ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が、国内の計算単位として、石油を裏付けとした国営仮想通貨ペトロを使用すると発表した。ABCインターナショナルが14日伝えた

 マドゥロ大統領はテレビ演説で、国営石油会社PDVSAが計算単位としてペトロを使用すると発表した。さらに、同国政府はペトロにペッグされた新しい給料制度と商品・サービスの価格設定制度を導入する。マドゥロ大統領は次のように発言した。

「次の月曜(20日)からベネズエラは、ペトロの価格、つまりペトロの価値に根ざした第2の計算単位を使用する。国の第2の計算単位となり、我が国の石油会社PDVSAではこの計算単位を使用することが義務となる」

 マドゥロ大統領によると、ペトロに基づいた新しい給料と価格の制度を導入することは、「労働者の収入の大幅な改善を意味」し、「最大小売価格が再び現れる」手助けになるという。

 8月20日からベネズエラにはペトロとボリバル・ソベラノの2つの政府公認通貨が存在することになり、ボリバルの価値はペトロの価値に合わせて増減される。通貨切り替えの結果として、現在の自国通貨ボリバル・フエルテからゼロを5つ切り下げた通貨単位がボリバル・ソベラノとなる。

 同国の中央銀行(BCV)が「ペトロに応じたボリバル・ソベラノの公定価格と、国際通貨に応じたペトロの価値の公表を開始する」という。同様に、マドゥロ大統領はBCVと民間銀行がすでに新しい紙幣を受け取ったことも明らかにした。

 ベネズエラ政府は今年2月に世界初の石油に裏付けされた国営仮想通貨として8240万ペトロをプレセールで売り出した。同国によるペトロ導入には、海外投資家を惹きつけると共に、米国とEUによる経済制裁を迂回し、18年末までに100万%に達すると見込まれている破滅的なハイパーインフレを収束させる狙いがある。

 ペトロのホワイトペーパーは、ペトロがベネズエラの法律に完全に従って発行されたものとしているが、ベネズエラ国民議会の野党はペトロ発行は違法だと主張している。

 ホワイトペーパーの一部は詳細に欠け、その他にも十分な論拠に支えられていない箇所が見られるものの、明白な経済的有用性もある。ペトロを使用すれば、税金やその他の政府への支払いが10%安くなり、将来的に同様の効果がその他の決済市場にも拡大される予定だ。

 ホワイトペーパーは、ペトロは米ドルやその他の通貨に簡単に替えることができるので、ベネズエラの輸出貿易に役立つだろうと述べている。しかし、仮想通貨取引所や非公式な形で違法に受け取った資金でペトロが購入され、その後、石油に交換されることで、そうして「洗浄」された石油が最終的には合法的なビジネスを通して様々な国で販売される可能性もある。