アイルランド中央銀行が、最近、Facebook Payments International Limited (FBPIL) に対し、ピア・ツー・ピアによる効率的な決済を可能にする電子マネーラインセンスを付与している。アイルランドは欧州連合 (EU) の加盟国の一つであるため、Facebookは、EUすべての州において送金事業を行うための手続きが承認された形だ。

10月24日、Facebookが、EUにおける電子マネーライセンスを獲得したことで、米国の消費者が現在利用しているものと同じ機能を提供することが可能になった―自社のネイティブなメッセージアプリケーションに内蔵した決済ソリューションだ。

TechCrunchとのインタビューの中で、Facebookは公式にEUにおけるP2P決済システムを導入したメッセージアプリケーションのリリースを計画していることを発表している―

 

「本ライセンスにより、現在米国で提供しているFacebookへの慈善寄付や、Facebook Messengerアプリケーションを利用したピア・ツー・ピアによる支払い機能をヨーロッパでもリリースすることが可能になりました。本ライセンスは、Facebookユーザーが欧州経済圏 (EEA) に登録された慈善団体にのみ寄付することをFBPILに対して許可するものです。これはEEA内でのピア・ツー・ピアによる支払いを含むものです」

 

クロスボーダー決済とその取引ボリューム

 

送金比較サイト、Monitoの共同設立者であるFrançois Briod氏は、今後のFacebookには2つの選択肢が存在すると話す―ユーロによるクロスボーダー決済を可能にするか、または、ヨーロッパにおける利用者がクロス通貨によりEU圏外の人にも送受金可能になる決済を可能にするかの2点である。

Facebookがクロス通貨決済を行うことを決定すれば、イギリスにおけるユーザーはEU圏のユーザーに対して同一のピア・ツー・ピアのネットワークとメッセージアプリケーションを利用して送金を行うことができるようになる。

中国で最も利用されているメッセージアプリケーション、WeChatが、最近、PayPalの年間取引ボリュームである49億ドルを超え、6日間で320億ドル以上の取引が行われていたことを明かしている。もし、Facebookが電子マネーライセンスを利用し、EUや他のヨーロッパの国々で自社の存在感を示すことが出来れば、バークレイズ銀行のPingitのような既存のピア・ツー・ピアによる金融ネットワークに対抗することが出来るかもしれない。

現在、イギリスだけで130万人のユーザーがPingitを利用しており、個人の利用限度額は6,300ドル、企業ユーザーは12,000ドルまで利用することが出来る。日々利用限度額は低いにも関わらず、利用者と取引量はかなり増え続けているとバークレイズ銀行の関係者は話している。

“2012年に限りますと、オンラインによるアカウント開設よりも、Pingitを利用したアカウント開設をより多く承っております”

 

ビットコインの流動性に対抗できるか

 

モバイル決済の需要と、市場におけるそのポテンシャルは日々日々急速に成長し続けている一方、Facebookのユーザーが抱える大きな3つの問題として、流動性、取引限度額、追加で要求されるKYCポリシーがある。

アプリケーションを通してピア・ツー・ピアネットワークを利用し決済を行うFacebookユーザーであっても、銀行が発行するアカウントやカードは不可欠である。例えば、米国のメッセ―ジ・アプリケーションでは、Facebookのフレンドのアカウントに送金する際には、米国の銀行が発行するデビットカードが必要になる。

Facebookのユーザーの人口統計を考えると、EUが発行した銀行口座が送金する際に必要になる可能性があるため、大半のユーザーにとって、これは問題になるだろう。これではピア・ツー・ピアな金融ネットワークを利用するという目的全体を破壊してしまうことになる、オンラインバンキングを利用した送金方法と何ら変わらないからだ。

AppleのiOSに積まれているメッセージアプリケーションには、様々なデジタルネットワークが存在し、Circleなどのビットコインを送金できるものもある。少額手数料で高いセキュリティを備えたボーダーレスな決済のエコシステムにはこういった仕組みが必要だろう。

つまるところ、Facebookがビットコインのような仮想通貨に対抗したいのであれば、機能性を向上させ、ピア・ツー・ピアのネットワークを利用するという利点を生かすよう、努力するべきはずである。