FTXが破綻した影響で、中央集権的な仮想通貨取引所に対する懸念が高まっているようだ。仮想通貨投資家は資産をハードウェアウォレットに移行している。

大手ハードウェアウォレットプロバイダーのトレザー(Trezor)でブランドアンバサダーを務めるヨゼフ・テテック氏は15日、FTX破綻の影響で同社のウォレット販売が大幅に増加したことをコインテレグラフに語った。

トレザーは販売収益が前週比300%急増し、今も伸びているという。現在の売上はビットコインが史上最高値の6万8000ドルを記録した1年前よりも高いと主張。トレザーでは、ウェブサイトのトラフィックも大幅に急増し、同期間に350%増加した。

テテック氏は、新しいウォレットユーザーの増加は、FTXがユーザー資金の不正流用した問題の結果であることを確信していると強調する。ウォレット需要の急増は、まさに「FTXの債務超過の噂が流れ始めた」先週初めから始まったという。

トレザーでは近い将来、新規ユーザーがさらに増加すると予想しているようだ。

「FTXの失敗の影響が続きビットコインや仮想通貨の保有者がカストディアンへの信頼を失うと、デジタル資産を自己保管する選択肢を模索し始める。この傾向は短中期的に継続すると予想している」

テテック氏によると、トレザーは短中期的に現在の需要レベルを満たすことができるそうだ。「この高水準の売上が続いたとしても、すでに売上の上昇を計画していたため、長期的には当社の在庫への影響は限定的だ」とテテック氏は述べた。また、トレザーは、「セルフカストディをすべての人が利用できるようにする」というビジョンに沿って、ハードウェアウォレットの価格を上げる予定はないとも述べている。

売上の急増とそれに伴うサポート需要の増加にもかかわらず、トレザーは雇用を拡大するつもりはない。トレザーは現在、複数の拠点で合計100人を雇用しており、その大半はプラハに拠点を置いている。

仮想通貨投資家は、ソフトウェアやハードウェアウォレットによるセルフカストディへの移行が進んでおり、2022年11月中旬には取引所の流出額が過去最高に迫る勢いとなっている。

主要なライバルであるハードウェアウォレットサプライヤーのレジャー(Ledger)は、最近も同社のデバイスに対する需要の大幅な急増を記録している。先週FTXがすべての出金を停止した直後に、1日あたりで過去最高のトラフィックを経験し、投資家ができるだけ早く取引所からコールドウォレットに資金を送金することを誘発した。

FTX破綻の影響が続く中、世界最大の仮想通貨取引所でさえ、セルフカストディの必要性を推進し始めている。バイナンスのジャオ・チャンポンCEO(通称CZ)は14日、投資家がハードウェアやソフトウェアウォレットのような自己保管ソリューションに移行するため、中央集権型取引所はもはや必要ないのかもしれないと認めた。