ビットコインのマイニング事業者2社は、ニューヨークでのプルーフ・オブ・ワーク(PoW)マイニングを2年間禁止する法案が成立した場合の影響についてコインテレグラフに語った。彼らによれば、法案が成立すれば、NY州からマイニング事業者が流出してしまい、この法案によるモラトリアムの狙いが達成されないことになってしまうだろうという。

GEMマイニングのジョン・ウォーレンCEOは6月8日、コインテレグラフの取材に対し、同氏や他のマイニング事業者は現在、ニューヨークがマイニングビジネスにとって不親切な場所になっていると語った。

「禁止が議論の対象になった以上、マイナーはそこに行くことを考えなくなるだろう」

ニューヨーク州政府がプルーフ・オブ・ワーク(PoW)マイニングに懸念を示す理由は環境の持続可能性だ。このPoWマイニング禁止法案は、今後2年間、州内での新規マイニングを一切禁止するというもので、物議を醸している。また、既に操業しているマイニング工場についても、100%再生可能エネルギーを使用しない限り、ライセンスの更新を拒否するというものだ。

GEMマイニングは先日、この法案は意図した目標を達成できないだけでなく、再生可能エネルギーベースの新しいマイニング事業者が同州でビジネスを行うことを妨げるとコメントした。ウォーレン氏はコインテレグラフに対し、自身の事業がすでに97%のカーボンニュートラルであるとも語っている。

GEMマイニングはサウスカロライナ州に拠点を置くビットコイン(BTC)マイニング事業者で、5月現在、ビットコインネットワークに1.92エクサハッシュ/秒(EH/s)のハッシュパワーを提供している。 

同様に、スウェーデンのデジタル資産マイニング企業ホワイトロック・マネジメントのアンディ・ロングCEOも、ビットコインのマイニングが「化石燃料を使わないエネルギー利用に向けた、正しい方向に進んでいる」と、コインテレグラフへのメールコメントで述べている。

ホワイトロック・マネジメントの712ペタハッシュ/秒(PH/s)のハッシュパワーは、水力発電に100%依存しているという。

ロング氏は、PoWのマイニング凍結は 「意図した効果を発揮せず、誤ったメッセージを送ることになる」という考えを示した。

「我々は、より多くの州や地方自治体が、将来に禍根を残すような規範的な規制で成長を阻害するのではなく、投資を奨励することを望んでいる」

ケンブリッジ・ビットコイン電力消費指数(CBECI)によると、米国のハッシュパワーのおよそ10%がニューヨークからのものだ。これは国内第4位の生産量となる。ビットコイン・マイニング・カウンシルの調査によると、4月の時点でマイニングに使用されるエネルギーの約58%が持続可能エネルギーからのものであるという。

ニューヨーク発のドミノ効果は?

この法案が施行されれば、昨年の中国でのマイニング禁止を受けてマイナーが相次いで撤退したように、ニューヨーク州から他の州へマイナーが流出する可能性が出てくるだろう。

GEMマイニング社のウォーレン氏はこの法案が成立してもしなくても、他州への流出は増え続けるだろうと考えている。「ニューヨークの次にカリフォルニアが追随する」ことを除けば、PoW禁止法案がドミノ倒し的に起こることはないだろうと付け加えている。

「ケンタッキー、ノースカロライナ、テキサスなどの州がマイナーに対する新しいインセンティブを設けようとしているため、ニューヨークのハッシュパワーはどのみち低下するだろう」と、ウォーレン氏は予測している。

ニューヨークと他の州との対決

ニューヨークは既にケンタッキーやジョージアといった州とのマイナー獲得競争に負けている。ジョージア州は、ハッシュパワーで米国トップの州となっている。フォーチュンは2月、平均以下の電力コストと、再生可能クレジットで排出量を相殺できる機会を求めて、マイナーがジョージア州に集まっていると報じた。ジョージア州は、電力の35.6%を原子力と再生可能エネルギーで生産している

ケンタッキー州のアンディ・ベシア知事は昨年3月、州内のビットコインマイナーのための税制優遇措置に署名し、同州の再生可能エネルギーインフラを支援することを決定した。ケンタッキー州は、ニューヨークのハッシュパワーを抜いて米国内で第3位となったが、再生可能エネルギーによる電力生産はわずか6.6%に過ぎない

NYのPoWマイニング禁止法案は、現在ニューヨーク州知事の机の上に置かれているが、知事はまだ法案に署名するかを明言していない。NY州知事は今後数ヶ月の間この法案を「非常に注意深く」検討すると述べている。