ビットコインと仮想通貨のコミュニティは毎年「ビットコイン・ピザの日」を祝っている。仮想通貨にとって重要な、しかし、こっけいでもある、画期的事件を記念する日だ。
8年前、1人の利用者がピザ2枚の支払いをビットコインで行った。この出来事は史上初めて仮想通貨が商品の支払いに使用された事例と見なされている。
この出来事はオンラインのBitcointalk.orgフォーラムで不朽の名誉を与えられている。同フォーラムでは、ラズロ・ハニエツという名のプログラマーがアメリカのパパ・ジョンズ・ピザのピザ2枚を1万ビットコインで購入した事実を確認している。
ハニエツは最初、フォーラムの利用者に1万BTCでピザ2枚を配達してくれるよう求めた。多数の利用者がオンラインでハニエツのためにピザを購入するという申し出を行った。最終的に、ジェルコスというニックネームをもつティーンエイジャーのジェレミー・スターディバントがビットコインを受け取り、パパ・ジョンズのピザ2枚をハニエツに送り届けた。
2010年5月22日に、ハニエツはこの風変わりな目標を達成したことを発表した。
スレッドの他の利用者が指摘するように、当時1ビットコインの価値は約0.0041ドルで、ハニエツの1万BTCはわずか41ドルだったことになる。ビットコインピザ1枚の当初の価値20.5ドルは現在0.0025BTCに過ぎず、この8年間で仮想通貨の価値がどれだけ増大したかの驚くべき例示になっている。
現在ビットコインでピザを購入できるか?
13年に設立されたPizzaForCoinsのようなサービスでは、さまざまな仮想通貨での支払いを受け入れ、顧客の代わりにオンラインで注文を行う。eGifterもビットコインで購入できるギフトカードを顧客に提供しており、利用者はそのギフトカードを使って、ドミノ・ピザやパパ・ジョンズでピザをオンラインで注文できる。
ハニエツの最初の購入が残してくれた遺産が長く続く効果をもたらしたのは明らかだ。アメリカ中のレストランも支払い方法としてビットコインを受け入れている。Bitcoin Restaurantsというウェブサイトでは、ビットコインで勘定書を決済できるレストラン83店のデータベースが提供されている。
アルゼンチンのブエノスアイレスにあるサブウェイの店舗もビットコインを受け入れているという報道もなされている。
そう、大きな取引だ
表面的には、ビットコイン・ピザの日は仮想通貨コミュニティが祝う愉快で奇抜な日のように見える。しかし、この運命的な取引の影響が仮想通貨の世界を永遠に形づくった。
よく知られた仮想通貨ハードウェアウォレット製造業者のLedgerまでが、Ledger Nano Sの記念限定版を発売した。ハニエツは同社に祝辞を与えつつ、良質な保管の重要性をビットコイン利用者に訴えた。
「8年前、私にとってビットコインは楽しい趣味のプロジェクトにすぎなかった。私がピザ2枚に1万BTCを支払った時点では、ビットコインが最終的にこれほど人気が高まるとは思ってもいなかった。今では毎日、現実世界の取引でビットコインが使用されている」
繰り返しになるが、ハニエツのピザ購入は史上初となる現実世界の商品のビットコイン取引と認められており、世界中の利用者による仮想通貨使用の道を切り開くことになった。
今日、1日平均19万8878件のビットコイン取引が行われている。
ライトニング・ピザ
ハニエツは今も積極的に仮想通貨コミュニティに関与しており、18年2月には見出しを飾ることになった。今回はライトニングネットワークを利用してピザ2枚を購入し、自身による初めてのビットコイン取引を再体験した。
このプログラマーは、ロンドンの友人とペイメントチャネルを開いた方法を説明している。その後、友人は自分で地元の店に支払いをして、配達の下請けを依頼した。
ハニエツが説明するように、この新領域への最新の進出は、ビットコインネットワークにおける取引時間や費用の低減を目指す新たなテクノロジーを探求するものだ。
「それで、オンチェーン取引以外でこれを行う方法はあるか? 私がここで書いてきたことに関しては、おそらく存在しない。目標はただc-lightningをもてあそんで、2、3サトシを往ったり来たりさせる以上のことを行うことだ。おそらく最終的にはピザ店が自身のライトニングノードをもつことになり、そのときには直接チャネルを開くことができる」
ハニエツの声明は、「私はビットコインでピザの支払いをしたと言い」たかっただけの、10年の実験を思い出させるものだ。
この当初の好奇心によって、ビットコインがトラストレスの分散型手法で取引を行うための画期的な方法となる道が切り開かれた。18年のライトニングピザ取引がセカンドレイヤーペイメントプロトコルの分水嶺の瞬間となるかどうかは、時間だけがその回答を与えてくれるだろう。