仮想通貨ビジネスは甘い業界ではない。仮想通貨取引所も「もうかると思うなら自分でやれば?」といわれたら、お手上げだろう。

Phemexは、2019年にシンガポールで設立された仮想通貨取引所である。 Phemexは「わずか2年で世界の取引所トップ10にランクインし、1日の取引量は120億ドルを超えた(ピーク時)」。コインテレグラフは今回、Phemexの創設者兼CEOであるジャック・タオ(Jack Tao)氏に、仮想通貨取引所を経営する難しさとリスク、Phemexの将来像について語ってもらった。

Phemex創業のいきさつと「仮想通貨の冬の時代」に創業した苦労は?

Phemexを創業したのは、私が伝統的な金融業界で体験した多くの問題に、具体的な解決策を提供したかったからだ。私がはじめて仮想通貨に出会ったとき、これならば伝統的な金融業界の非効率性を解消してくれるはずだと胸が高鳴った。

テクノロジー面での解決策が、ブロックチェーンだ。ブロックチェーンは数多くの可能性を秘めている。私のファーストステップは、ブロックチェーンについて学ぶことだった。その後、私はマイニング事業をはじめるとともに、さまざまな取引所で実験的な取引を試みた。

仮想通貨業界での私の最初の冒険は、大失敗に終わった。この業界が「最終的には成功する」という確信はゆるがなかったが、この業界にはまだまだ長い道のりが必要なことを痛感させられた。私が利用した取引所には多くの技術的な問題があり、頻繁なサービス休止やハッキングが発生していた。業界ルールは無いに等しく、社会的な信頼もほとんどなかった。このような悲惨な状況を打開するため、私はウォール街仕込みのファイナンス知識と技術的知識を総動員した。

私が到達した結論は、世界の人々が経済的自立を達成するには、選ばれた少数の人々のためだけでなく、すべての人の役に立つ強固で効率的なプラットフォームをつくらなければならない、ということだ。 これはウォール街の論理とは矛盾する。だが、Phemexは、伝統的な金融業界のルールとツールを活用しつつも、仮想通貨が持つ経済的自由と自己実現の精神をも取り入れた点でより優れていると信じている。

モルガンスタンレーでの10年の経験は、起業にあたってどう役立ったか?

私はPhemexを共同で設立する前、モルガンスタンレーで電子取引(MSET)ベンチマーク実行戦略(BXS)のグローバル開発担当副社長を務めていた。 そこでのファイナンスの実務経験は、Phemexを起ち上げるためのスキルと洞察力を与えてくれた。

「高スループット」「低遅延」「大規模」なアルゴリズムを持つ取引プラットフォームの構築に10年以上の経験があったため、TradeFi業界が直面している問題を特定するのにさほど時間はかからなかった。 何が課題か分かれば、あとは解決策を講じるのみ。そして、それは世界で最も信頼できる仮想通貨デリバティブ取引所であるPhemexを構築するということだった。

Phemexは創業以来、飛躍的に成長を続けている。現在では最大100倍のレバレッジでの仮想通貨取引を、現物・先物の双方で提供している。Phemexは、わずか2年で世界の取引所トップ10にランクインし、1日の取引量は120億ドルを超えた。

仮想通貨取引所を経営する上で最も難しい問題は何か? どこの国に取引所をつくるか、どうやって決めたか?

仮想通貨取引所の経営は、生半可ではつとまらない。最大の問題は、ユーザーに信頼できる安全なプラットフォームを提供するための安全性とセキュリティだ。システムとユーザーアカウントのセキュリティは最優先事項であり、『階層的決定論的コールドウォレット』を実装した。これは、各ユーザーに個別のコールドウォレットデポジットアドレスを割り当てるというものだ。

Phemexが顧客から預かるすべての仮想通貨は、オフライン署名を介して、当社のマルチ署名コールドウォレットに定期的に集められる。私にはウォール街での高度なリスク管理の実務経験がある。悪意のあるアクションを検出し、ユーザーの資産とプラットフォームを保護するために迅速な措置をとるのはお手のものだ。口座からの仮想通貨の引き出しもオフライン署名を介して処理されるため、すべての資産は100%コールドウォレットに保存され、すべての操作はオフラインで実行される。

仮想通貨取引所を開設する国については、通常のビジネスと大差はない。考慮すべき事項は非常にシンプルだ。すぐれたビジネス環境と外資に好意的な政策、高い経済成長率、起業家精神にあふれた有能な人材のクラスター、ビジネス優先の税制とコンプライアンス構造が必要だ。

シンガポールは、これらの基準をクリアする理想的な国だ。すでに東南アジアにおける仮想通貨業界のハブ的存在として知られている。シンガポールは、伝統的な金融業と地政学的な優位性をもち、仮想通貨にとって理想的な環境といえる。これらの恵まれた環境なくして、私たちが短期間で成功をおさめることは不可能だっただろう。シンガポールのチームはいまも急速に拡大しており、将来が楽しみだ。

2022年におけるビジネス環境は、2019年の創業当時とどう異なっているか?

仮想通貨とブロックチェーンのビジネスは、2019年から2022年にかけて大きく変化した。いくつか例を挙げよう。

2019年末、仮想通貨の時価総額は2,000億ドルにすぎなかった。現在は1.6兆ドルだ。2021年のある時点では3兆ドルに達した。この違いから分かることは非常に明快だ。それは、業界自体により関心が集まり、個人投資家と機関投資家の双方の関心がより高まり、実用化が更に進んでいるということだ。仮想通貨の需要が高まっており、ビジネスには強い追い風が吹いている。

2019年と比較した際のもう1つの違いは、市場に出回っている仮想通貨の銘柄だ。好奇心旺盛な読者に、こんなトレーニングをおすすめしよう。毎年、上位50位までの仮想通貨を表にして、次の年と比較することだ。テクノロジーの流行り廃りが一目瞭然になるだろう。

業界は急速に変化するが、Phemexとて前進を止めるわけにはいかない。新製品を開発し、投資家たちに世界最高の仮想通貨取引所を提供し続けたい。

「多くのブロックチェーン企業が仮想通貨とブロックチェーンの理想を実現したと主張しているが、現実には、旧来の利益追求ベースで新しい技術を実装しただけのように見える。「BreakThrough、Break Free」のスローガンを掲げるPhemexに、彼らとの違いはあるのか?

私が伝統的な金融業界で10年以上働いて感じたのは、理不尽な規制と不正に対する幻滅だった。金融業界は、不当な手数料と非効率的なシステムに悩まされている。このシステムは、世界中の 裕福な人々をあらゆる方法で優遇し、恵まれない人々をあらゆる方法で抑圧するためのものだ。多くのブロックチェーン企業は、ブロックチェーンの理想をお題目として唱えるだけで、実践はしていない。旧来の利益主導モデルに、新しいテクノロジーを盛っただけだ。

当社のスローガン「BreakThrough、Break Free」は、私たちの理念と目的の結晶だ。 Phemexは、真の経済的自律性を促進するだけでなく、より良い経済システムを構築するのに必要なすべてのものをシステムのコアに組み込んでいる。私たちは、どんな個人も自分の人生を変えることができ、自分の現実をつかみ取る力があると信じている。

Phemexの次の一手は? 2022年に期待できることは?

私たちはすでに、仮想通貨を入口に、分散型トランザクションの推進や、伝統的な金融システムのブロックチェーン化に至るまで、長い道のりを歩んできた。今後は金融だけにとどまらず、次世代向けのあらゆるサービスやプロセスにイノベーションをもたらしたい。

最近のトレンドにも情熱をもって取り組んでいる。具体的には、メタバース用のトークンとNFTs(非代替トークン)が私の興味をかき立てている。 NFTアートとNFTコレクションは、現在バブルの様相を呈しているが、まだまだ伸びしろがありそうだ。私たちはすでに『所有権』概念の再定義に着手しており、オンチェーンアセットの新しい使用について検討を始めたところだ。

メタバースについては、GameFiやplay-to-earnは、革新的な富の分配メカニズムを内包しており、デジタル分野における人間の活動を革新する可能性がある。これらのユースケースは氷山の一角であり、その可能性はPhemexは、AXS、MANA、YGG、SAND、SLPをはじめとするアセットを上場させることで、メタバースの成長を支援してきた。今後もこのビックウェーブを注視していきたい。

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