仮想通貨ビットコイン(BTC)は過去24時間で5%上昇し、9600ドル付近で推移している。昨日は日本時間朝に上昇して9500ドルを回復していた。背景には、米政府による銀行の仮想通貨カストディ業務の許可があるとみられている。

7月22日、米通貨監督庁(OCC)は政府が公認した銀行に仮想通貨カストディ(資産管理)の許可を与えると発表した。この発表は、銀行が運営する仮想通貨カストディ業務への青信号と解釈され、市場関係者の間で好感されている。実際、仮想通貨市場はビットコインやイーサ(ETH)を中心に上昇した。

BTC USDT daily chart(出典:TradingView「BTC/USDTの推移(1日)」)

OCCの責任者であるブライアン・ブルックス氏は今回の発表について「数千万人の米国人」に銀行が仮想通貨カストディサービスを提供できるようになると指摘。新たな技術の導入について前向きに話した。

「金融市場における技術的進化が起きる中で、銀行やその他のサービスプロバイダーが、顧客に従来のサービスを提供するために、新しい技術や革新的な方法を活用する必要性が高まっていることをOCCは、認識している」

カストディ業務の開始により銀行の顧客は安心して仮想通貨資産の保管・運用を任せることができるようになる。

とりわけ、マクロ投資家の「レジェンド」ポール・チューダー・ジョーンズ(PTJ)氏がビットコイン投資を明かすなど、最近米国では機関投資家の参入が増えている。ビットコイン信託を手掛けるグレイスケールは第2四半期(4-6月期)に9億580万ドル(約969億円)の資産流入があったと発表している。ビットコイン信託に限ってみれば、第1四半期から第2四半期にかけて過去最高となる14億ドル(約1500億円)の流入があった。

「鶏小屋にビットコイナー」

仮想通貨カストディに対する需要は足元で増えている。より多くの適格投資家や機関投資家が参入するきっかけになると考えられる。

米国仮想通貨系のシンクタンクであるコインセンターのピータ・ヴァン・ファルケンブルグ氏は、銀行による仮想通貨カストディについて次のように解釈した。

「中央集権的な実体による仮想通貨の保管は避けられずに必然であることを受け入れるならば、このニュースは素晴らしいニュースだ。OCCの新たな政策によって、仮想通貨カストディの分野で新たな競争が生まれるだろう。政府公認の銀行が参入して競争が激化して、より多くの伝統的な投資家が仮想通貨を始めるきっかけにもなるだろう」

また米国仮想通貨投資会社モルガン・クリーク・デジタルのアンソニー・ポンプリアーノ氏は、ブルークス氏が以前米国仮想通貨取引所コインベースの最高法務責任者(CLO)だったと指摘。「鶏小屋にビットコイナーがいる」という独特の表現で今回の発表を歓迎した。

ポンプリアーノ氏によると、これまで多くの政府公認の銀行が仮想通貨投資家を敬遠していた背景にOCCの規制があった。ブルークス氏は、規制を変更したというより銀行による仮想通貨カストディに対する規制当局の立場を明確にしたことになる。

「銀行はカストディサービスの構築を始めるだろう。銀行は仮想通貨企業を買収するだろう」

仮想通貨カストディ 時期尚早か

ただOCCの動きについて懐疑的な見方も出ている。

米国の著名仮想通貨系の弁護士であるジェイク・チャビンスキー氏は、OCCは数ある規制当局の1つに過ぎずブルークス氏がトップであり続ける保証もないと指摘。また結局銀行は需要を見て行動するので、必ずしも銀行による仮想通貨カストディサポート増加につながるわけではないと述べた。

「銀行は心理的にリスクを取りたがらずにコンプライアンス重視だ」

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン