大手金融機関の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の亀沢宏規社長は、毎日新聞とのインタビューの中で、MUFG独自のデジタル通貨「coin」を2020年度下期に発行する方針を明らかにした。

報道によれば、飲食店紹介サイト「ホットペッパーグルメ」などを運営するリクルートグループと共同で進める考えで、まずリクルートのサイトに加盟する店舗でスマートフォン決済を始める予定だという。

亀山氏は「さまざまな店や若いアルトバイトなどの顧客接点を持っている」と述べ、リクルートとの協業に期待感を示した。また将来的にはリクルートのサイト加盟店以外でも利用できるようにする方針という。

2019年12月の日本経済新聞の報道では、MUFGとリクルートはデジタル通貨運営のための共同出資会社を2020年に設立すると報じられていた。当時の報道では、すでに共同出資会社設立に向けた契約書を締結しており、出資比率はリクルートが51%、MUFGが49%になる見通しといわれていた。また「ホットペッパー」や「じゃらん」などの店舗で使えるようにするとも報道されていた。

新型コロナでデジタル化推進

また亀山氏はデジタル通貨「coin」を発行する背景の1つとして、新型コロナウィルスの問題もあったと述べている。

「いろいろあって遅れた面があるが、新型コロナウイルス問題もあったのでタイミング的にはちょうど良いかもしれない」

また新型コロナウィルスを機にMUFGの業務におけるデジタル化を加速させる必要性も強調し、「会社の運営そのものをデジタル化する」と、亀山氏は語っている。テレワーク促進やペーパーレス化の推進などを行うという。

MUFGのデジタル通貨・ブロックチェーンでの取り組み

MUFGは長らく、デジタル通貨の実用化に向けて取り組んでいる。「coin」は当初は「MUFGコイン」と呼ばれており、MUFG社内での実証実験が2018年から進められていた。ブロックチェーン技術を使い、1コイン=1円で固定されていた。

MUFGコインの実用化については、昨年4月の報道では「2019年度後半にも実用化する方針」とも報道されていた。今回の亀山社長のインタビューでは「いろいろあって遅れた面がある」と述べているように、ようやく実用化に向けた動きが本格化しているようだ。

MUFGでは昨年2月、決済技術開発を手掛ける米国のアカマイ・テクノロジーズと共同で、新会社を設立している。この新会社は、ブロックチェーン技術を基盤として決済ネットワークの提供を目指しており、当時の発表では「2020年上期を目途に日本における新型ブロックチェーン技術を基盤としてオープンなペイメントネットワークの提供を目指す」と述べていた。

2018年には米仮想通貨取引所コインベースにMUFGが出資して、共同で日本市場の開拓を目指すという報道もされている

最近では、仮想通貨企業ディーカレットが事務局を務めるデジタル通貨勉強会に、MUFG傘下の三菱UFJ銀行が参加している。この勉強会には、みずほ銀行や三井住友銀行、セブン銀行、KDDI、JR東日本なども参加している。