より新鮮な野菜や果物がお店に並ぶように

サプライチェーンの非効率性は、ブロックチェーンによる自動化プロセスによってスピードアップさせることができるようになるだろう。

農業ビジネスや小売業者は特定の製品の需要を測定し、それに応じて供給を調整できるため、食品が無駄になる可能性も低くなる。これによって、空きができた土地にほかの作物を栽培するということもできようになり、食品の無駄を省ける。

ブロックチェーンによる食品廃棄物の削減や、スマートコントラクトがもたらす農家への公平な支払い(これで廃業に陥らずにすむだろう)、こういったメリットは世界的な食糧需要の高まりに対応し、食料安全保障や貧困、そして(食品不足で発生する)政治の混乱といった問題を解決するのにつながるはずだ。

 

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価格が安くなれば、農家が儲からないのでは?

むしろ、スマートコントラクトを導入すれば、支払い遅延といった問題を発生させることなく、公平な支払いを保証することになるだろう。そして小規模な農業生産者は、自身の農産物を売るためのより大きなマーケットを手に入れることになるはずだ。

ブロックチェーンによるエンパワーメントは、小規模な農家を、価格受容者(Price taker)から価格設定者(Price maker)へとシフトさせる可能性がある。

ブロックチェーンはまた、高級ブランドがほかの製品との差別化を可能にし、オーガニックやフリーレンジ(放し飼い)の製品がより価値あるものであることを正当化できる。これは製品の生産地を簡単に追跡できるため、消費者が安心して高級ブランドの付加価値を知ることができるからだ。

農業セクターはまた、卸売業者から提示された金額を、ライバル(ほかの業者)に支払われた金額と比べることができるようにもなる。こうなれば、すべての農家が自分たちにふさわしい稼ぐ機会を得ることができ、自身の生産物の価値を判断するのがより簡単になる。

食品の価格はどうなる?スーパーに並ぶ食品は高くならない?

ブロックチェーン導入は、紙ベースのプロセスを排除し、コストを削減できると考えられている。このコスト削減分は、あなたがお店で買うことになる最終製品にも反映されるだろう。

仲介者を排除することは取引手数料の削減にもつながる。そして、非中央集権化は、小規模な農業生産者が、大企業と競争するのをより容易にもしてくれる。

例えば、PavoCoinのようなブロックチェーンのプロジェクトが登場している。これは小規模な農家への金融サービスの提供、スマートコントラクトによる農産物の事前販売、収穫の質と量の改善、消費者への農産物データの提供といったものを目的としている。カリフォルニア州のストックトンとディクソンの農業生産者が、実際にこのシステムの利用を開始している。また、ほかの場所での展開も計画しているという。

農業を最適化することで、あらゆる規模の農家がより高い収穫量、より質の高い作物を作るために必要な情報や資源を手に入れることができる。これにより、平均的な消費者に提供される商品の価格が下がり、商品へのアクセスが容易になるだろう。より高い収穫量はまた、農業エコシステムにより多くの資金を呼び込み、農作物の入手可能性を高めることにつながる。

ブロックチェーンが導入されている事例は?

ハイテク技術を使い、生産性を高める「スマート農業」は活発な市場となっている。この市場は2020年までに最大267.6億ドル(約2.8兆円)の規模になると予測されている。

既にブロックチェーンを導入している農業生産者は、ブロックチェーン技術を「インターネットのようなゲームチェンジャーだ」と称賛している。例えば、ある食肉加工企業によれば、いつ豚が工場に到着したのかといった一見些細な情報が、消費者に届ける最終製品に大きな影響を与える可能性があるという。消費者が口にする豚肉が、厳格な衛生基準を満たしているのかどうか。ブロックチェーンは消費者がその情報を確信するための「安全保証書」になるという。もし生産工程で何かしらの問題が発生したとしても、30秒以内にその問題を特定できるようになるという。

インド南部のケララ州の政府は、食品が確実に配送されたかを確認するために、食品供給プロセスにブロックチェーンを導入する計画をたてている。食品の配送をより効率的にできるようになると期待されている。また自然災害など予期しない状況によって、作物の収穫に影響が与えるときは、農業生産者に迅速な補償を行う「農業保険」を提供するのにもブロックチェーンを活用する。

ブロックチェーンで、果物や野菜の認証もより正確にすることもできる。しかも生産・流通プロセスをさかのぼって確認する作業の大幅な効率化にもつながる。従来は、野菜や果物が出荷されるたびに、その農産品の生産地を示す紙の証明書が添付され、その品質が保証され、安全なことが証明される。しかし、ベルギーでは、こういった証明書の一部をデジタル化しようとしており、そこにブロックチェーン技術を使おうというのだ。

食品の安全への不安。ブロックチェーンが貢献できることは?

食品の安全については、世界中で問題が発生している。

2018年、米アリゾナ州で栽培されたレタスを原因とする大腸菌による食中毒事件が発生した。この食中毒は米国の35州で発生し、約200人が感染し、5人が死亡する惨事となった。

2013年には、欧州で馬肉を巡る問題が発生している。これは牛肉として売られていた肉が、実は馬肉だったというものだ。しかも欧州の大手スーパーでも、それが販売されていた。スーパー側は商品を卸した業者を非難したが、非難された業者はさらに別の業者を非難。この騒動は食品への信頼性にショックを与え、肉の不買運動にまでつながった。

ブロックチェーンは、食品の安全性や偽装防止に大きな役割を果たす可能性がある。これは、商品の流通プロセス全体を識別しやすくなるからだ。業者側が情報を照会するスピードも短縮されるのはもちろん、消費者サイドも商品の情報を簡単に知ることができるようになる。

その食べ物がどこから来たのかが追跡できる

農場から食卓まで(from Farm to Fork)。いくつかの企業は、消費者が農産品の流通を可視化できるサービスを開始している。しかし、そういったサービスは売り手である小売業者の信頼性に依存するものである。

新鮮な野菜や果物、生鮮食品を買うためにスーパーに行ったとき、それがどの国のものであるかどうかを確認する方法は、パッケージを見るのが一般的だ。スーパーマーケットの中には、農産物の生産者を写真入りで紹介しているものもあるだろう。

しかし消費者にとって、生産・流通プロセスを段階的にたどっていくことは難しいことがほとんどだ。そして時には生産者や小売業者でさえ、その食品がどのようなプロセスで流通しているのかを確信できないこともある。

これが、食品の安全について懸念が広まっている理由の1つだ。生産・加工・流通プロセスのどこで問題が発生したのかを追跡することは難しく、時として不可能なケースもある。しかし、ブロックチェーンを食品のサプライチェーンに統合することができれば、どこで問題があったのかを即座に検知できるようになる可能性があるのだ。