2014年に破綻した、当時世界最大の仮想通貨(暗号資産)取引所Mt.Gox(マウントゴックス)管財人の約15万BTC分のビットコイン(BTC)が10月15日に動く可能性があるとの憶測が広がっている。しかし、多くの要因からそうした可能性は低いかもしれない。

マウントゴックスは2014年にビットコイン市場最大のハッキングを受けて85万BTCを失った。既報の通り、マウントゴックスに残るのは13万7892BTC、16万2106BCH(ビットコインキャッシュ)などの仮想通貨、そして管財人の小林信明氏が換金した約690億円だ。

しかし、返金がされるには多くのハードルがある。2019年以降、返金手続きは遅れが常態化しており、返金の見通しは立っていない。

マウントゴックス

(出典:Mt.Gox.com「管財人の声明」)

なぜ急に憶測が出ているのか

6月30日、マウントゴックスの管財人が公式サイトで声明を発表した。債権者への分配を担当する管財人は、東京地裁が10月15日までの期限延長を認めたと明らかにした。声明には次のように書かれている。

「この状況を受けて、再生管財人は東京地方裁判所に対し再生計画案の提出期間の伸長を申し立て、令和2年6月30日、同裁判所により、再生計画案の提出期限を令和2年10月15日に変更する旨の決定がなされました。」

一部の投資家はこの文書から、15万BTCの動きを起こし、市場に大きな影響が出るとの指摘が出ている。

しかし管財人が短期的にビットコインを動かせない2つの大きな理由がある。

一つが今回の延長は再生計画の提出に関するものであり、ビットコインの払い戻しのものではないことだ。10月15日という期限は管財人が再生計画を提出するためのもので、投資家への返金というものではない。

二つ目は、管財人は過去1年間、継続的に延長を要求している。過去には2020年3月と2019年4月にも同様の声明が出され、期限の延長が認められた。

こうしたことから15万BTCが短期的に市場に影響を与えるとは考えにくいだろう。

BTCは回復力を保持

この1週間ほどでビットコインは複数のネガティブなイベントに直面し、大きな売り圧力を受けた。

10月1日には米CFTCが100倍レバレッジで有名な仮想通貨取引所ビットメックスを告発し、ビットコインは一気に5%下落した。さらにその24時間後にはトランプ大統領が新型コロナウイルスで陽性反応が出たことを明らかにし、ビットコインを含むほとんどすべてのアセットクラスが影響を受けた。

こうした出来事が続いたが、ビットコインは驚くべき回復力を見せている。ビットコインは10500ドルを超えており、これは8月以降に重要なサポートエリアとして機能している水準だ。

中長期的に、オンチェーンアナリストのウィリー・ウー氏はビットコイン市場の見通しは依然としてポジティブと述べている。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン