今週、アダム・バック氏とブルース・フェントン氏が、20ドル―ひょっとする100ドルにまでビットコイン手数料が上昇するかもしれないと、昨今のビットコイン手数料増加について議論を行っていた。一時のことだとして忘れることは簡単だが、殆どの人がそのつぶやきを驚きをもって読んだことだろう。

デジタル・ゴールドとして、未来の鍵となるビットコインが持つその不変性や、ビットコイン・ネットワークの安全性に対して意義を唱える者は誰もいない一方で、増え続ける取引手数料は、個人、企業を問わず、早期採用者にとっての状況を一変させつつある、

2017年の第1四半期だけで、取引手数料は155%増加している。

Blockchain.infoのチャートを見れば一目瞭然だ。

 

Bitcoin Increasing Fees: What Does It Mean For Startups?

 

そして昨今、突如として、バック氏とフェントン氏が語った数字が現実味を帯びてきている。

こうした手数料に関する問題は、最大限のセキュリティや、トラストレスなストレージや取引などを求める全ての個人と企業にとって、そのほんの一部でしかないが、草の根的にビットコインを広めてきたビットコイナーの中には、ほぼ手数料がゼロだった時代を懐かしむ者も少なくないだろう。

2014年6月10日、当時、私はベルリンのファーベルハフト・バーの外で腰掛けていた。ビットコインでビールが買えるなんて何て素晴らしいことだろうとツイッターに投稿したところ、フィラデルフィアに住む男が私のつぶやきに気づき、もう一杯分の0.0006 BTCを送ってくれたという出来事があった。

当時の低い手数料は、こうした自発的な楽しみを可能にしてくれており、同時に、バーにいる暗号通貨を知らない人達にも銀行を通さずに簡単で迅速に世界中に送金が行えるこんな素晴らしい方法があるのだと紹介することが出来た。

そう、私は気づいてしまったのだ。今やビットコイン・ネットワークは、コーヒーやビールを買うためのものではないし、2セントのチップをソーシャルメディア上に送ったりするものでもなく、代わりに英国銀行の口座を使いフィアットでやり取りをしたところで大損するということはなくなったのだということを。しかし、手数料がもっと低かった当時にビットコイン決済を取り扱っていたスタートアップなどはどうなるのだろうか?

 

私は二人の起業家に、手数料の素早い変遷とそれが及ぼした影響について伺った。

 

Quid Smart Vendor共同設立者のシェリル・カー氏は、特に、国際決済における銀行の取る高い手数料という文脈で言えば、ビットコインの現在の高い手数料は特に問題ではなかったと語る。

「多くの提携店が国際的に世界中でビジネスを行っています―そのために通貨コンバータを弊社のレジに統合したのです」とカー氏は語る。

「つまり、繰り返しになりますが、外貨を受け入れたことによる取引コストと、外貨の換金を行うコストは、現在の”高くなった”と言われているビットコインの取引手数料と比べても未だに高いものなのです。―とすれば、ビットコインを受け入れることは未だ強みになります。Cambioの換金レートなど、未だに17%近くの高い手数料がかかるところがあります」

 

また、カー氏は、ビットコインを使うことに抵抗がある消費者が多い点を指摘する―

 

「残念なことに、弊社のクライアントでビットコインを利用される方は少ないです―魅力を本当に感じていないのでしょう。提携店も我々が知っている限りではビットコイン決済を導入していません。しかし、多くの場合、それは消費者が使わないことに原因があります。そうでしょう?消費者が使うのであれば、喜んでビットコインを導入しないお店などなあるはずがないのですから!これは店側に問題があるというよりは、消費者側の問題であると私は考えています」

 

対照的に、ビットコインによる少額決済業務を専門としているスタートアップは、おそらくアンフェアな影響を受けているはずだ。

smoogs.ioでCEOを務めるネハ・ムラーカ氏は、デジタルコンテンツのクリエイターに対して少額決済サービスを提供している。

「現在のビットコイン手数料の高騰は、劇的に我々のビジネスモデルに影響を与えています」とムラーカ氏は語る。

「ビットコイン関連の製品を保有する多くの企業が、一考に値する試練に直面しており、特にビットコインのみを顧客からの支払い形態として採用している企業は、その影響が顕著です。多くの場合、本質的に、クレジットカードやデビットカードでの決済を導入するよりは安く済んでいました。この影響は、弊社のような少額の支払いを扱うスタートアップにとってはより深刻になっています」

しかし、ムラーカ氏は、カー氏のように問題は取引のコストによるものだけではないと強調する―

 

「我々はビットコインは単に取引コストを下げるためだけのものではないことを肝に銘じるべきですし、そうすることで初めてさらなるビットコインの興味深い利用方法を見つけることが出来、イノベーティブなソリューションを創り出し続けることが出来るのです」

 

ライトニング・ネットワークのようなイノベーションは、最終的には暗号通貨による少額決済サービスを提供している企業に一つのソリューションをもたらす可能性がある一方で、そうしためまぐるしい勢いで成長を続けるプラットフォーム上にビジネスモデルを構築することは、流砂の上に家を建てるようなものであることを否定する者は少ないはずだ。

1つだけ確かなことがある―それは、ビットコインを導入し、高い手数料がかかるようなエコシステムの中にあっても、ビットコインで明確な利益が出せると考えるほどの粘り強さがある企業であれば、今のこうした最も厳しい環境の中にあっても息抜く力があることを、いずれは証明してくれるだろうということだ。