2015年のビットコイン及びブロックチェーン界隈を振り返り、来年の展望について述べたいとおもいます。

ひとことで2015年を振り返ると、「ビットコインの基盤が試された試練の年」であったとおもいます。同時に、世間の注目はビットコインよりも、「銀行や金融機関が注目ブロックチェーン」という形であつまり、大ブームを産んだのは、予想外の展開でした。

そして10月以降のビットコインの価格の急上昇を経て、来年は、再びビットコインそのものに注目が戻る年になるでしょう。「コミュニティと開発者の地道な努力が実を結び、大きな花を開かせる」という年になるとおもいます。

 

くわしく見ていきましょう。

 

試練の時

 

今年は、ビットコインにとっては試練の年そのものでした。

まず価格面でいえば、ビットコインは2013年度末につけた1200ドルをピークに長い下降トレンドが継続し、今年の初頭には、2013年来の最安値である200ドルを割り込みました。その後も、価格は低迷をつづけ、8月になってビットコインXTが報じられると、コミュニティが2つに割れるのではないかという憶測から、ビットコインについては総悲観になったといえます。

今年のビットコイン界を揺るがした最大の要因であるビットコインXTは、コア開発者である、マーク・ハーンと、ギャビン・アンドリーセンが提唱により提唱されました。ビットコインのスケールを飛躍的に拡張させようという提案で、ブロックサイズを現状の1Mバイトから、2036年に8ギガバイトまで拡張するというものでした。

問題は、この提案が、十分議論されないまま出てきて、しかもビットコインマイナーのハッシュパワー投票という、いわばパワーゲームの政治によって、物事の決着をつけようとしたところでした。これが、ビットコイン内部の分裂の危機と捉えられ、ビットコインの将来に一気に暗雲が垂れこめました。

 

 

ブロックチェーンの台頭

 

それを尻目に、今年最大の注目をさらったのが、銀行や金融機関による、ブロックチェーンへの注目です。銀行や金融機関は、ビットコインが動く裏の技術であるブロックチェーンに目をつけて、これを利用して、自社業務の効率化や、次世代の金融機関の未来を描こうとしたのです。金融機関が、ついに、ブロックチェーンについて、技術的な優位性があるということに気づき、我先とその技術の研究に走りました。

その代表的なものがR3プロジェクトで、世界中の名だたる金融機関が参加し、ブロックチェーン技術の研究と、その標準化を目標に、コンソーシアムを組みました。それから連日のように、大企業によるブロックチェーンの研究や、調査のプレスリリースの記事が、媒体を埋め尽くしていったように思います。

ブロックチェーンの応用可能性が語られ、銀行業務や、債権・証券市場のブロックチェーン化、IoTや、存在証明、SCMへの応用など、お金以外のブロックチェーンへの応用の可能性が議論されました。

世界の金融機関の間でブロックチェーンブームともおもわれる熱狂が駆け巡ったのです。

これに呼応して日本の金融機関も腰をあげました。三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行がR3プロジェクトに日本の銀行として始めて参画。それを見た各行もブロックチェーンの流れを本物と捉えて取り組みを加速させました。

国内では初めての企業内むけのブロックチェーンソリューションであるMijinが発表され、注目を浴びました。

 

規制の動き、欧州のVAT免除

 

一方でビットコインにおいても、10月以降、明るいニュースが舞い込んできます。その中でも一番大きかったものが、欧州でのビットコイン売買に関する付加価値税(VAT:日本の消費税に相当)の免除でしょう。これは欧州最高裁の判決で、欧州全域でビットコインの売買に関して消費税がかからないことが、今後も覆されることのない事項として確定しました。これは間違いなく法規制をめぐるニュースの中で、筆頭に重要です。

もしビットコインに消費税がかかれば、価値の交換や支払手段としてのビットコインの生命は絶たれたといっても過言ではなかったと思います。少なくとも欧州がVAT免除を全面的に決めたことで、他の地域もこれにならって行くことが合理的であるという流れになってくように思います。

 

一方他の地域でも、規制は徐々に出来上がりつつあります。NY州のビットコイン規制であるビットライセンスが施行されました。また、コインベースが、米国ではじめてとなる合法的に規制された取引所をオープンさせるなど、グレーゾーンをすこしずつ少なくし、ビットコインビジネスを行う立場からも、ビットコインを使うユーザー側からも、透明で使いやすいルールが整備されていくことが期待されます。

 

日本においても、金融庁がビットコイン取引所について登録制を敷き、マネロン対策としての本人確認の義務付けや、消費者保護としての資産の分別管理や監査など、ルールの概要を示しました。こうしたルールが整備されていくことにより、一般のひとにも手がだせるような環境が整っていくものとおもいます。

 

こうした社会のルールが整い、基盤が整備されることは地道ではありますが、価格の低迷と弱気相場を尻目に、こうした地盤は着々と整備されていったと感じています。

 

スケーラビリティ問題の解決見通し

 

ビットコインコミュニティを揺るがせたXT問題は、結果として、「雨降って地かたまる」という良い結果をもたらしました。ビットコインXTの提案は早々にリジェクトされ、ビットコインの将来をどうするかについては、2回にわたる国際会議が設定されました。

かつて顔をあわせたことのなかったコアの開発者同士が一同に会し、12月の香港の会議では、謎とされていた中国のビットコインマイナーたちも集結し、開発者たちと議論をしたのです。

サイドチェーンは、ライトニングネットワーク、SEGWITなど、前向きかつ技術的に優れた提案がなされました。この会議を経て、ビットコインコミュニティは一段の成熟を見せ、層の厚さと、情熱的な人々によって支えられる、オープンソースコミュニティであることが示されたとおもいます。

 

価格の上昇と強気相場の到来

 

そして、何より、こうした地ならしと、地道なファンダメンタルズの改善が実を結び、ビットコイン相場は底を打ちました。10月以降急激に回復し、その傾向ははっきりしています。なにより、ビットコインの見通しについて明るい展望や、開発者の底の硬さなどが確認されたことにより、長期的な可能性が見直されたと感じています。

それが価格に反映され、2013年以来の、強気の相場が戻ってきたというのが、今年の最大にして、最高のニュースではないでしょうか。

 

その他の注目すべきニュース

 

こうしたメインストリームの動きのほか幾つかの注目すべき動きを上げたいと思います。まず、7月にEthereumが無事リリースされました。チューリング完全な言語を備えた唯一のブロックチェーンであるEthereumは、スマートコントラクトほか、予測市場、IOT、SCM、分散ガバナンスなどの基盤として、その応用が注目されています。

また、ビットコイン企業としては最大のベンチャー資金(22M ? )を集めた21 incがビットコインコンピュータなる製品をリリースしました。IoTやデバイスなどとビットコインを絡めたマーケットを創造しようとしており、野心的です。

 

<後編に続く>