アルゴリズム取引とは?
アルゴリズム取引は、生身の人間が行うトレードの弱点を克服する目的で誕生した。必要最低限の設定さえ行えば、あとは科学的な確率論に基づいたトレードを、24時間365日コンピュータが自動的に行ってくれる。
コンピュータは、人間のトレーダーが持たない多くの利点を持っている。第一に、睡眠を一切必要とせず、24時間チャートに張り付いて取引チャンスをうかがってくれる。また、状況を数値ベースで的確に判断し、ミリ秒単位の遅れもなく、即座にトレードを完結してくれる。さらに、感情を持たないコンピュータは、意思決定に際して髪の毛一本ほどの迷いも生じない。このため、多くの投資家は、ロボットに正しい戦略を教えてトレードをさせれば、極めて優れたトレーダーになることに気づいた。
アルゴリズム取引は、長年進歩を続けてきた。かつては原始的なコンピュータ取引にすぎなかったが、デジタル資産と土日も取引可能な取引所の登場は、アルゴリズム取引をまったく新しい次元へと引き上げた。自動トレードと仮想通貨は、まるでお互いのために生まれてきたかのようだ。たしかに、ユーザーは自分で戦略を立てる必要がある。しかし、戦略を数学的に導き、ロボットに正しく命令さえすれば、あとは放ったらかしで利益をあげることができるのだ。
アルゴリズム取引の基本コンセプトは?
アルゴリズム取引の基本コンセプトは、ソフトウェアの利用によりトレンドをいち早く見つけ、生身の人間よりも速くそれに飛び乗ることだ。一般的な手法ととして、モメンタム、平均回帰、アービトラージ、機械学習等がある。
アルゴリズム取引のほとんどは、統計学的な確率論に基づいて市場からチャンスを見つけ出す戦略をとっている。モメンタムの手法では、現在のトレンドに追随しようとする。平均回帰では、過度の乖離を見つけ出す。アービトラージは、異なる取引所間の価格差を発見する。機械学習は、複雑なルールを自動化したり、複数のコンセプトを1つに統合しようとするものだ。だが、これらのボットに頼り切りで利益を得られるというものではない。トレーダーは、「いつ」「どこで」「どの」アルゴリズムを使うのが効果的か、それぞれの『ボット』の特質を理解する必要がある。
一般に、ボットは、過去の市場データを用いて有効性の検証が行われる。これをバックテストと呼ぶ。バックテストによりユーザーは、過去の値動きから導出された確率論的な法則を利用して、実際の市場で自動的なトレードを行うことができる。注意しなければならないのは、「オーバーフィッティング」(過剰最適化)の問題である。極端な例として、強気市場のヒストリカルデータに対して最高の収益を上げられるように調整されたボットを使って、弱気市場で運用を行う場合である。当然ながら、期待していたリターンは得られないだろう。
モメンタム取引とは?
モメンタム取引とは、いま優位なトレンドが市場に現れているなら、そのトレンドが終了したという明確なシグナルが確認されるまで、同じトレード戦略を継続するというコンセプトに基づいている。
たとえば、ある資産が数ヶ月にわたって一方向に動き続けているとしよう。このとき、新たなデータが進行方向反転のシグナルを出すまでは、このトレンドが続くとみなす。つまり、押し目のたびに買って、反発し次第、利益を確定するシナリオである。ショートの場合はその逆だ。もちろん、トレーダーは常にトレンド反転の兆しに注意していなければならない。さもなくば、それまで利益を積み重ねていた戦略が、一転、損切りの山を築くことになる。
トレーダーは、相場の急落中に、いわゆる「落ちてくるナイフをつかもうとするようなトレード」をすべきではない。むしろトレードごとの利益と損失の額を固定し、適切なレベルで決済すべきである。アルゴリズム取引は、あらかじめユーザーが自分の資金量に対して「安心できる割合」を設定しておくだけで、あとはプログラムにまかせることができる。但し、そのような理想的なトレードは、市場が横ばいの状態や、明確なトレンドが現れていない場合には行えない。
トレンドを見極めるためにシンプルにして最強の指標の1つが、移動平均線である。移動平均線とは、特定の期間(時間、日、週、月)における資産の平均価格の推移を表す、チャート上の曲線である。トレード戦略を立案するため、異なる期間(時間、日、週、月)のチャートを相互に参照し、1つのチャートには「50日平均線」「100日平均線」「200日平均線」という風に複数の移動平均線を表示する。
一般に、現在の価格が移動平均線から大幅に離れた場合にはトレンドが強いと考えてよい。逆に、移動平均線に近づいたり少しまたいだ場合には、トレンドは弱いと判断される。同じ時間軸のチャートでも、200日平均線は、5日平均線よりもはるかに大きな重みを持つ。より長い期間の事実に基づいているからだ。
平均回帰とは?
平均回帰とは、資産価格は過去の平均価格に戻ろうとする、いう統計的な傾向のことである。したがって、平均からの極端な乖離は、「買われすぎ」または「売られすぎ」と、「反転の兆し」と解釈できる。
ビットコイン(BTC))のような、長期間、弱気市場が続いている相場でさえ、歴史的なトレンドから外れた、顕著な高値(暴騰時)と安値(暴落時)がみられる。多くの場合、市場はほどなく高値または安値から平均価格へと回帰するだろう。長期的な平均を観察することで、アルゴリズムは、平均価格からの大幅な乖離が長く続かないことを利用して、勝率の高いトレードを実現してくれる。
この平均回帰の考え方を利用したインジケータの1つが、かの有名なボリンジャーバンドである。ボリンジャーバンドは、中央移動平均線から標準偏差の倍数(σ、2σ、3σ)分だけ離れた価格が「上方限界」または「下方限界」となり、そこで価格が反転しやすい性質を利用している。価格の動きがボリンジャーバンドの両端に近づくと、ほどなく中心移動平均線への反転が起きる可能性が高い。
アルゴリズム取引の最大のリスクは、アルゴリズムがファンダメンタルズの変化を無視してしまうことである。原資産に何らかの欠陥があることが判明して市場が崩壊した場合、価格は永遠に回復しないか、少なくとも迅速には回復しない可能性が高い。トレーダーは、自分のアルゴリズムが見逃してしまうような撤退条件を特定し、監視して、修正措置をとらなければならない。
平均回帰の性質を利用したもう1つのトレード方法として、複数の資産にまたがって投資判断を行う、ペア取引がある。一方が上昇(下降)すると、もう片方の資産も上昇(下降)することが統計的に確認されている一組の資産である。これらの資産の動きを監視し、片方の資産価格が変動すれば、もう片方の資産価格も追随する可能性が高いことを利用して、取引アルゴリズムを作ることができる。現実には、このようなタイムラグはわずかなので、トレードを自動化して、ロボットに相場を監視させることには大きなメリットがある。
アービトラージとは?
アービトラージは、複数の取引所における同一資産の価格差を利用する戦略である。
同じ商品や通貨に対して、異なる取引所で一時的に異なる価格がつくことがある。もしあなたが、2つの価格がバランスされる前に、両取引所間でトレードをするスピードを持っているとしたらどうだろう? 巨大な利益を得るチャンスを手にしたのと同義と言っていい。実際、このアービトラージを目的として、専用のアルゴリズムを開発している者がいて、彼らは価格の矛盾を見つけ次第、すぐに異なる取引所間で裁定取引を行えるように、さまざまな市場やオープントレードを常に監視している。
このテクニックは、理屈自体は簡単だ。最も速く反応できるトレーダーが、遅いトレーダーよりも圧倒的に有利となる。高頻度取引は、このアービトラージ戦略と非常に相性が良い。高頻度取引は、わずかな利ざやを大量に積み重ねることができるからである。
機械学習とは?
機械学習と人工知能は、アルゴリズム取引をさらに高い未知の領域へと押し上げた。より高度な戦略をリアルタイムに採用し、最適化させることができるだけでなく、ニュース記事の自動読解のような新しいテクノロジーは、市場の動きに対する新しい洞察をもたらした。
アルゴリズムには、すでに複雑な意思決定と戦略が組み込まれ、値動きに対して自動的に取引を行うことができる。だが、機械学習を使えば、採用する戦略を臨機応変に変更することができる。それも「もし~なら」といった単純なロジックではなく、MLアルゴリズムが複数の戦略を評価し、次回のトレードをより精緻化して、利潤の最大化を目指す。機械学種の設定自体には人の手を要するが、いったん初期設定さえ行えば、市場の状況があらかじめ想定したパラメータを超えてエスカレートしたとしても、トレーダーは取引をボットに任せておけることを意味する。
ML戦略の一般的なタイプとして、単純ベイズ型が知られる。この学習アルゴリズムは、過去の統計と確率に基づいてトレードを行う。たとえば、過去の市場データにおいて、ビットコイン価格は3日間連続で下落していた後、70%の確率で上昇したとする。単純ベイズ型のアルゴリズムでは、過去3日間連続でビットコイン価格が下落したことを確認すると、次の日は上昇する可能性が高いとみて、自動的に注文を行う。これは極端に単純化した例で、実際には、学習アルゴリズムは高度なカスタマイズが可能である。リスクリワード比率などのパラメータ入力は、トレーダー自身が行わなければならないが、いったん満足のいくバランスの設定ができれば、あとは最小限の管理ででプログラムを実行させることができる。
機械学習について特筆すべきは、いまや機械がニュース記事を読んだり、その意味を解釈したりできることだ。新世代型のボットは、ネット上からスキャンしたキーワードをもとに適切な戦略を選択することができる。ポジティブなニュースやネガティブなニュースが出たときに、数秒以内に取引を実行する。組込まれるロジックの正しさだけでなく、実行の正確さも要求されるので、実装はかなり難しいが、適切に動作させることができるのであれば、他のトレーダーたちよりも有利となる。
ただし、これは自動取引の最先端であることに留意されたい。新世代型のボットは、長年テストをかいくぐってきた旧技術と異なり、信頼性の高いものを見つけるのが難しく、コストもかかるし、そもそもこのような予測自体が難しいかもしれない。
乗っかり注文とは?
乗っかり注文とは、非常に大きな規模の注文を監視し、それがさらなる価格変動につながるという前提に基づいて、迅速にトレードしようとする戦略である。
通常、大口プレイヤーからの大量の注文を察知するには、何らかのインサイダー情報が必要となる。インサイダー情報を使った取引は、一般には違法だ。だが、高頻度取引を得意とする一部トレーダーたちは、「ダークプール」と呼ばれる取引フォーラムからデータをスクレイピングすることで、合法的にこれらの情報を入手している。これらのフォーラムは、通常の取引所のように注文データをリアルタイムで送信する必要がないため、その動きが市場に与える影響が遅くなる傾向がある。これらのデータを一般のトレーダーよりも早く入手して取引を行うことで、本手法を用いたユーザーは、他のユーザーよりも圧倒的に有利となる。
たとえば、ダークプールで大量の売り注文が実行されたとしよう。このニュースが市場に伝われば、たちまち多くの個人投資家たちが狼狽して、自分のポジションを手放してしまうだろう。これはかなり確実に予想できることだ。その波を先取りして、自分が先に売り抜けてしまえばよい。そして、価格が下に突っ込んだところで、買い戻すこともできる。データを合法的なチャネルから入手する限り、この手法は違法とはならない。実際、多くのアルゴリズムトレーダーは、この手法を採用している。
アルゴリズム取引を仮想通貨で活かすには?
各種アルゴリズムを配布しているWebサイトは多数あり、これらのプログラムは、アルゴリズム取引を許可しているデジタル資産取引所で使用することができる。
アルゴリズム取引を簡単にセットアップできるサービスは多数ある。TradeSanta、Bitsgap、Cryptohopperなどのボットの開発サイトは、無料ボットから高額ボットまで、多彩なボットを提供している。無料ボットにも様々なオプションが用意されているので、初心者には十分だろう。だが、プロを目指しているのなら、有料ボットも検討して欲しい。有料な分、とても高機能だ。
これらのサイトでは、チュートリアルの資料を提供しており、それを読めば、自分に合ったボットや戦略の見つけ方を学習できるだろう。すべてのサービスがあらゆる取引所で対応しているわけではないが、これらのボットの大部分は、人気のある取引所ではすべてで対応している。中には、特別製のボットがもらえるプロモーションを実施している取引所もあるので、ユーザーは積極的な情報収集によって、選択肢の幅を広げて欲しい。
アルゴリズム取引の世界は奥が深く、他にもたくさんの手法やサービスがあるのだが、この記事ではアルゴリズム取引の基礎の紹介にとどめたい。今後、実践を通じて少しずつ学んでいけば、自分に合った戦略とボットを見極める目が身につくまで、多くの時間は要しないはずだ。
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