イーサリアム コミュニティ ファンドはスケーラビリティ問題を解決するか

 今月16日、イーサリアム上のプロジェクトや事業を育てる「イーサリアム・コミュニティ・ファンド」(ECF)が立ち上がった。同ファンドに参画するのはOmiseGo、Cosmos、Golem、Maker、Raidenといった昨年数百万ドル規模のICOを成功させた6社と、日本のベンチャーキャピタル「グローバルブレイン」だ。

 ECF立ち上げ時の規模は1億ドル(約106億円)で、イーサリアムの生みの親であるヴィタリック・ブテリン氏を含むイーサリアム財団のメンバーがファンドの顧問を努める予定だ。

ブテリン氏はテッククランチに対し「イーサリアムはここ数年、私の想定を超えた成長を見せている。しかしまだすべきことがあるのは明らかだ。約束したものに見合う価値を提供するのが18年の目標。エコシステムの発展を助長するECFなどの活動により、目標が達成されるだろう」と語っている。

オープンソースプロジェクトへの資金提供はブテリン氏の悲願

 ブテリン氏は昨年9月、18億ドル(約1900億円)のプロジェクト「OmiseGo」と3億7000万ドル(約393億円)規模の分散型取引所「カイバーネットワーク」から得られる報酬を使って個人ファンドを作り、イーサリアムのスケーリング問題を解決するような革新的技術を生みだすオープンソースプロジェクトに出資することを明らかにした。

 「OmiseGoとカイバーネットワークの顧問報酬は全額チャリティ(AMFやGiveD、SENSなど)に寄付するか、イーサリアムのセカンドレイヤー(ステートチャネルやマルチシグウォレットなど)のために使用することを宣言する」。(ブテリン氏)

 さらに、対象となるプロジェクトは完全にオープンソースで営利目的で無いものに限るとしている。特にイーサリアムのスケーラビリティ問題解決に取り組むオープンソースプロジェクトの資金繰りの苦しさを力説している。

 このようなブテリン氏の姿勢を考えると、オープンソースプロジェクトのみに資金提供するという個人ファンドのルールが、1億ドル規模のECFにも適用されそうだ。テッククランチの報道によれば、助成金は5万~50万ドルの範囲で、技術やソリューションの長期的な開発のために追加の資金を受けるプロジェクトもあるという。

スケーリング問題解決に取り組む技術者の不足

 仮想通貨「オーガー」の共同設立者であり、仮想通貨ベンチャーキャピタルで最高投資責任者を努めるジョーイ・クリュッグ氏は以前、イーサリアムネットワーク強化のためのスケーリングソリューションに取り組む開発者やオープンソースプロジェクトが不足している点に懸念を表明し、次のように語っていた。

 「イーサリアムには、シャーディングやプルーフ・オブ・ステーク、プラズマといった問題に取り組む技術者が本当に足りない。すべての指揮を執る人材もさらに雇う必要がある。例えば、Solidityの正式なチェックはようやく始まったばかりだ」。

 オープンソースのスケーリングプロジェクトが無いと、イーサリアムネットワークは取引処理に苦しみ続けることになる。ネットワークの現在の処理能力は、1日当たり100万件をわずかに上回る程度。コインベースの共同創業者であるフレッド・エアサム氏も「数百万のユーザーがいる分散型アプリケーションをサポートするには、イーサリアムネットワークを100倍の規模に拡大する必要がある」と述べている。

人気の分散型アプリに対応するためにもスケーリングソリューションが必要

 ここ数か月、「クリプトキティ」や「CryptoCribs」、「Bancor」、「EtherCraft」といった分散型アプリの成功例が続出し、イーサリアムのブロックチェーンネットワークはスケーリング問題に苦しんでいる。クリプトキティのような分散型アプリは、命令が実行される度に数件のトランザクションを処理するため、ネットワークの混雑につながる。需要増に対応するためには効率的なスケーリングソリューションが必要だ。

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画像ソース: Dappradar.com

 イーサリアムの取引能力を拡張できるシャーディングやプラズマといったスケーリングソリューションの開発は、ECFのようなファンドや助成金で加速する可能性がある。そうなれば、イーサリアムは分散型アプリに適したプラットフォームへと進化できるだろう。