SBIホールディングスは7月31日、2019年3月期第1四半期(2018年4月~6月)の決算説明会を開催した。北尾吉孝代表取締役社長は、仮想通貨交換所VCTRADEを運営する子会社SBIバーチャルカーレンシーズの今年度の計画、仮想通貨関連事業のエコシステム戦略などについて説明した。
北尾社長の規制についての考えはこちら
バーチャルカーレンシーズは今年度内に板利用の現物取引を開始
7月17日から一般向けにも口座開設登録を開始した仮想通貨販売所VCTRADEは、2018年度内に、板を利用した仮想通貨の現物取引サービスを開始する。当面の間は取引手数料を無料にする予定という。現在VCTRADEでは仮想通貨での入出金に対応していないが、十分なマネーロンダリングやセキュリティ対策を講じた後に開始する方針。また、取り扱い通貨にイーサリアム(ETH)を追加する計画だ。規制の方向が明確になれば、テレビCMによるプロモーションも実施するという。
10年後に20兆ドルになる市場を見据えたエコシステム
現時点の仮想通貨市場の時価総額は、およそ33兆円。北尾社長は、向こう10年で市場は20兆ドル(約2237兆円)規模には達するとの考えを示した上で、この将来のマーケットを意識した策をすでに講じており、仮想通貨を基盤とするエコシステムの構築は、ほぼ完成していると強調した。
そのエコシステムとは、完全子会社のSBIバーチャルカーレンシーズを通じた交換所の運営から、業務提携や出資を通じたセキュリティ事業、機関投資家向け資産運用、メディア、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)などトークン関連、プラットフォーム開発、マイニング、送金、貿易金融と多岐に渡る。
出所:SBI決済説明会資料
決算説明会と同日の31日には、完全子会社のSBIクリプトインベストメンツを通じ、米英日3カ国で店頭デリバティブの電子取引サービスを提供する米国のクリア・マーケッツの株式12%を取得したと発表している。クリア・マーケッツ社は、仮想通貨のスワップ取引サービスの立ち上げを企図しており、これはヘッジ手段の提供になるため、同社への出資は、SBIの仮想通貨エコシステム発展に貢献すると述べている。今後は出資比率を20%にまで拡大するという。
同社は米商品先物取引委員会(CFTC)によるスワップ執行ファシリティ(SEF)や、英国・欧州32カ国でのデリバティブ仲介業の認可を取得している。また、日本では金融商品取引法上の第一種金融商品取引業登録・電子取引基盤運営業者としての許可を受けており、北尾社長は同社が複数のライセンスを持っていることを評価。このような企業との提携は、「全国展開していく上で非常に大事。仮想通貨は我々が全国展開できるツールなんです」と力説し、エコシステム内でのシナジー効果により、仮想通貨事業のグローバル展開を促進したい考えを示した。
「我々の今考えていることは、日本の規制がどうか、世界のどこの規制がどうなのか。南アフリカでは、ひょっとしたら、ビットコインでもの買ったら、付加価値税がいらない、かからないようにする可能性のあるマーケットが出てきているわけで。アフリカのいくつかの国で、その国のフィアットカーレンシーよりもビットコインの方がリライアブルだと思っている人がたくさんいる状況があるんです」
「アフリカのマーケットも、そういうことを考えて一つ手を打ちました。これからどんどんと、世界中を見ながら、この仮想通貨の戦略を、しかも、Eコマースを入れて考えていく。こういう壮大な構想があります」
エコシステムのシナジー
北尾社長は、エコシステムのシナジーについてマイニング事業を例に説明した。SBIクリプトでは、ビットコインキャッシュを中心に、米国やスウェーデンなど海外でマイニングをしている。また、2019年中を目処に大手企業とマイニング用チップを共同開発し、自社のマイニングに使用したり、外販したりする計画がある。現在のSBIのビットコインキャッシュの採掘シェアは4.3%だが、今後は投資先との連携を図りながら、最終的には3割までシェアを拡大したいという。
エコシステムを活用し、ビットコインキャッシュを安くマイニングできれば、その分安価にマーケットに流せると話す。また、約10%の株式を保有しているリップル社のXRPも安く仕入れることにより、同様のことが可能であると述べた。これらのエコシステムは「ものすごい強み」であり、「だからこそ胴元になれる。胴元になったら一生になる」と自信を見せた。
SBIバーチャルカーレンシーズは、今年中の黒字化、来年度からは数十億円規模の利益を上げることを目指してる。