ブロックチェーンによる分散型元帳テクノロジーは芸術の分野においてとても活躍しているようで、業界における主な問題―知的財産登録の問題を解決する糸口となっているようだ。仕組みはとても簡単で、偽造するのが難しい芸術作品における財産所有権を主張する上で手助けとなるようなシステムだ。おそらくそういったことで2015年がビットコインやブロックチェーンを応用したアートプロジェクトに富んだ一年となったのだろう。

 

コインテレグラフは今回、ベルリンに拠点を置くスタートアップAscribeの共同設立者でありキュレーターでもあるMasha McConaghy博士に話を伺った。

博士は今回、最も興味深い2015年におけるブロックチェーンテクノロジーを利用したアートプロジェクトについていくつか語り、”2016年は面白い年になるだろうと語った。

 

博士曰く―

「造形美術の世界においては、作品の出自が非常に大事です。ブロックチェーン技術はその分野で重要な役割を果たしています。特にドイツでは、グルリットの作品が発券されて以後、作品の出自のリサーチをすることが最も重要なトピックとなっています。無秩序なアート市場において、透明性とレギュレーションは必要ですし、ブロックチェーンによって多くの問題を整理することが可能です」

 

レフトギャラリー

オランダとベルリンを拠点に活動するアーティスト、Harm Van den Dorpel氏によってレフトギャラリーと呼ばれる仮想ギャラリーがローンチされた。このプロジェクトによって、アーティストは自分たちの作品をダウンロード可能なコンテンツとして販売することができる。レフトギャラリーではビットコインを支払いオプションとして受け付けている。

 

IkonoTV

IkonoTV24時間いつでもHD画質で見ることのできる最初のアートTVチャンネルだ。1000人以上の国際的なアーティストとコラボレーションし、200点以上の作品やアーカイブス、世界的なミュージアムなどを見ることが出来る。IkonoTVはブロックチェーンを利用して、作品がどのアーティストのものなのかわかるように適切に管理されていて、著作権の所持者が明確にわかるように、契約書に署名する際にも利用されている。

現在チャンネルは3億人以上の人に閲覧されている。

 

Cointemporary

Cointemporaryはアートワークを展示し、販売するためのオンラインプラットフォームだ。適正なビットコイン価格で購入されるまでの間、101枚だけ展示される。作品が売れるか、10日過ぎると、また別のアートワークをさらに10日間展示する。Cointemporaryはウィーンを拠点に活動するアーティスト、Valentin Ruhry氏とAndy Boot氏によるプロジェクトで、芸術作品をビットコインで先駆者的に販売し、最近では特にブロックチェーンベースのデジタルアートを販売している。Masha McConaghy氏曰く、「彼らは2016年もデジタル作品のみに貢献していくでしょう」とのことだ。

 

N3uro

N3uroは人々の思考を売るマーケットプレースだ。文字通り、人間の脳波をキャプチャーし、その記録を限定的なデジタル版として販売している。公式サイトには、「これらの脳波の限定デジタル版は、著作権契約法と、ビットコインブロックチェーンに登録された所有権を通して有効である」と記載されている。

 

Plantoid

Plantoidは、ビットコインによる寄付を利用し、自己複製するブロックチェーンベースのロボットだ。アーティストを雇い、作品を模写し、そして向上させる。基本的に、物理的世界と電子的世界にまたがるDAOのようなもので、著作権や所有権についての問題を挙げる。芸術を自己生成し複製を作り出す生き物に変えてしまうことが出来る、きわめて興味深いイノベーションだ。

 

ブロックチェーンベースの賞

ブロックチェーンテクノロジーを利用し安全にアートワークを出展しているアーティスト向けの賞がいくつか存在する。

ベルリン・アート賞は、年に一度授けられる現代アート向けの賞で、ベルリンに住んでいるアーティストが対象だ。Sluiceは、アーティストやキュレーター、そしてそういった人達や、プロジェクトやギャラリーなどを紹介する組織を採用している教育者などによって運営されているアート・イニシアチブだ。The Portfolio Reviewはアートワークのプレゼンテーションやディスカッション向けのオープンフォーラムで、作品へのフィードバックを得ることが出来るのに加え、参加者同士や、審査員などと繋がり、賞を得ることが出来る。Masha氏は「2016年にはブロックチェーンを利用したさらに多くの賞が出てくるでしょう」と予測している。

 

次の展開

2016年には、アート業界でもブロックチェーンやビットコインを利用した様々な新しいプロジェクトが生まれてくることが予想される。23viviは貴重な作品を販売しているオンラインマーケットプレースで、2016年の第一四半期にローンチが予定されています。ArtCityはブロックチェーンをデジタル作品のセキュリティ面に応用し再始動する予定で、Lumen Art Prizeもまたデジタル作品向けの独自のマーケットプレースのローンチを予定している。

 

2016年、ブロックチェーンはさらに広くアート業界でも取り入れられていくのだろうか。