニック・サボー氏が、ビットコイン・ネットワークも同じくオンチェーンだけでは全てのトランザクションを捌き切れないだろうと語っていった。ブロックチェーンにおけるトランザクションの混雑問題を避け、より効率的にスケーリングを図るためにも、ビットコイン・ブロックチェーン上で安定して動作するオンチェーン以外の周辺金融ネットワークが必要になるかもしれない。

 

スケーリングソリューションを開発する人達

 

イーサリアムには、オンチェーン、オフチェーンを問わず、活動的にソリューション開発に関わる開発コミュニティがある。しかしながら、必要なスケーリングソリューションの実装開発を行う開発者の数が限定的であることにエサン氏は懸念を隠せないようだ。

「これらのプロジェクトにはとても少ない人々しか関わっていません―多くの場合、開発に関わっているのは5人以下です。現在開発に関わっているのは非常に才能に溢れている人達ですから、彼らに文句を言う人はいませんが」と、エサン氏は語った。