新型コロナウィルス(COVID-19)の流行以前から、世界の人々の健康状態は悪化している。1975年以来、肥満のレベルは3倍以上になり、不安や鬱の割合は急激に増えている。このままでは、2030年までに精神疾患により、世界経済は16兆ドルもの損失を被ることになるとWHOは予測する。

確かに、私たちの健康状態は深刻な状態にある。そしてこれにCOVIDの流行が加わり、この問題はさらに悪化の一途を辿る傾向にある。ウイルスが長期的な健康に与える直接的な影響以外に、家に閉じこもり、自己隔離を続けることは、人々のメンタルヘルスに重大な影響をもたらすことになる。外に出ず、自宅待機を強いられる人々のCOVIDによる社会的・感情的混乱による心理的ダメージは一世代にわたって続く可能性があると専門家は述べる。

ウォーキングの復活

しかし、明るい兆しはある。スポーツジムの閉鎖や、ソーシャルディスタンス実践のガイドラインの施行を受けて、人々は運動不足解消や外出の手段として、外で歩いたり走ったりするようになった。

世界中で、歩くことの楽しさが再認識されている。Stravaの報告によると、2021年にウォーキングで記録された距離は6億6800万マイルを超えて同プラットフォームの記録を達成。また、Go Jauntly、Nike Run Club、MapMyWalkなどのウォーキング/ランニングアプリは近年で2桁の成長を遂げている。ウォーキングはトレンドにさえなっており、毎日4マイルほど外を歩くことを奨励するTikTokの#hotgirlwalkハッシュタグは、TikTok上で8000万回以上閲覧されている。
 
これらは公衆衛生にとっては良いニュースである。血行促進、血糖値の低下、免疫力の強化、睡眠の質の向上など、ウォーキングには非常に大きな健康効果があることが研究により明らかになっている。実際、週に2.5時間、つまり1日21分のウォーキングで、心臓病のリスクを30%減らせることがわかっている。また、精神的な不調を感じている人は、近所を散歩することで、ストレスや不安が軽減され、疲れにくくなり、さらに認知機能が向上し、創造性が高まると言われている。
 
高級なフィットネススタジオや高価なホームジム機器とは異なり、ウォーキングは無料で、健常な人々の多くが実践できることが一番の利点である。特に運動初心者の方にとっては、近所を散歩することは、より現実的で達成感があるのではないだろうか。
 
人々が健康で幸せであることがもたらす潜在的なメリットは、都市政府も認識するところだ。世界で最も歩きやすい都市のひとつであるコペンハーゲンにならい、パリからポートランドの間にある都市では、15-minute city(15分の街歩き-車よりも歩行者を優先し、住民が15分以内に必要な場所にほぼ歩いて行けるように構成された地域)というコンセプトを導入し始めている。

運動の未来を再考するSTEPN

それでも歩かない人はいる。ウォーキングは無料で誰にでもできるにもかかわらず、アメリカ人の80%以上が十分な運動をしていない。高い意識を持っていても、デジタル時代には、メールやテレビに夢中になることが多く、ウォーキングの代わりに、家の中で画面を見続けてしまう。

Apple WatchのようなウェアラブルからPelotonのようなコネクテッドトレーニング機器まで、新感覚のフィットネステックの産業が急成長しているにもかかわらず、一日に十分な運動量を確保できていないのが現状である。ではこの問題をどのように解決すればよいのだろうか?

Move-to-earn(移動して稼ぐ)という考え方

玄関から出ることさえ面倒だと思う人は多くいる。Nike Run ClubやStravaは、運動したことを証明し、モチベーションを高めてくれるアプリケーションだが、さらに一歩進み、運動することに「お金を払う」というこれまでにないスタートアップが登場した。

その例のひとつが、運動した分だけ報酬を得ることができるWeb3スタートアップ「STEPN」である。ユーザーは、NFTスニーカーを購入し、屋外で歩いたり、走ったり、ジョギングしたりすることでトークンを獲得することができる。そして、獲得したトークンを外部アカウントにスワップしたり、エコシステムに再投資して、獲得能力をアップグレードしたりすることができる。
 2021年12月のサービス開始以来、2022年1月にはわずか1日1,500人だったアクティブユーザーが、3月中旬には10万人を超え、爆発的な成長を遂げている。STEPNは、1日に数百ドルの収入を得ることができるという健全なインセンティブに惹かれた熱狂的なファンを獲得、フィットネスコミュニティを構築している。 

最も期待されるのは、多くのユーザーがフィットネスによる体の変化を経験することである。このプロジェクトのDiscordには、「10年間走っていなかったが、STEPNのインターフェースの中毒性のおかげで、実際に毎日のランニング習慣が身についた」という声があふれている。

実際、フィットネスにインセンティブを与えるというセグメント全体が勢いを増している。例えば、10億ドル規模のウェアラブル企業、WHOOPは、質の高い睡眠を取った従業員に実際に報酬を支払っている。政府でも同様に、シンガポールが2020年にApple Watchと提携し、健康を維持する国民に報酬を与えている。

次の動きは?

STEPNは、この波に乗り、何百万人もの人々の健康増進と日々の運動習慣の確立を後押しする強固なプラットフォームの構築に取り組む。このプラットフォームは、膨大な数の人々に影響を与える可能性を持ち、また、Web3の世界にランナーという市場を紹介するものである。
 現在、STEPNはすでに何千人もの生活習慣の改善、例えば近所を散歩するといった簡単な生活習慣の変化に役立っている。将来的には、STEPNは大学と提携し、科学的な裏付けのある調査・研究によってユーザーの健康増進をさらに強化することを計画している。
 これらはまだ始まりに過ぎない。世界の健康が懸念される中、STEPNはパズルの重要なピースとなり、ウォーキング人口を一人ずつ増やし、世界中のコレクティブ・ウェルビーイングの向上に貢献することが期待される。今後の動向に注目したい。