ブロックチェーン分析企業のサイファートレースがこのほど公開した調査結果によると、世界の仮想通貨(暗号資産)取引所の半数以上が脆弱なKYC(本人確認)システムになっているという。特に欧州、米国、英国の取引所はガイドラインにしたがっていないところが多くあるとした。

サイファートレースは、分散型、中央集権型、自動マーケットメーカー(AMM)など800以上の取引所を分析し、その内の56%がアンチマネーロンダリング対策として規制されているKYCガイドラインに全く従っていなかったという。特に欧州では、欧州連合(EU)の第5次アンチマネーロンダリング指令(AMLD5)のガイドラインに60%の取引所が遵守していないとした。

国別で見ると、KYCが不十分な取引所が最も多いのが米国や英国、シンガポールの3カ国。

この調査では多くの取引所がウェブサイトや取引条件に拠点の国名を記載していないことがわかった。こうした取引所の85%は脆弱なKYCフレームワークとなっていた。おそらくこれは意図的なものであり、当局への登録やAML規制への準拠を避けるために管轄区域を隠しているのではないかとしている。

調査によると、アフリカ地域の仮想通貨取引所の72%がセイシェルで登録されており、そのうちの70%はKYCが不十分で、外国人の利用者がほとんどであることから、潜在的にマネーロンダリングの温床になっていると指摘した。

DeFiは規制を受け入れるか

また、調査では分散型取引所(DEX)についても調査。81%のDEXがKYCが不十分か全く行っていないことが示された。一方でこうした状況の中でもサイファートレースはDEXが必ずしもマネーロンダリングの温床にはなっているわけではないと指摘。最近起きたKuCoinのハッキングで盗まれた790万ドルの仮想通貨がDEXであるユニスワップで販売されたが、そこで資金洗浄されていないとした。

エリプティックの共同創業者であるトム・ロビンソン氏は「ハッカーは足跡を隠すためにDEXを使っているわけではない。ただ盗んだトークンを売るために使っているのだ」と指摘している。

DeFiプロジェクトは、レンディングや借り入れ、金利獲得といった伝統的な金融活動を提供しており、銀行や他の規制対象金融機関と同じ規制の枠組みに該当する可能性がある。

今月初めに米証券取引委員会(SEC)の仮想通貨専門家であるバレリエ・スケパニック氏は「これらは全て金融活動であり、証券法、潜在的には銀行法や貸付法など、間違いなくAML/CTFを含む様々な法律の対象となる可能性がある」と指摘している。

サイファートレースのCEOであるデービット・ジーヴァンス氏はDeFiプロトコルは簡単には規制を受け入れないだろうと話した。

「ここ数ヶ月の間に我々が経験したことは、彼らはKYCとは関わらないことを望んでいるということだ」と指摘。次のように続けた。

「彼らはソフトウェアを書いているだけで、利益を得ているが、何かを操作しているわけではないと、主張している。しかし、プラットフォームのガバナンスを調査するのは興味深いものだろう」

ジーヴァンス氏はDeFiが規制から逃れることはできないだろうと考えているようだ。