米高級紙ニューヨーク・タイムズが、ウォルマートのブロックチェーンに苦言を呈した。
米国の小売大手ウォールマートは今週、レタスの供給ラインにブロックチェーンに導入することを発表。今年ロメインレタスによる大腸菌が流行していて、その対策の一環としてブロックチェーン技術を使うという試みだ。これにより供給業者はどの農場が感染したかをすぐに把握し、レストランや消費者への提供を止めることができるという。
これに対して24日付のニューヨーク・タイムズは、ウォルマートがブロックチェーンを導入する必然性を疑問視。最近ブロックチェーン業界の急成長は著しいとする一方、複数の専門家の声をもとに「企業が開発を進めるブロックチェーンは果たして旧来のオンラインのデータベースと何が違うのだろうか」と疑問を投げかけている。
「ブロックチェーンのデータフォーマットがどんな魔法をもたらすのか分からない」「おおよそPR目的の動きだろう。ブロックチェーンのリーダーとして見えたいだけではないか」
このように答えたのは、Attack of the 50 Foot Blockchainの著者であるデビット・ジェラード氏だ。
実は現在、ウォルマートのブロックチェーンの全てのデータは、IBMのクラウドコンピューターに保管されているという。「ブロックチェーンは中央管理者なしでデータベースを更新できるはずではないのか」。ニューヨーク・タイムズはこのように指摘し、「ブロックチェーンのような分散型のデータベースが必要なのか疑問に思わざるを得ない」と伝えた。
「IBMは仲介人が必要でない新たな技術を採用して、今度は自分たちが仲介人になった」
ブロックチェーンのコンサル業者11:FSの共同創業者であるサイモン・テイラー氏も、このように皮肉ったという。
「つまるところブロックチェーンの実世界での利用は、これまでビットコインなど仮想通貨が取引記録を保存するケースに限られている」という見解も明かしたニューヨーク・タイムズ。政治の世界ではトランプ大統領批判の急先鋒として知られるが、仮想通貨・ブロックチェーン業界においても「メディアの色」を決めつつあるのかもしれない。