仮想通貨(暗号資産)のアービトラージ(裁定取引)は、異なる市場や取引所間で生じる価格差を利用して利益を得ることを目的としたトレード手法です。
初心者の方でも仕組みを理解すれば、相場変動に左右されにくい安定した収益を狙える手法として注目されています。
本ガイドでは、アービトラージの基本から具体的な戦略、実践上の流れやリスク管理、日本国内での留意点までを丁寧に解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、ローリスクで着実な利益獲得につなげましょう!
最初に押さえるポイント(ざっくり要点)
まずは仮想通貨アービトラージの全体像と要点を簡単に整理しましょう。
アービトラージとは何か、その利益の源泉、そして初心者が注意すべきポイントをまずはざっくりと把握していきましょう。
アービトラージの基本定義と利益源
アービトラージ(裁定取引)とは、同じ資産が異なる市場や取引所で一時的に異なる価格で売買される状況を利用し、安い所で買って高い所で売ることで利益を上げる取引手法です。
例えば取引所Aでビットコインが1BTC=300万円、取引所Bで1BTC=303万円なら、Aで買いBで売って差額3万円(手数料等控除前)の利ざやが得られます。
理論上、同時売買により相場変動リスクを抑えた取引とされますが、現実には手数料や送金遅延により無リスクとはいかない点に注意が必要です。
価格差が生まれる典型要因(市場分断・手数料・送金遅延・規制差)
なぜ同じ暗号資産の価格に差が生じるのでしょうか?主な要因として以下が挙げられます。
市場の分断:取引所ごとにユーザーや資金の流入が異なるため需給バランスが違い、価格にも差が出ます。
特に規模の小さい取引所では、注文板の厚み(流動性)が低く、少しの注文で価格が大きく動くため、他所と比較した価格の乖離が生じやすくなります。
送金遅延:取引所間で資金移動(暗号資産の送付や法定通貨の出金入金)に時間がかかると、裁定取引の参加者がすぐに価格差を埋められません。
その間に一時的な価格差が継続する場合があります。
特にブロックチェーンの送金に時間がかかる暗号資産や、入金反映に時間を要する法定通貨ではこの傾向が顕著です。
規制や環境の違い:国や取引所によって提供サービスやルールが異なり、レバレッジ取引の有無や上限、取り扱い銘柄、KYC要件などの差が需要ギャップにつながります。
例えば日本では個人向けレバレッジ取引が2倍に制限されており、レバレッジ需要の差が価格差につながるケースもあります。
初心者が避けるべき落とし穴(コスト過小評価・送金遅延・在庫偏り)
アービトラージは一見シンプルですが、初心者が陥りがちな注意点があります。
以下の「落とし穴」を把握して、事前に対策しておきましょう。
送金遅延で利益消失:送金中に価格差が消えて利益が吹き飛ぶリスクがあります。
対策として、あらかじめ複数の取引所にビットコイン(BTC)や資金を配置(プリポジション)しておき、送金を挟まず即座に売買できるようにします。
在庫の偏りと相場変動リスク:各取引所に暗号資産と現金をあらかじめ配置しておかないと、その都度送金が必要になり、手数料負担や価格変動リスクが生じます。
常に複数の取引所に十分な在庫を置き、スムーズに取引できる状態を維持しましょう。
アービトラージとは何か
ここでは改めてアービトラージという取引手法の基本に踏み込みます。
同時売買による無リスク(または低リスク)取引という前提、価格の概念(インデックス価格やマーク価格など)の捉え方、さらに具体的に価格差を測定する方法について解説します。
裁定のメカニズム(同時売買・ヘッジ・無リスク/低リスクの前提)
アービトラージの基本は「安く買って同時に高く売る」ことです。
理想的には、価格差に基づく売買をほぼ同時に行うことで、相場変動の影響を受けずに利益を得ることが可能だという前提に立っています。
例えば前述のように取引所AとBでビットコインの価格差があれば、Aで購入すると同時にBで売却し、差額分の利益を確定します。
このとき重要なのは、ポジションを持ち越さない(買いと売りがすぐ対応している)ため、価格変動リスクを極力排除できる点です。
もっとも、現実には完全な同時執行は難しいため、実務上はごく短い時間差や一時的な在庫リスクを受け入れて取引します。
それでも、裁定取引においては通常の投機取引に比べ取れるリスクを小さく抑える設計です。
また、先物取引などを活用したヘッジも裁定の一種です。
例えばビットコイン現物とビットコイン先物の価格差(後述のベーシス)に着目し、現物を買って先物を売ることで、ビットコイン相場の上下動に左右されず価格差のみを利益化できます。
このように、アービトラージとは相関性の高い資産間の価格差に注目した取引手法と言えます。
価格の捉え方(Index/Mark/Last・スプレッド・MID)
価格差を議論する際には、価格とは何かを正しく理解する必要があります。
一口にビットコインの価格と言っても、実は複数の定義があります。
最終取引価格(Last Price):ある取引所における直近の取引成立価格です。
ニュースなどで目にする価格は通常こちらで、各取引所ごとに異なります。
インデックス価格(Index Price):複数の主要取引所の平均価格から算出される参考価格です。
先物取引やレバレッジ取引ではインデックス価格を基準にすることで、特定の取引所での価格操作に左右されにくくなっています。
マーク価格(Mark Price):インデックス価格に基づき、未実現損益評価や清算判定に用いられる公正価値です。
急激な変動でも不必要な強制決済が起きにくいよう調整された価格で、先物(特に無期限契約)では清算リスク軽減のためこの価格が採用されます。
さらにスプレッド(売値と買値の差)も考慮が必要です。
同じ取引所内でも、「今すぐ買いたい値段(買気配)」と「今すぐ売りたい値段(売気配)」には差があります。
このスプレッドの中間であるミッド(仲値)が市場の実勢を表す指標となりますが、実際にそのMIDで約定できるわけではありません。
取引所ごとの価格を比較する際には、単純な表示価格同士ではなく、実際に取引できる価格帯(板の厚みを考慮した価格)で比較する必要があります。
価格差の測り方(板情報・深さ・出来高・相関)
実際に裁定機会があるか判断するには、各取引所の板情報や出来高などを詳しく見る必要があります。
単にサイト上の価格を比較するだけでは不十分です。
重要な観点は以下の通りです。
板の深さと約定可能量:価格差があっても、ごくわずかな数量しかその価格では売買できない場合、思った利益は出せません。
各取引所のオーダーブック(板)を確認し、十分な量を希望価格で捌けるか(または取得できるか)を見極めます。
例えば価格差3万円でも1BTCしか売買できなければ最大利益は3万円ですが、10BTC約定できれば30万円の差益になります。
出来高と流動性:普段から取引高の大きい市場ほど価格は効率的に裁定され、差が生じにくくなります。
逆に流動性の低い市場では価格が逸れるチャンスもありますが、そもそも約定しにくかったりコストが高かったりします。
各市場の取引高や板の薄さを把握しておきましょう。
資産間の相関:裁定取引は同じ資産や価値連動の資産間で行うのが基本ですが、広義には異なるが価格推移に相関関係がある資産ペア(例えばビットコインとイーサリアムなど)の一時的な価格乖離を利用する手法もあります。
相関が高い二資産の価格差が通常範囲を外れた場合に、割高な方を売り、割安な方を買うことで利益を狙うやり方です。
ただし相関が完全ではないためリスクは上がります。
ツールの活用:人手で複数取引所の価格を逐次監視するのは非効率です。
裁定機会を探すには複数の取引所価格を一覧できるサービスやアプリ、もしくは独自のプログラム(API連携)で自動監視することが有効です。
手動よりも機械的な監視の方が、ミスや見落としが少なくなります。
市場構造と情報源
暗号資産取引の舞台となる市場は、大きく中央集権型取引所(CEX)と分散型取引所(DEX)に分けられます。
また、取引されるペアの通貨構造(例:対円か対ドルか)や、先物取引特有の仕組みも理解しておくと裁定戦略に役立ちます。
このセクションでは、市場構造の違いや代表的な指標について解説します。
CEXとDEXの違い(オーダーブックvsAMM)
まず中央集権型取引所(CEX)と分散型取引所(DEX)の違いです。
CEXは運営主体が取引インフラを提供し、ユーザーは口座を開設して取引します。
典型的にはオーダーブック方式(板取引)で、ユーザー同士の売買希望がマッチングして価格が決定します。
一方、DEXはブロックチェーン上のスマートコントラクトによって動作し、AMM(自動マーケットメイカー)方式が主流です。
AMMでは流動性プールに対しユーザーがトークンを出し入れすることで価格が計算されます。
この構造の違いにより、裁定の機会にも特徴が出ます。
CEX間の価格差は人やBotの高速取引で比較的すぐ埋まりやすいですが、DEXはチェーン上のトランザクション処理速度やガス代も絡むため、価格乖離が一時的に大きくなることがあります。
例えばイーサリアムのDEXで価格が大きくズレた場合、それを検出したボットがフラッシュローンなどを駆使して即座に裁定を行うことが知られています。
CEXは法定通貨との出金入金が容易な反面、DEXはウォレットさえあれば直接取引できるため、裁定取引者は両者の利点を活かして戦略を組み立てます。
ペア構造とステーブルコイン(USDT/USDC/JPY・ペグ安定性)
仮想通貨の取引ペアには様々な組み合わせがありますが、裁定取引を語る上で基軸通貨となるのがドルに価値を連動させたステーブルコインです。
例えば世界最大手の取引所ではビットコインはUSDT建て(テザー社が発行する1USDT≒1ドルのステーブルコイン)で取引されます。
一方、日本の取引所ではビットコインは円建てが中心です。
この違いから生じる留意点として、国内外取引所間の価格比較では為替レートの影響を除く必要があります。
単純に「海外でビットコインが30,000ドル、国内が400万円」というと約10%乖離しているように見えますが、その時のドル円レートが1ドル=133円なら実質同水準です。
またステーブルコイン自体のペグ(連動)が常に完全とは限らない点にも注意しましょう。
過去にはUSDTが一時的に対ドルで0.95ドル程度まで下落した事例や、2023年3月にUSDCが発行元銀行の問題で一時1USDC=0.9ドル台になるデペッグが発生しました。
このような場合、複数のステーブルコイン間でも裁定チャンスが生じます(例:USDC安値時に買い、1ドルに戻ったら売る)。
もっとも発行元が破綻するようなリスクシナリオではペグが戻らない可能性もあるため、暗号資産アービトラージにおいてステーブルコインの信用リスクも頭に入れておく必要があります。
先物・資金調達料(Funding)とベーシスの基礎
暗号資産には、現物市場だけでなく先物市場も存在します。
先物価格と現物価格の差(ベーシス)も重要な裁定対象です。
通常、将来受け渡しの先物価格は、現物価格に期間分のコスト(資金金利や保管料相当)を加えた水準となります。
そのため強気相場では先物が現物より高いコンタンゴ(順ザヤ)になりやすく、弱気相場では低いバックワーデーション(逆ザヤ)になることがあります。
仮想通貨の代表的な先物商品として、無期限先物(パーペチュアル)があります。
これは満期のない先物で、常に現物価格とのベーシスが開きすぎないよう資金調達料(FundingRate)という仕組みがあります。
例えばビットコインの無期限先物が現物より高値で推移するとき、ロング(買い手)はショート(売り手)に定期的な支払いを行う(=プラスのFundingRate)ため、コスト負担からロングポジションが減り価格が下がる方向に働きます。
逆に無期限先物が割安ならショートがロングに支払います。
こうしたメカニズムにより、無期限先物と現物の価格差は自然と縮まるよう誘導されています。
裁定取引では、先物と現物の価格差を利用したベーシス取引(例えば現物買い・先物売り)や、異なる取引所間でFundingRateの差を利用して利益を狙う戦略も存在します(詳細は後述)。
先物特有の仕組みや指標(Fundingやベーシス)を理解しておくと、現物市場だけでなく派生商品も含めた幅広い裁定チャンスを見出すことが可能になります。
主要アービトラージ戦略カタログ
仮想通貨の裁定取引には様々なバリエーションがあります。
ここでは代表的な戦略を一覧で紹介します。
それぞれ仕組みは異なりますが、価格差を起点に利益機会を探るという点は共通しています。
また、ビットコインfx儲かるといった類似した話題でも、短期利益ばかり追うのではなく、低リスクで積み上げるアービトラージの有効性を把握した上で、自分の環境や得意分野に応じて、適切な戦略を選びましょう。
CEX–CEX現物アービトラージ(現物クロス取引所)
最も基本的な裁定です。
複数の取引所間で同じコインの価格差が生じたとき、安い取引所で現物を買い、高い取引所で現物を売ります。
例えば国内取引所AでETHが1ETH=2500ドル、海外取引所Bで1ETH=2600ドルなら、Aで買いBで売って差額100ドルが利益になります。
この手法では各取引所に事前に資金を用意しておき、すぐに取引を完結できる状態にしておくことが望ましいでしょう。
三角アービトラージ(同一所内の通貨三角関係)
一つの取引所内で、3つの通貨ペア間の価格不整合を突く戦略です。
例えば取引所XでBTC/ETH、ETH/USDT、BTC/USDTの3つのマーケットがあるとします。
このときビットコイン、イーサリアム、USDT間で理論上成り立つ交換比率にズレがあれば、裁定取引のチャンスです。
簡単な例として、通常BTC/USDTレートはBTC/ETHとETH/USDTレートから計算されますが、もし計算上の価格と実際の板価格に乖離があれば、BTC→ETH→USDT→BTCと一巡させて元のBTC数量を増やすことが可能です。
三角アービトラージでは一つの取引所内で完結するため送金の手間がなく、高速な注文処理が要求されます。
先物–現物のベーシス取引(キャリー/逆キャリー)
先物価格と現物価格の差(ベーシス)を利用する裁定です。
例えばビットコイン先物が現物価格より年率換算5%高い水準(順ザヤ)にあるなら、現物を買って同数量の先物を売り建てます(キャリートレード)。
満期または価格収斂時に先物を清算すれば、ビットコイン価格がどう動こうと5%分(手数料等除く)の利ざやを獲得できます。
逆に先物が割安(逆ザヤ)の場合は現物を空売りし先物を買うことで利ざやを得ます(リバースキャリー)。
ベーシス取引は金利差や需給の偏りで生じる価格差を捉えるもので、従来の金融市場でも広く行われている投資手法です。
資金調達料(FundingRate)裁定(ロング/ショートの資金調達料差)
無期限先物の資金調達率(FundingRate)を利用した戦略です。
例えば取引所Aではアルトコインの無期限先物のFundingが年率20%と高く、取引所Bでは同じコインの先物が5%程度だとします。
この場合、Aでショート・Bでロングのポジションを持てば差し引き年率約15%を無リスクで得られる計算です。
もっともFundingRateは刻々と変動するため、常に両取引所の状況を監視し、長期間ポジションを持つ場合は相場転換に注意する必要があります。
DEX–CEXアービトラージ(AMM乖離の捕捉)
ブロックチェーン上のDEXと中央集権型取引所(CEX)の価格差を狙う戦略です。
例えばCEXで暴騰したトークンが、DEX上ではまだ安い価格で放置されている場合、DEXで買ってCEXですぐ売れば利益が出ます。
この戦略では、DEXでトークンを買う際に別のトークン(通常はETHやUSDCなど)が必要になるため、ルーティング(交換経路)の設計やガス代も考慮します。
取引規模が大きいとDEXでは価格インパクトが発生し自分の取引で価格が動いてしまうため、事前に概算の滑りとガスコストを見積もり、十分利益が出るか条件を設定しておくことが重要です。
ステーブル/リキッドステーキング系(例:stETH系の乖離活用)
ステーキング報酬が得られる代わりに交換レートが変動するトークン(LSD:LiquidStakingDerivative)も裁定の対象です。
例えばLidoが発行するstETHは常にETHと1:1ではなく、市場で微妙に安い価格で取引されることがあります。
stETHを割安時に買って、ETHとの交換ペグが1:1に近づいた時に売れば差益を得られます。
なお、バイナリーオプション仮想通貨のような短期投機より、これら現物価値の乖離を狙う裁定の方がリスクは限定的です。
ただしLSDトークンは換金にクールダウン期間が必要だったり、ペグが大きく崩れる可能性もゼロではないため、流動性とリスクを十分確認して行う必要があります。
始め方(ステップ・バイ・ステップ)
それでは、実際に仮想通貨アービトラージを始めるには何が必要でしょうか。
初心者の方に向けて、準備から取引実行、振り返りまでの流れをステップ・バイ・ステップで説明します。
取引所の紹介ページ(Coin Futures Reviewなど)なども参考にしながら、自分なりの進め方を計画してみましょう。
口座開設・KYC・限度額(国内/海外の使い分け)
まずは裁定取引に使う取引所の口座を用意します。
国内の主要な仮想通貨取引所(例:ビットフライヤー、コインチェック、GMOコインなど)は本人確認(KYC)が必須です。
それぞれ口座を開設して必要なレベルまで本人確認を完了させましょう。
海外取引所の場合、日本在住者は利用が制限されている場合もあるため注意が必要です。
またKYC不要・すぐに使えるプラットフォームとしては「CoinFutures」のようなサービスもあります。
これはゲーム感覚で先物取引(最大仮想通貨レバレッジ1000倍)ができる特色があります。
ただし一般的に海外取引所では出金限度額やAPI利用制限などがKYCレベルで変わることが多いので、大きな取引をする場合は事前に確認しましょう。
資金配分と在庫管理(複数所間のバランス設計)
複数の取引所にどの程度の資金を置いておくかは、裁定取引の成否に関わります。
基本は各取引所に現金(もしくはステーブルコイン)と暗号資産の両方を適切に配置することです。
例えばビットコインの裁定を主に狙うなら、取引所AとBそれぞれにビットコインと現金を半々程度持っておけば、どちらで安くても高くてもすぐ売買できます。
もし片方にしかビットコインがないと、反対側で買った後に送金しなければならず機会損失になります。
したがって戦略に応じて各取引所への資金配分(インベントリ)を計画し、定期的に偏りがあれば調整(リバランス)します。
なお国内取引所同士だけでなく、海外取引所との間で裁定するケースでは、一時的にどちらかに資金が集中しがちです。
そうした場合は為替手数料や送金時間も考慮して、余裕を持って資金移動計画を立てましょう。
監視→約定→ヘッジ→クローズの一連フロー
実際の取引フローは次のようになります。
- 監視:価格差の発生を監視ツールやアラートで検知します。常に目を光らせておく必要はなく、自動化した通知に頼ると良いでしょう。
- 約定:チャンスが来たらすぐに両市場で注文を出します。可能なら一方は指値注文で待ち、他方で成行など工夫もできますが、タイミングが命なので迷ったら双方成行で素早く約定させます。
- ヘッジ:取引の片方だけ通った場合、すぐさま代替手段でヘッジします。例えばA取引所で買いが約定したのにB取引所で売り損ねたなら、Bで代わりに先物を売って価格変動リスクを抑える、といった対応です。部分約定の場合も同様で、未約定部分を埋めるヘッジを検討します。
- クローズ:裁定取引が完了した後、増えた方の資産を反対側に送金したり、次の取引に備えて在庫調整を行います。利益分は安易に使わず、手数料引き後の利益が想定通りか確認しましょう。
記録・検証・改善(トレードログと再現性)
アービトラージを継続的に行うなら、トレードログ(取引記録)をつけて検証することが大切です。
いつ・どの取引所間で・どの通貨を裁定し・どのくらいの利益(または損失)が出たかを記録しましょう。
そうすることで「この取引は思ったより手数料がかかった」「こちらの取引所では約定に時間がかかった」など具体的な課題が見えてきます。
記録を基に戦略を微調整すれば、再現性の高いトレード手法へと改善できます。
また、仮想通貨現物取引だけでなくレバレッジ取引も組み合わせる場合、そのリスクとリターンの違いも分析しておきます。
コスト設計と損益分岐
裁定取引の全コストを洗い出し、利益計算に含めることが重要です。
この考え方は、例えば株と仮想通貨どっちが儲かるかという話でも通用するので、覚えておきましょう。
リスク管理(戦略横断)
いかにリスクを抑えると言っても、裁定取引にも様々なリスク要因があります。
全ての戦略に共通するリスクと対策を押さえておきましょう。
実行リスク(遅延・部分約定・フロントランニング)
取引執行に伴うリスクです。
注文の遅延や一部しか約定しない可能性、他のトレーダーに先回りされるフロントランニング(先回り約定)によって、想定通りの利益が出ないことがあります。
対策として、できるだけ同時に注文を入れる、板の厚みに見合った数量を扱う、明らかに不利になったら撤退するなど柔軟に対応しましょう。
カウンターパーティ/取引所リスク(破綻・出金停止)
利用する取引所自体のリスクです。
経営破綻やハッキングによる出金停止などが起これば、資金が引き出せなくなる危険があります。
実際に海外では大手取引所が破綻した例(FTXなど)もあります。
資金は一箇所に集めすぎず、複数の取引所に分散させたり、信用度の高い取引所を選ぶことが重要です。
ステーブルコイン/ペグ崩れ・清算リスク
前述のステーブルコインのペグ崩壊リスクや、借入・レバレッジを使っている場合の清算(ロスカット)リスクです。
大きな市場変動が起きると一時的にペグが外れたり、担保不足で強制決済され損失を被る恐れがあります。
レバレッジを低めに(海外取引所なら仮想通貨 レバレッジ10倍、日本なら2倍まで)抑える、余裕ある担保を維持する、ペグリスクの高いトークンは扱わない等で対応します。
スマートコントラクト/ブリッジ/MEVリスク
DeFi系の裁定では、スマートコントラクトのバグやハッキングによる資金消失リスク、ブリッジの脆弱性、さらには取引をブロックチェーン上で実行する際のMEV(MaximalExtractableValue)問題で思わぬ損失を被る可能性もあります。
契約の信頼性を確認し、必要以上の資金を預けないようにしましょう。
相場転換と在庫偏り(ヘッジ不備の損失拡大)
相場急変で片方の在庫だけ残ると損失が膨らみます。
ポジションは常にヘッジを徹底し、裁定後は速やかに在庫バランスを整えましょう。
日本の環境での実践ポイント
日本国内で裁定取引を行う際の特殊事情や留意点を挙げます。
国内のみ、あるいは海外との併用でトレードする際に役立つ情報です。
国内取引所の板の厚み・手数料・メンテ時間のクセ
国内取引所は海外大手に比べ板が薄い傾向があります。
早朝など取引が少ない時間帯やメンテナンス直後はスプレッドが開きやすい点に注意しましょう。
取引所ごとに手数料体系も異なるため、主要各社(bitFlyer、Coincheck、GMOコイン等)のルールを把握しておきます。
国内2倍レバレッジ規制の影響と先物/資金調達料の扱い
日本ではレバレッジ取引は2倍までと厳しく制限されています。
そのため国内取引所では先物や無期限先物(パーペチュアル)は提供されておらず、ハイレバレッジ(海外では仮想通貨レバレッジ100倍超も可能)を利用した裁定は基本的に海外取引所で行う必要があります。
海外取引所との併用時の注意(入出金経路・為替・税務実務)
海外取引所へ資金を送る際は、一度国内で暗号資産に換えてから送付するなど経路を工夫する必要があります。
その際の為替レートや送金手数料を考慮し、最適な方法を選びましょう。
また、ハイレバ取引に不慣れな方は仮想通貨レバレッジとは何かを十分理解してから挑戦しましょう。
海外での利益も国内で課税対象となるため、確定申告も忘れないように注意が必要となります。
よくある質問(FAQ)
ここからは、アービトラージ仮想通貨についてよくある質問を紹介します。