仮想通貨イーサリアム(ETH)のハードフォーク「コンスタンチノープル」が推定で日本時間17日に行われることが予定されていたが、イーサリアムのコア開発者が15日、延期を発表した。スマートコントラクト監査企業に発見されたセキュリティーの脆弱性が理由だという。今回のハードフォークを好感した形で上昇していたイーサリアムは一転、急落している。

セキュリティの欠陥

より効率の良いアルゴリズムへの一歩と見られる今回のハードフォーク、コンスタンチノープル。スマートコントラクトの監査企業、ChainSecurity(チェーンセキュリティー)によれば、コンスタンチノープルでイーサリアム・ネットワーク上の一部ではこれまでより安価なガス料(手数料)を提供できるようになるものの、副作用としてリエントランシ攻撃とよばれるスマートコントラクトにありがちな脆弱性が起きるという。

リエントランシ攻撃によって、潜在的な攻撃者は、繰り返し資金の引き出しを要求することで、スマートコントラクトから仮想通貨を盗める。その際、攻撃者の実際のETHのバランスはごまかせるそうだ。

この報告を受けてコンスタンチノープルのコーディネーターであるAfri Schoedon(アフリ・スコエドン)氏は、米SNSレディットで少なくとも来週までコンスタンチノープルを延期することを発表した

「我々は、金曜日の開発者会議で今後について決める。(コンスタンチノープルは)今週は起きないだろう。情報を待ってくれ」

今回のハードフォークは、第708万ブロック以降に適用され、以前のブロックから分岐する。イーサリアムコミュニティ内の多くがコンスタンチノープルを支持しているため、ビットコインキャッシュ(BCH)の時のように混乱は起きず、新たな仮想通貨は生まれないと見られている。実際、コア開発者の一人、レーン・レティッグ氏は、ブルームバーグに対してこれほど議論を呼ばないハードフォークは想像できないよ」と自信を見せていた。

ただ理論上、アップグレード前のイーサハッシュを好む新たな仮想通貨が誕生する可能性もある。実際、コンスタンチノープルでは、1ブロックあたりの報酬を3ETHから2ETHに削られるため、以前のブロックに残るインセンティブがない訳ではない。

コンスタンチノープルを受けてコインチェックやコインベースなど国内外の大手取引所は、イーサリアム(ETH)を一時的に入出金停止にすると発表していたものの、概ねサポートを表明していた

延期を受けてETH急落

イーサリアムのPoW(プルーフオブワーク)からエネルギー効率の良いPoS(プルーフオブステーク)への移行に向けた一歩と位置付けられるコンスタンチノープルを好感してか、仮想通貨イーサリアム(ETH)は前日夜中まで急騰していたが、延期の報道を受けてマイナスに転じた。現在、6%以上の下落で、主要10通貨の中で一番の下落率を記録している。

(引用元:TradingView 「イーサリアム (ETH)/米ドル(1日)」)

米格付け機関のウェイス・レーティングは、コンスタンチノープルで「残念ながら、ETHが失われた栄光を取り戻すことはない」と主張し、「『噂で買ってニュースで売れ』の典型的なケースだ」という見方を示していた。

ハードフォークとは、仮想通貨のシステムを変更する手段の一つ。ある仮想通貨が新型通貨と旧型通貨へと完全に互換性のない別々の仮想通貨に分裂(フォーク)することにより、システム変更を達成すること。ビットコインキャッシュはビットコインからハードフォークし誕生した、まったく別の仮想通貨として有名。

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